『木曜日』盛田志保子

書肆侃侃房の現代短歌クラシックスの一冊。
現代短歌はどれもそうなのだけれど、短い表現だから説明は可能な限り削ぎ落とされて、結果的に何を描写しているのか分かりづらい。

では、分かりやすいほうが良いかというと、そんなこともなくて、読んでいてスッと理解できる短歌はどこか物足りなくて、?が浮かぶような表現のほうが、心に残る。

手術台の上でミシンとこうもり傘が出逢うまでの長い物語を端折って、出会いの場面だけを描くような、分からなさ。

そこから、何故こんなことになったんだろう?、と想像を廻らしたり、そもそもこれはもしかしてこういうことだろうか?とミステリの暗号を解くように言葉の音や象徴性や暗喩の可能性などを探るように読む。しかし何も答えは見つからなくて、ただ言葉と僕自身が宙ぶらりんなまま取り残される感覚。

 ふりむけば光に溶ける木々の葉よ記憶の中で油断する人

 ミイラみて日差しのなかに躍り出る人生にペーパーウェイトほしい

 羽根を打つために駆け出すそういえばこの世の第一印象は空

モダニズムの詩のような感覚が面白い。

 

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