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ただの「概念」じゃない。おれが纏うのは、推しの「人生の物語」だ。


※あてんしょんぷりーず※
この文章は漫画「魔王 JUVENILE REMIX」に登場する安藤潤也というおとこに頭と性癖と理性を焼き尽くされた限界腐女子が書いている文章です。いつもの文章よりも一段と頭おかしい怪文書となります。ほぼほぼ正気を失った状態で書き上げている文章となりますので頭を空っぽにして読んでください。
また今回の文章はいつにも増して「魔王JR」本編の詳細なネタバレを多分に含んでおります。ネタバレを完全に気にしない方、及び原作既読済みの方以外は、原作読了後の閲覧を強く推奨いたします。
あと今回の文章、圧倒的に長いです。湧き上がる情熱を抑えられないゆえにこうなりました。お許しください。また少しレポの順番が前後しておりますが、おれの拙いメモ書きと後ほどお送りいただいたオーダー会のメモを併せて文章を書いている故の変更および脚色となります。ご了承ください。
また本文中の一部画像は漫画『魔王 JUVENILE REMIX』(大須賀めぐみ著・小学館刊)よりお借りしております。
改めまして今回の素晴らしい体験をさせていただいた新星急報社様。そして何よりも安藤潤也というおとこをこの世に生み出してくださった伊坂幸太郎先生、ならびに大須賀めぐみ先生に。この場をお借りして心からの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。


供給がない。
ならば作るしかない。
これぞ自給自足。食料自給率の向上。いいことしてるじゃんおれ。

そんなDIY至上主義を突っ走る限界集落のオタク、ibukiです。

またこの話かよと思われそうですが(それはそう)、おれの推しは漫画「魔王 JUVENILE REMIX」に登場する少年、安藤潤也というおとこです。おれはこの16歳の少年に性癖を捻じ曲げられ、感性を焼き尽くされ、いつの間にか再燃して2年という月日が流れようとしています。改めてこんなに長い間頭の中を「安藤潤也はいいぞ」という単語が占めることになるだなんて、おれは再燃した当初、全く思っておりませんでした。ここまで一途にひとりのおとこを推し続けてきたのなんて久々だよ。それこそ賭けてもいいよ。(息をするかのごとく語録を使用するオタク)

安藤潤也というおとこ。優しくて少しバカで、その在り方は誰の上にも晴れ晴れとした光を降り注がせる、眩しくも明るい太陽そのもので。花開くような笑顔で笑いながら、それでも自分の意思を貫く強さを兼ね備えながら、今日も兄貴の盗撮に勤しむ、どこまでも愛らしくあまりにもかわいいおとこです。(ん?実の兄を盗撮してるのはおかしいんじゃないかって?潤也さんはぜんぜん普通だよ。賭けてもいいよ)

そして最愛の兄を不条理にも喪い。兄の後を、彼が命を落とした理由を追いかけていくままに数奇な運命に巻き込まれ、その中でひび割れていき変容していく、どこまでもうつくしくかなしいおとこでもあります。誰がなんと言おうがおれにとって安藤潤也は「うつくしい」おとこなんだよ。


彼の生き様を、彼の複雑極まる在りようを一言で言い表すことなんて到底不可能で。清と濁、陰と陽、光と影を複雑に孕みながらも、唯一無二の存在への思いを貫き続けるおとこの物語が、その在りようがおれはあまりにも大好きで。あのトンチキ弾丸列車ブレットトレインをきっかけに、彼というこの奇妙でいびつでいとおしい生き物に再燃してしまってからというものの、おれはずっと、何らかのかたちで安藤潤也というおとこの概念を追い続けているようなものです。

↓愛が暴走しすぎてコスプレをしたバーテンダーさんに推しカクテルを作ってもらった時の記憶。このときも色々と限界化していました。

とはいえ魔王JR、完結したのが十数年前ということもありますので、公式からの供給はほぼほぼ望めない。近年あった唯一の供給といえば、同じ作者さんの最新の連載で中期間にわたり取り上げられたことくらいという限界集落なので仕方ない。それはそうとしてめぐたん先生の最近の作画で「おおおおおおおおおおおおあおおおお(以下略)」とか「俺はぜんぜん普通だよ」とか拝めるとは思っていませんでした初めて読んだ時「ミ゛」とリアルに声が出ました。ありがとうめぐたん先生、やはり貴女はおれにとっての女神です。現在ゲッサンで絶賛連載中の「マチネとソワレ」はいいぞ。人類皆マチソワをすこれ。(ダイマ)


