チャールズ・ブコウスキー『ありきたりの狂気の物語』

表紙デザインと、巻頭の「狂った生きもの」が良かったので買ってみた。

あまり好みでない作家だろうなという印象はあって、それはやっぱりそうだったな、という感想。でもつまらないのではなかった。むしろ、期待以上には楽しめた。

やはり青野總の翻訳が良い、というのが大きいのだろう。

酒、セックス、犯罪、暴力といった“ありきたり”のガジェットが大量導入されても、ブコウスキーの個性が削がれないのは凄い。極めて自省的、自己と社会との距離を測る視線の冷静さ。

読み終えて、冷え冷えとした孤独と、微かな暖かみが残る。ありきたりの狂気とは、我々一人ひとりの生活から抽出されたものなんだろう。

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