文章_夜
「なんだか今日は感傷にでも浸りたい気分だなあ」
と思う帰り道がある。
こういう時に帰るのは、独りの家でなくてはいけない。
このまま映画館に行くのでもいいのだが、そんな元気も無い。
時間と金と労力を引き換えに「疲労」を頂くようなものです。
そんな時は大抵、セイユーで酒とチョコレートでも買っていく。
カルーアリキュールと、おいしい牛乳をカゴに入れる。
それだけでも少し満足したような気持ちになるけれど、お菓子コーナーでチョコレートを吟味します。
せっかくのごほう日、いつもは買わない426円のを1箱選んだ。
1つ1つ銀紙で包んで、並べて入ってあるやつ。
2種類の味が入っている。
これは、塩の味と、ピスタチオの味。
おまけに、「きのこの山とたけのこの里」バラエティパックも買った。
これは後日食べるために買って、なんだかんだ今日のうちに無くなっている予定のやつ。
家に着くと、外気よりも床と壁の醸し出す冷気の方が冷たい。
先にホットコーヒーでも飲もう。
前に実家からの余り物で持ってきていたドリップコーヒーをひとつ取り出した。
煮えついた湯を入れて、少しでも冷めないうちにゴクンと飲むのがいい。
熱さが喉を刺激して、肺が暖まるくらいがちょうどいい。
飲み終わった後にカフェインが脳と心臓をドクドクさせるくらいがいい。
マグカップに牛乳を入れる。
同じくらい、リキュールを入れる。
甘い。
甘ったるい。
甘さでまた脳と心臓を鳴らす。
今日はどんな映画が良いだろう。
あまりにも単調な生活が当たり前になってくると、人は他の誰かに自分を投影して刺激を得るようになるらしい。
ポスターの夕日が綺麗な洋画を、感情でひとつ選んだ。
明日も朝起きないといけないから、短めのものを。
観ながら、チョコレートを口に入れて数回噛んだ後、カルーアミルクで流し込む。
ふうぅ。
動悸が聞こえてくる。
ノートPCを取り出して、自身のブログサイトを書き始めた。たまの日課になっている。
文章は、真夜中に書いてはいけないという。
感傷に浸りすぎて、昼間に読んだら羞恥心が働くような出来になるからだ。
でも、こんな文章を読むのもまた、真夜中の人間くらいではなかろうか。
読む側も浸っているのなら、真夜中に書こうとなんの問題も無いはずです。
部屋の端に、数ミリリットル、残されたウイスキーの瓶があった。
飲みかけのカルーアミルクに入れてみる。
ゴクン、ゴクンと一気に飲み干すと、気分が楽しい。
フランス映画というのはどうしてこんなに映像が美しいのか。
フランス映画用のカメラでもあるのでしょうか。
時計はいつの間にか3時半を越えている。
まあいいか。
たのしもう。たのしもう。
日常と映像の間で、現実ともフィクションとも言えない文章を書いた。
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