路地裏の迷子達

「ねぇ、ディック」
「なに、デリック」
「ここは何処だろう」
「もうその質問は聞き飽きたよ」
「僕達帰れないのかな」
「帰れないのかもね」
「随分悠長だね」
「そうかな。あ痛っ」
「どうしたの」
「万年筆のキャップ、ポケットの中で外れてた」
「あーあ、腿に血が滲んでるよ。まるで凶器だね」
「違う、パパがくれたプレゼントだよ」
「なんでパパは僕へのプレゼントはインキ壺にしたんだろう」
「知らないよ。ところでデリックのポケットから出ている棒は何？」
「キャンディーだよ。さっき行商のおじさんがくれた」
「ええっ、知らない人から食べ物を貰っちゃ駄目ってママが言ってたじゃない」
「だって行商人ならちゃんとした人でしょう」
「駄目。偽物の行商人が毒入りをくれたのかもしれない」
「ディックは推理小説の読み過ぎだよ」
「とにかく用心しないと」
「ねぇ、ディック」
「なに、デリック」
「ここは何処だろう」
「もうその質問は聞き飽きたよ」
「僕達帰れないのかな」
「帰れないのかもね」
「随分悠長だね」
「そうだね。二人一緒なら怖くないもの」
「うん、そうかもね」
「だからさ、同時にそのキャンディーを舐めようよ」
「そうだね、毒入りでも二人一緒なら怖くないね」
「じゃあ『せーの』で舐めよう」
「うん」
「せーの」
「せーの」
「」

お題サイトよりお題をお借りしました。
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