お題企画に乗っかってみる #この街が好き 2

 自分の人生において、大切な街が3つある。

 生まれ育った自分の原点「札幌」

 初めてのひとり暮らしをした「函館」

 思いつきで移住したら定住することになった「利尻」

 札幌・函館については「街」といえるが、「利尻」に関しては街というより「島」という感じだろうか。

 旅行でいろいろな「街」に行き、各地の魅力も感じたが、やはり暮らした街というのは格別な思いがあるものだ。

 今回は、初のひとり暮らしを経験して何かが開花した「函館」について書きたいと思う。

異国情緒ただよう歴史的な憧れの街へ

 函館という街には、昔から「異国情緒ただよう歴史的な憧れの街」というイメージがあった。観光で何度か訪れたこともあり、そのたびに本当に素敵な街だと思っていた。

 札幌の、特に自分が住んでいた地域は、海と縁遠い。坂も少なく、平らな土地が多い。

 函館は海に囲まれ、赤レンガ倉庫などのレンガ造り建物群には西洋の風を感じられる。坂に広がる元町エリアには魅力的な店や観光地が並び、坂の上から見る景色は格別だ。街並みと海を一望できる。函館山の頂上から見る夜景は屈指の名所であることは、周知のことだと思う。一方で五稜郭のような歴史的な場所も各地にあり、江戸幕末時代が好きな自分としては、好きにならない方がおかしい街だった。

 そんな街で、会社に入社して3カ月ほどの、実家暮らししかしたことのない自分が、ひとり暮らしを始めることとなった。作業用品を扱う店で働いていたが、札幌の支店から函館の支店へと異動となったのだ。

 異動の内示を聞いたとき、「は?」という印象だった。早くないか、と。だが、それが普通の会社だった。そして、「ひとり暮らし、どうしよう」と思った。実家を離れたことはないし、家事もあまり手伝っていなかったし、料理できないし……生きていけるのか?

 でも、ふと思った。

 あの、憧れの函館でひとり暮らし。函館で観光。五稜郭行き放題。なんだか少し楽しくなってきた。ガイドブックを買いに行った。

 そんなわけで、函館という街でしばらくお世話になることとなる。

競馬場の裏側、飛行機が上空を飛ぶ家に住まう

 自分が住んでいたのは、函館の湯浜町というところだった。アパートの裏側には、競馬場があった。競馬が開催されているときには、賑やかだったのだろうが、仕事でいなかったので、特に良かったことも悪かったこともない。強いて言えば、競馬場があることによって市電の駅が遠かったということくらいだ。

 湯浜町は、有名な湯の川温泉に近い地域で海もすぐだった。昔泊まったことのあるホテルが割りと近く、懐かしんだ覚えがある。ロビーに白いユリが飾ってあり、とても香りがよかったことを思い出した。

 近所にはスーパーやコンビニが徒歩圏内にあり、不自由を感じたことはなかった。むしろ便利だった。函館のスイーツ店「スナッフルス」の支店も近くにあり、よくご褒美を買っていた。

 磯の香りがすること以外は、なんとなく自分の地元に似た雰囲気を感じた。全く違う地域なのに、何にそう感じたのか……一番は、飛行機だと思う。家の上空を飛行機が飛んでいく音。地元でもよく聞いていた音だ。それが、函館の住まいでも聞くこととなり、妙に落ち着いたのを覚えている。

 そんな場所で、初めてのひとり暮らしを送っていくこととなる。

ひとり暮らし、合ってるかも

 恥ずかしながら、家事はほとんど手伝ってこなかった。たまに皿洗い、洗濯物を干す程度。本当に母親には感謝しかない。

 ひとり暮らしが始まったことにより、家事をせざるを得なくなった。ただ、やってみるとそこそこできることに気付いた。料理に関しても、自分が食べるだけのものなら作れるようになった。

 生活に必要なものを自分で調達する、例えばスーパーに買い物を行くといったことも新鮮だった。家族と買い物には行っていたが、自分に必要なものを、自分が選び、自分のお金で買うといった一連の行動に、新鮮さを感じていたのだ。