脱線しました。これだから限界オタクはいけない。


少しでも公式から供給があれば、干天の慈雨のごとく大喜びしてこの世のありとあらゆる命に感謝したくなるのが限界オタクというもの。めぐたん先生が伊坂バースのキャラの新規絵を上げるだけでお祭り騒ぎになるのがおれです。俺はぜんぜん普通だよ。今回のおれふつノルマ達成

ゆえにおれは潤也さんの沼にぽっちゃんしてからというもの、「供給は自分で作ってしかるべきもの」というDIY精神を持って、日々不毛なオタク活動に勤しんでおります。『そこになければないですね』、だったら作ればいいじゃない。いつも心にハリボテエレジー。

ねんどろカスタムオビツドールとかいう初手から上級者向け行為に手を出してしまったのがいけなかったのか(多分そう)、一度「作るよろこび」を覚えてしまったおれの煩悩もとい物欲はとどまることをつゆ知らず。推しカクテル作りやら推し香水作りやらに嬉々として挑んでは、毎回あまりの尊さだったりしんどさに爆発することになっておりましたが。(たぶん安藤潤也が尊いという理由で爆発四散した回数はゆうに100回を超えてるんじゃないかなと思います。おれはぜんぜん普通だよ
そんなおれでも一度やって、あまりの尊さに「ァァ……オァァァ………(嗚咽)」となりながらも、お財布事情的にあんまり頻繁にはできないなと思っていたものがあります。

それがこちら。
いわゆる「概念アクセサリーのオーダーメイド」です。


いやオーダーメイド以外なら概念アクセサリーというものは、案外お手軽に手に入るものなのです。メル○リさんで偶然見つけた安藤兄弟カラーのブレスレットとか(オレンジキャッツアイという時点で即決でした。キャッツアイは10月5日、安藤潤也の誕生日の誕生石のひとつなんですよねぇ……)、偶然立ち寄った本屋で開かれていた天然石マルシェで一目惚れしたタイガーアイのブレスレットとか(タイガーアイも10月の誕生石。おれと潤也さんと蝉ちゃんに共通する月なのです。あと「金運」向上のパワーストーンとして知られている、というのもこう、「安藤潤也」みを感じていいですよね)。
自分が「ア!!!これは実質安藤潤也の概念だ!!!」と認定してしまえば、案外概念アクセサリーというもの、それになりうるものというのはそこら中に転がっているものなのです。ほとんど某カメラ好きの竜殺しの先生が「汝は竜!!!罪ありき!!!」する勢いで、世の中のありとあらゆるオレンジ色のものをおれは「汝は潤也さん!!!カワイイカワイイネ!!!」しながら収集するようになりました。もちろん、正気だよ。(語録ノルマ達成)

それでもやはり、自分の怪文書を元に推しの「概念」を作ってもらうというよろこびも。一度知ってしまったら最後、抜け出すことのできない深い広い沼であるということを、おれもまた自分の経験上よく知っています。というよりも、「推し」がすぐ近くにいるということだけで、この世のすべてが尊く思えてしまうのです。

そこに「推し」がいる。これが幸せだ。

それ故に、オタクの憧れというものもまた止められないものなのですナ○チだってそう言ってたしね。実質限界オタクの旅は深淵への旅だ。
昨年の秋、おれは自分への誕生日プレゼントを兼ねて。その時はまだ青い鳥が飛び回っていたぺけという世界の中で、タイムライン上に流れてきた「ベネチアンガラスで作る推しアクセサリー」という文言に心を惹かれ。最近は界隈でもかなり有名になってきていますpiacetto様(@piacetto_venice)にお願いし、安藤潤也というおとこの概念アクセサリーを注文しました。


いやこれがかなりよかったのです。


潤也さん単体というよりも、「安藤兄弟」概念をそのまま落とし込んでくれたような、ベネチアガラスと天然石のネックレスとイヤリングのセット。少しめずらしい色味であるらしい、オレンジ色のベネチアガラスと、その上下で存在感を放つ真っ黒いオニキス。金具も結ばれていたり、糸のようであったり。兄貴と潤也さんは不可分であり、互いが互いの唯一無二であり最愛であり、死すらふたりをわかつことなどできないと。おれの怪文書をもとにお出しされたあまりにも尊い推しカプ概念は、それからずっとおれが「推し活」に臨む際に身につける、いわゆる必須装備のようになっています。或いはなんらかのアミュレットのようなもの。

