スマートファクトリー構築に向けて目的・長所や課題を整理して導入手順をイメージする

スマートファクトリーとは

スマートファクトリーは、持続可能で継続的に進化するためにデジタルデバイスやデータを利用した次世代の工場です。
IoTやAI技術を用いて（原料調達から出荷・物流までの）製造工程の最適化を図ると同時に省人化・省力化や歩留まり改善などを実現し、生産性向上を実現します。

スマートファクトリーが注目される背景

スマートファクトリーが注目されるようになった背景には、ドイツ政府が提唱した「インダストリー4.0」にあります。
インダストリー4.0とは、IoTやAI技術を用いて製造業の革新をするというドイツの国家戦略プロジェクトです。
スマートファクトリーは製造現場から得られる様々なデータを現場の経験値とAIを用いて、製造プロセスを最適化しますが、そのアウトプットは現場にフィードバックするだけでなく、異業種と連携したビジネスモデルが創造されています。

スマートファクトリーの目的

これからスマートファクトリー導入を考える際、また、検討を始めている企業の方々も、『導入目的』をイメージすることが大切です

データの見える化（可視化）は品質・コスト・業務効率に貢献

1. 品質向上
   ヒューマンエラーをデータから見える化して対策を考えることで、製品の歩留まり向上、品質安定化、省人・省力化を図れます。

2. コスト削減
   IT技術を用いることで、ヒト・モノの稼働状況や資材在庫状況をリアルタイムで把握・共有化・見える化が実現し、従業員の稼働時間・動線管理や在庫管理にかかるコストが最適化できます。

3. 製品化・量産化リードタイム短縮
   IoTの活用は、製造工程のデータ解析が容易となり、改善や課題が明確となります。データに基づき開発、設計、量産化、物流などの工程の課題を解決することで、プロセスが効率化され、製品化・量産化に関わるリードタイムを短縮することができます。

4. 人材育成対応
   多くの製造業現場には『匠の技』が存在している。しかし、そのスキルを持つ人材が不足・減少しています。スマートファクトリーでは『設備をデジタル化』するだけではなく、技能や知識を（デジタルデバイスなどを用いて）収集・深層学習することで、人材育成を活性化して、多くの技術者や関わる社員にスキルを共有できます。

5. 新しい付加価値の提供とその向上
   スマートファクトリーの実現によって、今まで想像もしなかったユーザーとの協業など、新たな付加価値が生まれます。また、データがデジタル化され、IoTセンサデバイスや通信機能の発展で、ブロックチェーンによるトレーサビリティーの強化や生産者の見える化が実現し、製造・生産者と消費者が身近な存在となります。

スマートファクトリーのメリット

1. 業務の見える化

   1. 各種機器にIoTやAI技術が搭載され、設備・機器の稼働状況が見える化（可視化）されることで、迅速に改善点を把握できます。

   2. 各業務を可視化することで、生産性の高い業務とあまり効率的でない業務を把握することが出来ます。

   3. 効率的ではない業務はデータを基に改善し、PDCAを繰り返すことで、業務の効率化の底上げができるようになります。

2. エネルギーの最適化

   1. 工場では稼働に必要な電気・水・ガスなどが消費されます。エネルギー消費は、コストに反映されますが、製造中に可視化していないことが多く、コスト意識が低い項目であることもまた事実です。

   2. そこでスマートファクトリーでは、エネルギーをリアルタイムに把握し、効率的に使用するためのシステムとして「FEMS（工場エネルギー管理システム）」が導入され始めています。

   3. FEMS（フェムス）は「Factory Energy Management System」の略で、工場の生産設備のエネルギー使用量や稼働状況を可視化して、エネルギー自体を管理するシステムです。

   4. エネルギー使用量可視化して、電力の平準化や、状況に応じて生産設備の運転制御を行い、エネルギーの最適化を図ります。

   5. 今までは『事後管理』であった消費エネルギーの把握を、AI技術を駆使して、製造時にリアルタイムで把握し、制御することが出来るようになりました。コスト削減や環境保護の観点で大変期待されるシステムです。

スマートファクトリーの課題

多くのメーカーが注目するスマートファクトリーですが、実現に向けて次の点をクリアしなければいけません。

スマートファクトリーにはセキュリティ強化などのコスト負担も検討項目と捉える必要性

1. 高額な導入コスト

   1. 最新技術を搭載した機器類の購入・設置にかかる費用

   2. FEMSなどの新システムの導入・運用費用

   3. 機器類の取り扱いに関する社員教育の費用

2. 定期的な機器のメンテナンス

   1. 最新技術を使用した機器は、定期的なメンテナンスが必要です。

   2. 機器によってメンテナンスや保全のプログラムが異なるため、機器個別のメンテナンス方法を理解して実施する専門スタッフの確保・教育が必要です。

3. サイバーセキュリティの強化

   1. スマートファクトリーにはネットワーク接続が必須です。

   2. ネットワークに接続している限り、データは常にセキュリティリスクを抱えています。

   3. ハッカーによる攻撃によってシステムを破壊される可能性もあります。スマートファクトリーのシステムが停止すると工場の稼働も停止してしまいます。

   4. 製品や製造に関するデータは機密情報であるので、ウイルス等によってデータを操作されてしまうことは損害だけでなく、社会的信用にも影響します。

   5. このような事態にならないよう、スマートファクトリーを構築する段階からサイバーセキュリティの強化に取り組むことが重要です。

4. データを活用する仕組みづくり

   1. スマートファクトリーは、データを有効に活用することが重要です。

   2. データ活用の目的を明確にして、どのようなデータを取得し、どのように解析するか？またデータの分析方法や業務改善への利用方法などの仕組みづくりが重要です。