 なんだか、自立した気分。ひとり暮らし、合ってるかも。

 実家から離れてひとり暮らししてみた感想はこれだった。今思っても、ひとり暮らしが意外と向いていたのだと思う。実家暮らし、インドアな自分からは想像もできなかったが、やってみるものだ。

 ひとり暮らしの生活が落ち着いた頃、免許取り立て若葉マークをつけた愛車「MAX」で函館市内をドライブするようになった。赤レンガ倉庫、元町エリア、五稜郭は何度行ったことか……職場のパートさんから聞いた隠れ名所や美味しいお店に行ったこともあった。

 楽しかった。とても充実していた。自分の人生を、自分で動かしている。そんな気になった。

 しばらくして、市内の違う支店に後輩となる子がやってきた。この子と休みの日に遊ぶようになるとドライブの範囲も広がった。

 函館という街でアウトドアな一面が開花し、以降の人生に多大な影響をもたらすこととなる。


憧れの街から第二の故郷に

 函館で暮らしていたのは、約2年くらいの短い期間だった。もっと暮らしていたかったのだが、また異動となり札幌に戻ることになる。

 ただ、短時間とはいえ、それまでの人生の中でも屈指の充実した密な2年だったと言える。だからなのか、そもそも函館という街に憧れがあったからなのか、第二の故郷のように感じている。

 今でも函館というキーワードに出会えば、振り向いてしまうし、SNSで函館の方のアカウントをフォローするし、函館銘菓をお取り寄せするし……函館が大好きなのだと思う。

 函館に住まうことになっていなかったら、きっと今の自分はいない。さらには、あの時点で函館から札幌に戻る形で異動となっていなければ、利尻島に移住するなんていう突拍子もないことを言い出すこともなかった。

 結果的には、すべてそれでよかったのだと思う。ただ、函館にはもう少し長く暮らしていたかったという気持ちは常にある。

 いずれ、子供が大きくなったら必ず連れていきたい。夫も行ったことがないと言っていた。自分を成長させてくれた街を、自分の家族と共に訪れ、連れ回したい。

 今は、そんな小さな願いを抱いている。


私的・函館のここがおすすめ

 観光地としても人気の高い函館。おすすめは多いが、特にこれというものを厳選して紹介したいと思う。
 また気が向けば、追記するかもしれない。

①なんといってもやっぱりラッピ

 全国的にも有名なご当地ハンバーガーショップ・ラッキーピエロ。もはやハンバーガーショップの域を出ており、いろんなメニューを食べられる。個人的にお世話になったのは、チャイニーズチキンバーガーはもちろん、店舗限定のラーメン。水曜日に行くと安くなるというので、よく上司に連れて行ってもらった。あんかけ焼きそばも美味しかった。皿が大きく、はじめはひいてしまった。
 今でもふとした時、やっぱりチャイニーズチキンバーガーが食べたくなる。

②鳥居と海が共演・石崎地主海神社

 職場のパートさんに教えてもらったスポット。春先にはじめて行ったが、桜並木に鳥居越しの海という素晴らしい景色を拝めた。市街からは距離があるものの、ドライブがてらぜひ行ってほしいスポットのひとつ。

③函館で最初に行ったカフェ・オールドミス菊

 函館元町の住宅街にある、隠れ家カフェ・オールドミス菊。ここには、何かあるたびに癒されに行った覚えがある。住宅にお邪魔しているような、そんな感覚になるカフェ。簾から溢れる外の光がほどよく、風が吹き込んで心地よかった。
 おすすめはムーンライト。バニラアイスと甘く煮た黒豆、そして寒天で夜空を描いたメニュー。ほどよい甘さがコーヒーに合う。手書きのメニューも素敵だった。


 利尻島からだとかなり遠くなってしまった函館。数年前に上司だった方の結婚式に呼ばれ行ったが、あれから街並みもいろいろ変わっているようだ。
 
 家族と行けるようになった頃にはどうなっているだろうか。楽しみだ。

 次回は現在の居住地であり、移住先というだけであったはずが定住地になりつつある利尻について書きたいと思う。
 

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