おれ「(いる……胸元に推しカプが………いる………)」

歩くたびに胸元で揺れる、ペンダントトップの安藤兄弟。それだけで「推し」を身に纏っている感覚に、自然とこちらの気分も高揚してくるものです。やはり推しは心の養分。みんな知ってるね。


しかし概念アクセサリーはやはり香水などに比べると、どうしてもお値段が張ってしまうもの。香水が5000円あれば作れるのに対して、アクセサリーはやはり10000円近くはかかってしまうので仕方がない。今度は兄貴を主軸にしたアクセを作るのもいいかなぁと考えつつ、他に何か作れる推しの概念はないだろうかと、そう考えながらネットの海をぷかぷかと漂っていたおれの目の前に。


おれ「は??????(猫ミームのねこ)」



その記事は現れてしまいました。
その記事が、目に止まってしまいました。



おれ「なんと……なんちゅうもんを…………(震え声)」


思えば、おれが潤也さんドールを作った後に。初めて手を出したのはあろうことか、完全対面カウンセリング式で調香師さんにプレゼンをし、その場で推しの匂いをお作りしていただくというパターンの推し香水でした。その時はかなり不審者剥き出しのしっちゃかめっちゃかなプレゼンになってしまい、調香師さんの前で挙動不審になってしまったのも覚えてますが、そこで初めて、おれは「推しの解釈を自分の言葉で表現する」難しさと楽しさを知ったのもまた事実。

↓1年前から変わっていない、おれの初の「推し香水」体験記。ほんとにこの頃から全く変わってないなおれ。

文字書きの端くれである以上、やはり自分の得意なものは、文字で自分の「推し」を表現することだ。


それでも、こんなレポを読んでしまったら。
こんなの絶対限界集落のオタクとしては、やらなきゃいけないに決まってるじゃないですか。(ガンギマリ顔)


他の香水やらカクテルやらアクセやらが「怪文書を投げつけて、そこからお出しされる解釈を楽しむ」という、ある意味一方通行なコミュニケーションであったのもあり。更に直近に作ったものが「自分の解釈と感性のみで調合もとい作り上げた」推し香水という変化球であったのも相まって、おれは「他の人から直にお出しされる安藤潤也の概念」というものに飢えていました。

↓直近の推し香水作り。頼れるのは、「自分の感性」だけでした。


やるしかない。
当方、既に公式からの供給などほぼほぼ死に絶えている限界オタクゆえ。
自分の飢えは、自分で満たすしかないのだから。


覚悟を決めて、財布の中身には見ないふりをしつつ。おれは衝き動かされるままに、ショップのページに飛び込んでアクセサリーのお申し込みをしたのでした。


限界オタク、オンラインにて不審者に戻る。


今回おれがアクセサリーをオーダーしたのは、かなり昔からオーダーメイドアクセサリーを手掛けてらっしゃる「新星急報社」(@shinse_inu)様

オーダーメイドアクセサリーの他にも、文章や文芸をモチーフにした数多くのオリジナルのアクセサリーを作成し販売しています。
こちらのオリジナルアクセサリーの数々も、そしてそのモチーフとなっている文章の数々もまた、美しく独創的で魅力的で。過去の作例を眺めているだけで、自然とこちらの期待値も爆上がりしてしまうというものです。物凄く素敵な世界観と作り上げられていく作品の纏う唯一無二の空気に、おれなどというただの限界オタクが果たして関わりを持っていい世界なのだろうか──とやや萎縮はしながらも、おれは手続きを着々と済ませ、来たるその日に向けて期待を膨らませておりました。

本来ならおれがやってみたかったのは、上述の作者様ご本人による紹介漫画にもあります、「対面オーダー会」でのアクセサリーオーダーでした。目の前で、手元で推しが作り上げられていくという経験なんて、そう簡単には経験できるものではないですので。しかし六月は対面でのオーダー会は予定されておらず、七月の対面オーダー会の開催予定地は東京であるということから、おれはオンラインで実現可能な中で一番対面オーダー会に近いもの──「Web会議ツールを利用したビデオ会議式オーダー」を選択しました。


思えばおれ、リアルの職場ではTeamsだのSkypeだの使っておりますが、完全個人的な用途でテレビ会議を使うというのは初めてのこと。家にももちろん音声通話ができる環境などあるわけがなく、やってきたのはこれまた人生初利用となるネットカフェ。オタクの怪文書プレゼン、しかもプレゼン対象はその漫画喫茶にも置いていないであろうドマイナー作品のおとこなどという痴態を白日のもとに晒すわけにはいかないため、防音に不安のない完全鍵付個室へとどうにか滑り込んだおれ。手元にはメモ帳に書き殴った「潤也さんここすきポイント」の数々。


