仕事せずに給料をもらって生きていきたい? [ほぼ毎日書くコラム]

飲みの席でよく「仕事せずに給料をもらって生きていきたい!」なんて話が出る。先日も妻と妹が食事をしながらそんな話をしていた。僕はこの手の意見を聞くたびに、賛同する気持ちと反発する気持ちの両方が同時に湧き上がる。
ことフリーで仕事をしている僕にとって、働かなくても一定額もらえるという状況は理想の極みだ。ほぼ毎日脳裏を過ぎる「これから先の将来、生活費を捻出できるだけの稼ぎを得続けることができるのだろうか?」という不安から解放されるのであればそんなに幸せなことはない。誰か……なんとかしてくれ……。

一方で、実際に「仕事せずに給料をもらって生きる」ことが理想的かと言えば、答えはNOだ。仕事を一切しない生活、想像しただけでゾッとする。僕は実際に、半年ほど仕事をしてなかった時期がある。できることなら、二度とあんな生活は送りたくない。

新卒でブラック企業に入社し、一年半精神がどうにかなるまで働き続けた僕は、2012年9月から半年ほど無職生活を送っていた。実家に帰り、再就職を目指してひたすら面接を受ける日々。正直なところブラック企業にいた時と同じぐらいは辛かった。
もちろん、貯金が目減していくことも辛かったし、連日送られてくる不採用通知にもゴリゴリと精神力を削られていた。ただ、それ以上に辛かったのは「社会から必要とされていない」という感覚だ。

周囲の友人たちが日々労働に勤しむ中、自分だけは毎日やることもなく、日々を漫然と生きる。それでも、自分を抜きにして順調に回り続ける社会を見て、無力感を日々募らせることになる。
当然のことながら、平日昼間から会える友人がいるわけがなく、その無力感を吐き出す場所も見つからない。世の中に自分が必要とされる場所なんて一つもないという感覚が強まっていき、孤独感を抱きながら生きることになる。
今思い返してもあまりの辛さに背筋が凍る。あんな経験はできればもうしたくない……。

社会に出てから定年退職を迎えるまでの間、無職期間を経験する人ってあまりいないとは思う。無職生活ってなんだか気楽で自由な生活がそこには広がっているように感じるかもしれないけれど、実態はそんなにいいものじゃない。経験者に言わせれば、できればあんな生活は二度とごめんなのだ。

とは言え、まだ見ぬ世界にパラダイスが広がっているような気がするのはわかる。「仕事せずに給料をもらって生きていきたい!」は「田舎生活ってのんびりしていて素敵だよね!」に似た、実在しない理想郷なのかもしれない。

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