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関西の天辺は譲れない、譲らない。

6月の全日本大学駅伝関西選考会は、2位の関西学院大に20秒以上の差をつけて優勝。10月に行われた出雲大学駅伝では、関西勢トップの11位。続く全日本大学駅伝は、18位と惜しくも関西学院大に敗北するが関西勢2位となり、関西駅伝界では圧倒的な力を誇示する立命館大学。
4連覇のかかる丹後路へ、関西王者の強さの裏側を覗く。
[取材協力:立命館大学陸上競技部 マネージャー 赤川雅直]


1.新入生がもたらす追い風

「1年生が入る前の冬、実はあまりチーム状況が良くなかったんです。」
気の緩みからの故障など、よくない雰囲気が漂っていた立命館。そこへ新しい風をもたらしたのは1年生だった。心強い仲間になると同時に、新しいライバルの出現によって、部内の雰囲気に変化が起こった。選考会まであと2ヶ月の出来事だった。

6月に行われた全日本大学駅伝選考会。立命館大学は1年生3人を含めた10人で挑んだ。
選考会全体トップは山田真生。4位に高畑凌太。ともに29分台でゴールしその強さを見せつけた。加えて1年生の山﨑皓太と大森駿斗がそれぞれ全体11位、12位と大健闘し、ルーキーとしてチームに良い風を送り込んだ。チームとしても関西王者としての意地を見せつけたレースとなった。

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2.強いチームであるために

強豪長距離チーム、駅伝部というと、大所帯で取り組む姿を想像するのではないだろうか。実際そういったチームは多い。しかしその一方で、立命館大学陸上競技部男子長距離パートは少数で構成されている。
スポーツ推薦枠は毎年わずか3枠。それ以外は基本的に一般入試から入部基準のタイムを突破し入部するほかない。つまり一般入部者がいなければ、丹後駅伝エントリー人数の16人には及ばないのである。
そんなチームの重点は「落ちこぼれをつくらない」こと。少数での活動で強いチームであり続けるには、一人の成長が大きなものとなる。
限られたメンバーで、個人が確実に強くなる。この立命館らしさが、指導陣・選手の練習への原動力にもなっている。

「全員を伸ばすことをモットーに指導してくださっていると感じ、日々感謝しています。」
普段の練習では基本的に全員で同じメニューをこなしているが、指導陣と選手の距離が近く、個人のやりたいことを提案・相談しやすい環境が整っている。この環境の中で、関西のトップを守り続けてきた歴代の卒業生も成長していった。もちろん補強トレーニングやjogなどといった基礎練習も疎かにしない。これは故障を防ぐという面にもつながると語る。ここにも立命館の「落ちこぼれを作らない」という意識が現れている。

そんなチームの目標として掲げられているのが、「全員が高校のPBを更新すること」。
前述の通り、ひとりひとりの成長がチームの結果に直結する立命館。部にはPB更新の一覧表が張り出されており、タイムは自分の努力を数字として可視化できる。自分の成長を意識できる上に、同時に仲間の努力も数字として意識せざるを得ない。常に切磋琢磨できる意識がチーム内に存在しているのだ。

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活躍する仲間の姿

学生陸上の大舞台である日本インカレには5000mと10000mに山田真生が出場した。男子10000mでは、山田がレース序盤から留学生集団にたった1人で食らいつく姿をみせた。 チームの目指す攻めの姿勢を体現した力強い走りに、チームメイトは刺激を受けた。同時にチームのエースを通して感じた全国のレベル。もっと高みを目指すという奮起の気持ちがさらに強くなった。

3.全国の舞台へ

10月7日、2年ぶりの出雲駅伝。
去年は中止、一昨年は過去最高の6位であった。

出雲大学駅伝2021
1区 高畑凌太 24’15 (区間12位)
2区 大森駿斗17’14(区間12位)
3区 山田真生 25’15(区間9位)
4区 永田一輝 19’41(区間7位)
5区 安東竜平 20’15(区間9位)
6区 山﨑皓太 33’34(区間15位)
総合結果 第11位  2°20’14

出雲駅伝では主将の永田が区間7位と大奮闘。山田、安東が区間9位と活躍した。今年のキーマンとして赤川が挙げたのは安東竜平。「Aチーム(一軍)の中でもかなり調子が良い。彼には駅伝を走って欲しい」と語ってくれた。夏合宿以前からスプリントトレーニングを取り入れ、練習をきっちりと積んできた。「自分たちに分がある」と意気込んで挑んだ出雲。目標には及ばなかったものの、"やはり関西トップは立命館か"と感じさせるレースであった。

全日本大学駅伝2021
1区 山田真生  27’45(区間14位)
2区 高畑凌太  33’37(区間16位)
3区 大森駿斗  35’29(区間17位タイ)
4区 安東竜平  36'39(区間21位)
5区 谷口晴信  38'19(区間17位)
6区 山﨑皓太  40'35(区間20位)
7区 中田千太郎 55'48(区間19位)
8区 永田一輝  1°03'16(区間20位)
総合結果 第18位 5°31'28

続く全日本大学駅伝。第1区に山田を配置し良いスタートを切った。しかし、後半で苦しいレースとなった立命館大はチームとしては18位となった。また関西学院大が16位でゴールテープを切っており、関西勢トップを譲る形となってしまった。目標としていた入賞とは程遠い結果となり、今年の残された丹後駅伝へ全てを懸ける形となった。

4.王者として負けるわけにはいかない

今年の関西の天辺争いは熾烈を極めることが予想される。
出雲駅伝では、関西学院大に大阪経済大が先着。しかし、全日本大学駅伝では関西学院大が関西勢トップ。他にも昨年の丹後駅伝において3位と大躍進を遂げ、10月の関西インカレで長距離種目複数入賞を成し遂げ1部昇格を果たしたびわこ学院大。今年は伊勢路への切符を逃し、この丹後駅伝にすべてをかけてくるであろう京都産業大。全日本大学駅伝では日本学連選抜として活躍した足立率いる京都大は、昨年の丹後駅伝でも4位と近年の成長が著しい。また、同大会で同じく日本学連選抜として1区6位という快走を見せた亀田擁する関西大は、今年の関西インカレにおいて長距離メンバーが強さを見せ、丹後駅伝でもその安定力を見せつけるだろう。

どの大学も関西の天辺を掴みとる実力と気持ちがある。関西地区の実力は例年以上に拮抗しており、立命館大学の4連覇への道のりは過酷を極める。
丹後駅伝は山道、海岸線、市街地と、複雑で種々雑多なコースが選手を待ち受ける。コース配置で鬼門となるのは、アップダウンの厳しい2区と3区だと赤川は語る。上りの2区には精神力のある選手、下りの3区には恐れず突っ込んでいける度胸のある選手をと、夏合宿でも練習に取り入れ、選手の適性を見極めてきた。

関東学連王者を決める箱根駅伝と同様、この丹後駅伝は関西学連王者が決まる。
「今年は4連覇がかかります。箱根でも4連覇は難しいんです。」
赤川は優勝しか許されないと強く語る。連覇達成とともに、恵まれた練習環境と難しい状況下でも活動を見守ってくれた大学、共に歩み指導してくれる指導陣に見える形で恩返しをしたい。
挑戦者ではなく、王者として挑む。追われる立場の彼らは一体どんなレースを見せてくれるだろうか。

来たる11月20日、関西の天辺が決まる。
2021年のゴールテープへ、笑顔で駆けてくるのは、果たして。

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