おれ「よっしゃ………やるか」


雨の降りしきる月曜日、夜も更けていく最中、鍵のかかったネカフェの個室で一人きり。限界オタク、ほぼほぼ一年ぶりの「言葉」での怪文書製造に臨みます。


オタク、試練のとき。


新星急報社さん(以下「☆さん」)「よろしくお願いしますー」
おれ「ァッアッよろしく、お願いし、ます(初手デバフスキルコミュ障を発動。安定のおれであった)」


そこからの一時間は、本当に魔法のような。
おれはこんな経験をさせてもらってええんやろうか??と思うほどの、これまでに経験したことのない驚きと興奮と尊死に満ちていた経験でした。
(それと同時におれの語彙力のなさ、コミュ力のなさを痛感した経験でもありました。やはり実際に喋るの下手すぎるよおれ)


おれが安藤潤也というおとことその物語について、支離滅裂ながらも性癖をぶちまける情報を提示する中で、新星急報社さんは時折メモを取りつつ、まずはしっかりとおれの話を聞いてくれます。同じ作品のオタクなどめったに現れない、すなわち同じ「推し」について語る相手のいない限界集落の民としては、これだけで新星急報社さんに土下座したい気分でした。

そこからお互いの認識のすり合わせであったり、一番「アクセサリーとして形にしたい」ところがどこであるのかの確認であったり。自分の拙い表現と二転三転する話にも関わらず、最後まで真摯に安藤潤也というおとこに向き合ってくださった新星急報社さんには、本当に頭が上がりません。本当にその節はオタクの意味不明な話に付き合ってくださりありがとうございました。


☆さん「潤也さんの要素の中で、一番アクセサリーのメインにしたいものはどこですかね」
おれ「アッアッ(苦悶)………すんません全部です」


頭おかしいお願いしてすいませんでした。今この場でお詫びいたします。強欲ここに極まれり。


おれによる性癖開示、もとい安藤潤也語りと、彼を深掘りする何個かのやり取りが終われば。いよいよおれが待ち望んでいたその瞬間、「安藤潤也」というおとこの概念が生み出されるその瞬間がやってきます。

オンラインでのセッションとなる以上、現地での対面オーダーに行かれた皆様が目の当たりにしたという光景──「目の前で新星急報社さんが沢山のパーツの中から素材を選び取って、自分の目の前でその姿を見せてくれる」という光景は見られない、というのは少し残念ではあるものの。カメラ越しに聞こえてくる沢山のビーズや天然石が触れ合う音、ブレスレットのチェーンが振れる音、沢山の箱やケースの蓋が開かれていく音に、それだけでもおれのボルテージは上がっていきます。

安藤潤也というおとこは、今回はどんな姿をして、おれの目の前に現れてくれるのだろう。

カクテル、香水、アクセサリー。いろいろな形で実体化する作業を繰り返して。そのたびに毎回毎回、源泉は同じであるのにも関わらず異なった顔を見せてくれるおれの推しに、期待せずにはいられないおれの眼前で。


☆さん「お待たせしました」


その今まで以上に圧倒的で、
今まで以上に尊くて、重い概念は、
ビデオカメラに映された新星急報社さんの手元によって、紡ぎあげられ始めました。


これが、安藤潤也です。


おれの拙いプレゼンとも呼べない萌え語りから生み出された、安藤潤也というおとこの概念です。
(この時点で情緒がおかしくなり始めていたオタク)

おれのプレゼンから新星急報社さんが汲み取ってくれたものは、まずやはり安藤潤也を形作る最大にして核心であるもの──「兄貴」の存在の重要さでした。

安藤潤也というおとこにとって、兄は親代わりであり、血を分けた唯一無二の兄弟であり、彼の進むべき道を示し続ける道標であり、嵐の海に揉まれる彼を繋ぎ止める碇であり、まるで連星のごとく側に在り続ける存在であり、そして誰よりも愛した存在であり。「お兄さんが潤也さんの心の根底にいて、死んでも永遠に存在し続けるということは、揺るがせてはいけないと思いました」という新星急報社さんの一言で、おれはそれだけで泡を噴いて倒れかけました。
そうだよ兄貴は潤也さんの魂の片割れだし唯一だし最愛だしなんなら世界そのものなんですよ。安藤兄弟ほんっっっとてぇてぇ(限界オタクの嗚咽)


