若さを失い自由になった大人

「ねえ、あれって大学生?」

同僚に声をかけられて顔を上げた。
指し示す先には、黒いスーツを着た一団。
男性は髪を短く束ね、女性は髪をひとつ括りにしている。

「あー、そういえば大学4回生が来るって言ってましたねえ」
「まじで? 高校生かと思ったわ」
「20歳前後なんて、この歳になったら全部一緒ですよ」
「おぼこいなぁ」

待て同僚、「おぼこい」なんて久々に聞いたぞ。

ちなみに、関西では大学生◯年生のことを、◯回生と呼ぶ。
しまった、ここで私の生まれがバレてしまった。
閑話休題。

私が彼ら彼女らのような出で立ちで、様々な企業の門戸を叩き、

「えらいすみませんが、オタクの会社に入れてくれはりませんかねえ」

と言って回ったのは、既に云…年前になる。
考えると気が遠くなる年数だ。
わー、怖い怖い。

当時を思えば、まだ若かった。
とても真面目で実直で素直で誠実で、ようやく入れた企業ではストレスから体を壊した。
適当に手を抜けば良かったのかもしれないが、真面目で実直で(以下略)な私は、手を抜くことにも罪悪感を覚えていた。

色々なルールや「べきだ」「せねばならぬ」に縛られて、当時は意識していなかったが、それなりの生き辛さを感じていた。

それが、今やどうだ。

「これくらいじゃ死なないからな」

そんなことを思いながら、自分ルールも打ち破り、若い頃は「してはならぬ」と思ってたことも、合法の範囲内で、できるようになった(違法行為もしてないし他人に迷惑をかけることはしていない。ちなみにこの一文は、炎上対策である)。

私は年とともに若さを失っているが、代わりに、若い頃はなかった「柔軟性」や「良い加減」、「ゆるさ」、「経験」、「知識」を得て、自由になった。

でも、まだ足りないと感じている。

私はもっと、自由になれる。

世の中には「若い頃の方が自由だし楽しいよ」という人も多くいるが、決してそんなことはない。
大人になることは、良いことだ。

そう思えるようになった「大人の私」は、云…年前の「若い私」に伝えたい。

大人って、最高だぜ。

そう思えるようになったことが、私にとって「大人になったと思うこと」だ。
気兼ねなく旅行にも行けるし、奮発してハーゲ◯ダッツのアイスクリームだって買えるしね。

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