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【RAT RACE】#BAR 24/05/25.

Dr.Feelgood This is a work song♪

【RAT RACE】マガジン
アルバイト遍歴を気ままに綴ってくシリーズ、労働と仕事を線引きせず考察・研究。何の自覚もないまま賃金だけ得て無頓着にやってきたツケを支払います。


1996.池袋シルバラード

#BAR "SILVALADO"

20代後半、掛け持ちバイトに追われる日々だった。
駐車場と中古レコード屋(先輩のやっていた高円寺ヨーロピアンパパ)そしてここは尊敬するベーサーM氏が始めた池袋にあるロックなバーであった。
ここではイロイロあった、そしてイロイロ無かったとも言える。
とにかく認知されていない水商売の悲哀さか、96年当時にできる限り考えうるコトはやったような気がするが、お客さんは来ないから路上でビラ配りをする毎日だった。
第一僕はお酒のコトを良く知らない。
呑む方は一人前でも、それを配給する仕事は半人前以下の素人でした。
なにしろそれまで直球勝負、原液ばかり摂取するヤツで、ラム・ジン・テキーラ・ウォッカ、焼酎に至るまで、そのまんまをありがたがって呑んでたので、その世間でいわれるカクテルに対する知識は皆無でした。
マイヤーズラムをラッパ飲みしたり、いいちこ焼酎を素で飲んだり、ウイスキーもただロックでやっていたのだから、どうしようもない。
それでカクテル本で勉強しながら、お客のいない店で、M氏と一緒にベロベロになってた。
そう、ちゃんぽんするとお酒てば強力になるってコトを学んだ。
コレとアレをステイしてソーダ入れたらくぅ〜ってなり、アレとソレをシェイカーで振ってみたらこれまたくぅ〜〜って、ほぼほぼ実験を繰り返し仕事を終えていた。
結局、池袋から終電で帰れなくなり(住んでたのは世田谷区)違う店へ研究しに出掛け、店でぶっ倒れるか24時間サウナで夜を明かす。
週3くらいだったけど、もーいったい遊んでるのか何なのかわからないような感じ。
来店されるのは友達ばかりで、そうやって一緒に呑んじゃって、一見さんが来たら恐れ慄く。
楽しかったなぁ〜、池袋ではちょーどカラーギャングなるのが流行ってて治安は悪かったけど、赤だの青だのやってる中、僕らは研究に明け暮れる。
トム・クルーズ映画「カクテル」のようにシェイカーを回すがそのぎこちなさよ、ちゃんぽんすれば酔っ払うけれど、当時の僕はまるで関心ないそれらの行為を心地よく思っていなかった。
そうやって半年くらい過ぎた。
売上はいっこうに上昇せず、M氏の苦悩も分かってしまうし、暗澹たる状況は続いたが、少しづつだけど新しいお客さんも見えてきた。

  • O氏の話。
    勘のいいお客さんは気付く。
    雑居ビルの地下一階、隣の店はスナック(女の子が隣に座る系)うっすらカラオケ、こちらはガンガンアメリカンロックをかけTEX MEXなノリを醸してる。
    O氏が常連になり、少しづつ色合いがついてくる。
    店がどんなに色を塗りたくろうが、結局は集まってくる客層がつけていく色が次のお客へと繋がっていく。
    狙ってうまくいく場合もあるだろうが、素人はその縁に頼っていくしかない。
    それで僕はレコード店をやりたいためにイロイロと稼いでいて、O氏はそんな話を親身になり聞いてくれた。
    彼が所有しているレコードを見せてもらい買取させてもらう。
    それはそれは凄い内容でした。(いつかその話はちゃんとします)
    たぶん査定というにはおよそ足りていない額だったけど、彼は知ってか知らずか僕に託してくれた。
    それからスターウォーズのフィギュア(本に載るくらい)マニアでもあった彼の委託販売もやりました。
    これはつまり、97年冬に始める中古盤屋"HERE SCENES"への縁となります。
    残念ながら数年前に他界されてしまいましたが、僕にとって彼と出会わなければ今はなかったと思っています。
    それからは随分ダメな付き合い方だったと思いますが、感謝しかありません。
    O氏はレゲエバンドのヴォーカリスト、凄くカッコよくて、小声ですが、ショーケンみたいだった。

この店で何度となく、ジョン・レノン追悼イベントを開催しました。
96年にやった第一回はあまりにも大騒ぎし過ぎて怒られた。
アコースティックだったけどお客さんのストンピングが激しくて、他店から苦情だった。
その次の年、オーナーM氏が病気で休業となり、その年は移りましたがその後2000年まで続くイベントになった。
98年にM氏は復帰し店は続きます。

僕は、97年冬に中古盤屋"HERE SCENES"を始め、それからはお客として通いました。
その後、"SILVALADO"はライヴイベントも多数行われる。
三上寛、遠藤ミチロウ、ここで凄い人たちをたくさん見させてもらいました。
「渡辺勝/SIL,BALLAD(2000)」は、もちろんここでの作品です。
店はもう無くなってしまいました。

すべてはは儚い、今までずっとあったものが、ずっとでないコトを思い知る。
だから儚い、自分が今までやってきた仕事もそりゃあその辺に生える雑草のようなものです。
誰も知らないし知ったこっちゃない、たまたまそれに関わっただけ、
でもそれでいいんです。
日々移ろい行き、その時、それだけがそこにあるだけなのです。
それを、Rock'n'Roll と詠んでおきましょうか、さしあたって。