ブレスレットのメインに使われたパーツは、イタリア製のどっしりとしたチェーンパーツです。潤也さんのイメージから選ばれた金色の、重厚感とボリュームのある縄にも見えるデザインの鎖が二つ並んで、ぴったりと重なりながら連なっています。この見た目だけでもうだめです。オタクの心に突き刺さってくる。


☆さん「お兄さんと潤也さん、二人とも『兄弟』という、別の肉体を持った違う存在ではありますけど」
☆さん「お二人の間の絆は分かち難く、しっかりと結びついている。その解釈から選ばせていただきました」
おれ「ミ゛(絶命)」



死すら二人を分つことはできない。

初手から推しカプの圧倒的尊さに、おれの自我は早くも崩壊寸前です。

またこのボリュームのある鎖、というのがまたたまらない。どっしりとしてて存在感があって、安藤兄弟の繋がりの重さが見ただけでも伝わってくるんですよ。まさに潤也さんと兄貴の在りようそのまんま。純粋な兄弟愛と呼ぶにはあまりにも重く、あまりにも強く、どこまでも一途な唯一無二の絆。たとえその間に介在し、その絆に影響力を及ぼそうとする存在が何者であったとしても、たとえ運命が「離別」を不可避なものとして定めていたとしても、それが二人の間の結びつきを断つことなど決してできない。できなどしない。
彼らはまさに「比翼の鳥」なのです。


「俺は行かないよ、兄貴を置いてどこにも。賭けてもいい!」


この潤也さんの切実な言葉からすべてが始まり。


「見放すもんか…俺が…お前を…」
「たかだか死んだぐらいで…」
「大丈夫……心配、いらない……どこにも行かない……」
「約束しよう…」
「賭けても、いい……」


おれ「(´;ω;`)ブワッ」

やがて物語の行き着く果てで、この兄からの言葉に帰結する、この尊さと美しさが、おれの性癖をぶち壊して捻じ曲げたものそのものなのです。
(ここまで息をするように詠唱できるオタク)


もうほんまね……ほんま、ほんま…………(嗚咽)


どんなこれはだめ。情緒がこわれる。初手からこんなにドンピシャすぎる安藤兄弟をお出しされたため、おれは一撃でネカフェの机の上で悶絶する羽目になりました。今日も安藤兄弟が貴い。あまりにも。

この潤也さんの言葉から、「すべて」が生まれる。

チェーンの横に続いて用意されたのが、金色の爪のような台座に固定された、長方形の透明なガラスのパーツ。潤也さんの印象とは少し違うっぽい?と首をかしげたのも束の間。


☆さん「こちらのガラスパーツですが」
☆さん「亡くなったお兄さんの棺の印象として選ばせていただきました」
おれ「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!(心中でヘドバンしながら発狂)」


透明な、自分のものではない、兄が眠る棺。

安藤潤也というおとこは、本編が終わってからもずっと、その命尽きるまで兄という空白を抱えながら生きていく。それはおれが解釈する安藤潤也というおとこの未来の姿そのものです。

個人的に安藤潤也というおとこのイメージソングを上げるならば、その一つに坂本真綾女史の「空白」が上げられるのですが、その歌詞が一瞬で頭の中を駆け抜けていきました。

↓元々は「FGO」アーケード版の主題歌ではありますが、もう歌詞が完全に本編後の潤也さんに聴こえてしまう。おれはあほです。


誰であっても、この先の生涯でどのような美しいものや愛おしいものに出会っても、きっと埋められない空白。透明な、自分のものではない棺が横たわる。安藤潤也というおとこの人生に最期の一瞬まで寄り添い続ける「空白」の重さ。兄という、あまりにも大きくて重い、彼の魂の中に存在し続ける「空白」。もうこの時点でおれは新星急報社さんに感謝のスライディング土下座をしたい気分でした。
おれの中の、あくまでも個人的なイメソンでしかないはずの「空白」ですら落とし込んでくれる新星急報社さん。あなたが女神か???(ibukiは訝しんだ)


☆さん「他のパーツは全て色付きだったり不純物を含んでいるものなので、ここだけあえて『潤也さんのものではない』ということで、透明さで浮かせてみました」
おれ「ァァ……………ァァ……………ァ……(嗚咽)(感謝感激雨嵐)」


