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【#refereenote 】vol.6 名古屋グランパスガブリエルシャビエル選手の乱暴な行為について

ごきげんよう!
Jリーグで起きた一発退場の重要事項報告書を書いてみる #refereenote です!
リーグも終盤戦になり、累積での出場停止に気を付けたい時期になりましたね。試合をこなせば当然警告をもらう機会も増えるのですが、試合数トップの横浜F・マリノスは30試合を消化しました。一方、最も少ないクラブである湘南は25試合です。5試合差もある…
出場停止とかにも影響がありそうですね…
今回は初登場名古屋グランパスです!
あまり話題にならなかったシーンですが、せっかくなので書かせて下さい。あとで書きますが、まあ確かに魔が差したのでしょうが、物理的に相手を痛めつけるような行為では結果的にはなかったのかなと。
それは後ほど!

1.今回のケースの紹介

今回は明治安田生命J1リーグ第26節サガン鳥栖 vs 名古屋グランパス@駅前不動産スタジアムからのご紹介です。
スコアレスで迎えた84分の事象です。
⑴名古屋グランパス成瀬選手がサガン鳥栖ベンチ前から前方へスローインし、ボールはハーフウェーラインを超え、サガン鳥栖陣へ
⑵来たボールをシミッチ選手がヘディングですらし、競り合っていたガブリエルシャビエル選手と大畑選手の元へ
⑶どちらのボールにもならずディフレクションし、1m手前にいた原川選手の足元へ
⑷競り合いの中でもつれたシャビエル選手と大畑選手が腕をほどく際にシャビエル選手の体勢が崩れる
⑸シャビエル選手の足が大畑選手の前に残り、スコーピオンキックのようにして腹部を蹴り上げてしまう

DAZNでは1:59:50〜から確認できます。
以下、該当シーンから始まるYoutubeリンクです。

2.5W1Hで整理しよう

では、例に倣い5W1Hで整理してみます。
・Why:乱暴な行為を犯す
・When:83:20(公式記録は84分)
・Where:名古屋グランパスのベンチ前付近
・Who:名古屋グランパス10番ガブリエルシャビエル選手→サガン鳥栖31番大畑歩夢選手
・What:相手競技者を蹴る
・How:シャビエル選手が左足の裏で大畑選手の腹部を蹴った

+判定後の態度について
主審が退場を命じた後、アルトゥールシルバ選手は判定を受け入れピッチから速やかに離れた。

3.重要事項報告書

「84分名古屋グランパス10番ガブリエルシャビエル選手の乱暴な行為を犯したことによる退場処分について」
84分、名古屋グランパスのベンチ前付近でガブリエルシャビエル選手と大畑選手がボールを競り合った後、両者腕をほどこうとした。その際にガブリエルシャビエル選手が大畑選手の腹部を身体の前に残した左足で蹴り上げて乱暴な行為を犯した。
この行為により、ガブリエルシャビエル選手を退場処分とした。
主審が退場を命じた後、ガブリエルシャビエル選手は判定を受け入れフィールドから速やかに離れた。

4. #refereenote view

シンプルな報告書になりましたね。
シャビエル選手はレッドカードの判定に最初こそ驚いていましたが、笛がなった瞬間に覚悟をしていたと思うので、すんなりロッカーに下がっていきましたね。
では、今回の論点です。
このレッドカードは防げなかったのか?」
みなさんはどう思いますか?
もちろんゲーム全体のマネジメントが重要になると思いますが、今回はこのシーンと今シーズンの方針である「多少の接触(コンタクトプレー)ではファウルを取らない!」も併せて考えていきます。
ちなみに私の結論は「防ぐこともできた」と考えました。
理由は2つあります。
⑴インプレー前に声を掛ける
上記の映像では正確に読み取れませんが、シャビエル選手と大畑選手はスローインでインプレーになる前もしくはなった瞬間からお互いに押さえ合っていたと思います。そのような前兆があるのであれば、「お互いに押さえるのはやめましょう」「近くから見ていますよ」などの声かけをできたのではないかと思いました。経験上、このように声をかけると選手は最低でも止めようとはします。インプレーになった瞬間にまた押さえる選手もいますが…
その場合にはボールの行方にかかわらず、ファウルを取れば良いだけです。
⑵ファウルが軽いときに取ってあげる
インプレーになり、ボールが来たときにボールサイドにいたのはシャビエル選手です。手前で触ったのもシミッチ選手です。それを後方から大畑選手が押さえていました。ということは、大畑選手のホールディングのファウルで笛を吹いてしまっても良かったのではないかと思いました。
まあ、結果論ですけどね…
たしかに名古屋はボールを完璧にコントロールしていたわけではなく、ルーズボールだったので、ノーファウルも十分にサポートできますが10人になる代償よりは小さかったと思います。
いずれにせよ、蹴ってしまった選手を擁護はできませんが、途中出場したシャビエル選手は最後まで見たかったですね。

今シーズンは軽いコンタクトプレーではファウルをとらずにタフにやらせよう!という言葉をよく聞きます。その言葉は納得ですし、素晴らしいと思います。しかし、選手の目線に立つと軽いコンタクトでも悪質なファウルもあります。また、「押す、蹴る、つまずかせる」などの程度のあるファウルとは異なり、「押さえる」は程度のないファウルです。
つまり、押さえた時点でアウト。当然、プレーへの影響は見ますが、押さえられた側にアドバンテージがあるのは明白です。無論、その程度を使い分けるのも駆け引きといえばそれまでですが、プレーの意図を読み、予測し、我々審判員も判定の精度を上げないといけませんね。でないと、選手のフラストレーションが溜まり、ゲームの進行に大きな支障が出ます。

5.終わりに

今回の#refereenote いかがでしたでしょうか。
よく「ファウルをとるのが審判の仕事だ」という言葉を聞きます。これは間違っていませんが、それが主な目的ではありません。あくまでも、選手やコーチ、ファン・サポーターにとって魅力的なフットボールを届けるのが目的です。この目的を果たすために審判は与えられた権限と役割の中でファウルをとります。それは手段でしかありません。
ファウルもとるし、声かけもするし、警告も退場も出す、でも誰よりも目立たない。それが審判です。
是非、一つひとつの判定もそうですが、そんな視点を持ちながらサッカーを見るとまた別の面白味が増えるかなと思います。
ではまた。

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