おれの情緒は既にこの時点でだいぶ限界です。
それでも、新星急報社さんのお出ししてくる解釈はまだまだこんなものじゃありません。


☆さん「その横に茶色い樹脂ビーズなんですが」
おれ「はい(内心ではいまだに心臓バクバクの情緒めちゃめちゃである)」
☆さん「柄が光背(仏像が背負っている後光の象徴)のように見えるんですけれど」

おれ「は……い??(光背、という言葉の意味を知らなかったので挙動不審になるオタク)」
☆さん「死んだお兄さんが語りかけてきて、潤也さんが救われるというシーンから連想して選ばせてもらいました」
おれ「は!!!!??????(この瞬間に覚醒する五感)(えっ待って無理待って無理待ってしんどいしんどいの極み)」


第94話じゃん(絶句)。
はいこれはどう考えても第94話ですね。おれの大好きな、あのシーンそのものですね(号泣)


泥濘の、光刺さない荒野をひた走り続けて、数多の傷から血を流しながらも「止まる」ことのできなかったおとこが。完全に壊れてしまうその寸前に、最後に差しのべられた、救いであり赦し。投げかけられた言葉に、救われたおとこの美しい姿。

自宅ではないネットカフェの小さな個室。単行本が手元にないのにも関わらずに、もう鮮明に、はっきりと、その場面が蘇ってくるのです。なんならあのドラマCDの浪川ボイスまでもが聞こえてくるのです。
詩織ちゃんの口を借りて、それでもそれは確かに潤也さんを救うために紡がれた言葉。思い出すだけで想像するだけでもはやおれの情緒は目茶苦茶です。あまりにも美しくて尊いんだよここ。めぐたん先生の見開き芸も相まって。本当に「魔王JR単行本の10巻は実質、大須賀めぐみ先生による伊坂先生教・安藤兄弟派の宗教画の画集である」理由は、この見開きのページに詰まっているというのはおれの持論です。俺はぜんぜん普通だよ。(ガンギマリ顔)

大好きだよ。安藤兄弟。

それに後ほど「光背」の意味を調べてみたところ、おれはもちろんその言葉の意味するところに「ミ゛」と奇声をあげて爆散することになりました。兄貴はやっぱり潤也さんの聖母じゃん。神様仏様兄貴様。


☆さん「こちらのパーツの模様、星のように見えますし、真ん中に丸い柄がありますよね」
おれ「………(あまりの尊さに反応できず)」
☆さん「『導きの星』でしたり、『見つめる眼差し』のイメージも感じさせます」
待って「おれ」


やばい。
もうおれの情緒は目茶苦茶だよ。

すべてが愛おしくて辛くて尊くてたまらないんだよ安藤潤也。そして安藤兄弟。どれだけおれの性癖と情緒を焼け野原にしたら気が済むんだ。訴訟。

そんなおれの内心の大興奮であり大荒れを見守りながらも、新星急報社さんによりひとつひとつのパーツに宿る「物語」の歯車は、紡がれ続けます。それはまるで、おれが興奮と萌えのあまり昇天しそうになるのを、制止してくるようでもあり。


☆さん「こちらが天然石のパーツになりまして」
おれ「ァァ………(語彙力喪失)」
☆さん「まずはサンストーン(日長石)ですね」


サンストーン。別名を「ヘリオライト」。その名前はどちらとも「太陽の石」を意味します。残念ながらこの石を使ってもポケモンは進化しません

春の太陽、本質的には太陽そのもの、おれが「安藤潤也」というおとこに対して抱いている絶対的な印象そのもの。名前をきちんと聞き取った瞬間に、おれはあまりの尊さに失神しそうになりました。

帰宅してとりあえずサンストーンに関して調べてみたんですが、これもまた出てくる情報が安藤潤也というおとこそのもので。
太陽の石、勝利の石、古代ギリシアでは太陽神ヘリオスを象徴する石として崇められたともいわれる鉱物。安藤潤也というおとこの在りようは優しく明るく地上を照らし、人々に実りや恵み、安らぎを与えてくれると同時に。空を飛べると思い上がったイカロスの翼を溶かして地上にに叩き落とし、一度その怒りに触れてしまえば、地上に干魃を齎すような苛烈さも併せ持つ『太陽』そのものだと思っているおれは、家に帰ってからも再度頭を抱えて悶絶することになるのでした。

石言葉は「情熱」「勇気」。情熱のおとこだからねぇおまえは……(嗚咽)こんなの本当に潤也さんじゃん……(頭を抱える限界オタク)


☆さん「潤也さんの『太陽のような』元々の明るい印象をイメージしてます」
おれ「アッアッ(語彙力喪失)」


初手でお出しされたサンストーンですが、少しオレンジの色味が薄かったために、もう少し色味の濃いものを出してもらえないかおたずねしてみたところ。快諾していただきおれは本気でスライディング土下座したい気分になりました。本当にありがとうございます完全に頭が上がりません。


☆さん「そしてルチルクォーツも使いましょうか」
おれ「ん?(まって知らない宝石だ)」
☆さん「こちら、水晶の中に針のように別の結晶が入リこむことでできる鉱物なんですけれどね。この模様、針のように見えますでしょう」
☆さん「太陽光とか、兄の死という針で貫かれるイメージとか。あと潤也さんの鋭さや苛烈さからも連想して、針のような見た目から選ばせていただきました」
おれ「ア!!!!!(限界オタク、無事に単行本8巻あたりを思い出して卒倒)」


おれが安藤潤也というおとこを表現する時に「ひび割れた、亀裂が入った硝子製の刃物」というイメージは、常に頭の中に焼きついているんですよね。或いは日本刀でいうところの「皆焼ひたつら」の刃紋のような。安藤潤也は脆くて、美しくて、それでいて刃物の如く苛烈で鋭利な存在でもある──というのは、おれの中での一つの認識でもあります。

硝子の割れた破片は鋭い。
軽率に触れてしまれば、その美しく透明な切っ先はいとも簡単に人を傷つけて、血を流させる凶器へと変貌する。特に8巻あたりの、兄の死に対する「復讐心」を糧に動いていた潤也さんの苛烈さなんて、砕け散った硝子の破片そのものじゃないかとおれはそう思っています。白昼早々ジョーダンバット持ち出して人を衆人環視の中殴りに行こうとするのほんとさ……ほんとさ…………撲○天使潤也さんだよほんまにもぅ………(あのコマで何度も「ぁ゛ぁ…………ッ(天を仰ぐ)」となるおれ。あの心許ない、脆い姿から一瞬で修羅の、獣の顔に至る様がほんとに辛くて美しくてだいすき。手負いの獣が牙を剥き出す瞬間、最高オブ最高。あと凄まじくエッッなのは訴訟。特にこのあたりの安藤潤也はいろいろとエッッッすぎるんですよほんま

硝子に入ったひび割れが、砕けて刃となる、瞬間。

その苛烈さを表現してるだけでも十分辛いのに、本当にルチルクォーツという石の見た目が、ひび割れの入った硝子そのものなんですよね。自らのボロボロになっていく心を隠しながら、ただでさえ心の一番弱いところを『喪失という針』に貫かれているというのに。そこから亀裂が深くなっていくのを感じながらも、泥濘の道を征く安藤潤也。光の差さない暗闇の中を、血を流し傷ついていきながらも疾走する、一頭の手負いの獣。完全に二部だよ………二部における安藤潤也の姿でしかないよ………。光の差さない夜の闇の中を、命を削るように進んでいくおとこの心そのものだよこんなの…………(嗚咽)

ちなみにルチルクォーツという石は、透明な水晶クォーツの中に、完全に別の鉱物である金紅石ルチルが入り込んでできる、同じ見た目や色目の石ができることは稀な石でもあり。その見た目や希少価値から「金運」を高めてくれる石としてもみなされることがあるそうです。ここでも「金運」というワードが入り込んでくるという尊さに、おれの頭は爆発寸前です。安藤潤也というおとこと「金」はやはり不可分。みんな知ってるね。(白目)
さらにその名前の由来はラテン語の「rutilus」という単語──「黄金色の、燃えるような」という言葉から取られたという説もあり。燃えるような赤みのかかった橙色の髪、太陽のフレア、ふたご座のβ星ポリュデウケースの煌めきをその瞳と髪に宿し、焰のような熱を孕んだおとこ。本当に安藤潤也ですありがとうございます。


☆さん「最後に、ブレスレットの長さ調節をするアジャスターの部分なのですが」
おれ「はひ……(すでに虫の息)」
☆さん「細かく明るいものを使いたいと思います。光の印象でしたり、潤也さんのその後の未来の明るさの印象で」
おれ「はへ………???(精一杯の反応)」


待って。
今、なんという言葉が、


一瞬聞こえた「未来」という言葉に、おれの背筋はその瞬間、ぶるりと震えたのを覚えています。


今おれは何を聞いたんだ。
おれの目の前の、この女神様が口にした言葉は。


これまで自分が作ってきた安藤潤也の概念には、安藤潤也の「過去」や「物語」は含まれてきたものの、そこから先の彼の「未来」については──他のどの概念アイテムにおいても触れられなかった、触れてこなかった領域としか言いようがありません。兄によって救われた安藤潤也が、「モダンタイムス」という一つの未来に向けて進んでいく旅程は、果たしてどのような道となっていくのだろうかと。聖典のオタクを兼ねている以上、そのことについて思いを馳せたことは数多くありましたけど、彼の「未来」についての物語を「概念」に混ぜ込んだことは、おれは一度もありませんでした。

だってそれは、あくまでもおれの「頭の中」での物語だったから。

聖典でもJR版でも、安藤潤也というおとこの辿る未来の道筋が、はっきりと語られることはありません。聖典軸の未来が僅かながら「モダンタイムス」に於いて語られている、本当に安藤潤也というおとこの未来は、その僅かな断片だけしかおれたちの前に表れていないのです。だからおれも敢えて、安藤兄弟にハッピーエンドを与えるために書いた長編以外では、安藤潤也というおとこの「未来」について筆を走らせることはしませんでした。というより、できませんでした。


けれど、その大前提は、音を立てて崩れようとしている。
おれが想像したことはあっても「形にする」ことはなかったその姿を。安藤潤也というおとこの辿るであろう「未来」をも。今、テレビ電話の画面越しに映る新星急報社さんは表現してくれようとしている。
おれが今まで作ってきたすべての概念の、そのどれもが踏み込まなかった領域を、見せてくれようとしている。

その予感に、寧ろ実感に。自然とおれは固唾をのみ、新星急報社さんの言葉に耳を傾けます。
とんでもないものをおれは目の当たりにしてしまうのではないのだろうかと。そんな期待と、少しばかりのおそれを抱きながらも。


☆さん「アジャスターの先には黒曜石のビーズをつけたいと思います」
☆さん「黒曜石はガラスのような性質を持つ鉱物で。その破片は鋭い断面を持つので、昔から刃物や武器として使われていました。そこから潤也さんの辿っていく物語の暴力性、ピカレスクロマンめいた雰囲気を連想しつつ」
☆さん「黒曜石はそれと同じくして、磨き上げると『鏡』のような性質を持つ石になります。占いにも使われた事があり、そこから『超能力』のイメージと」
☆さん「『自分と似た人がこちらを見つめ返す』──お兄さんが潤也さんのことを見つめ続けている眼差しのイメージも入ってきますね」
おれ「ヒュッ(あまりの尊さに言葉を失う)」


腹話術。「1/10=1」。そして聖典軸の世界線でも安藤の血脈に受け継がれていく、超能力という遺産。(まさか聖典軸でちゃんと受け継がれるとは。おれは初めて読んだ時、あまりの衝撃と歓喜でリアルに快哉を叫びました。人類皆モダンタイムスまでちゃんと読了してくれ定期)
そのイメージまできちんと入れて作られるとは思っておらず、おれは改めて新星急報社さまの理解力と知識と天才的な才能に、その場でひれ伏したいと思いました。いやほんと新星急報社さん本当に「普通の人間」ですよね??なんらかの超能力とか持ってませんよね????

安藤潤也が兄の死によって足を踏み入れていく、本来なら知ることのなかったであろう「裏側の世界」の暗闇。兄貴から潤也さんへと遺され、そしてとある世界選では同じく「安藤」の血を引くものたちへと受け継がれていく「超能力」。そして、潤也さんを見守り続ける兄の「眼差し」。これらすべてが黒曜石という「答え」で鮮明に表現されている、それだけで十分尊いですし情緒によくないのですけれど。


おれ(新星急報社さん………あなたは女神ですか……??)
おれ(今回単行本持ってきてないし……兄貴のビジュアルどころか潤也さんのビジュアルですらお見せできてないのに……)
おれ(兄貴のイメージカラー……髪の毛の色って……「黒」なんですよ………あにき………)(嗚咽)


巻が進むにつれてヒロイン度がカンストする。

はいこれはどう考えても兄貴です。
夜の闇をそのまま閉じ込めたような、まさに黒曜石の艷やかさを纏ったようなぬばたまの髪に、紅玉の煌めきと艶やかさをそのまま閉じ込めたような眼。兄貴のビジュアルを見ていないにも関わらず、その人を象徴する色までも加えてきてくれた新星急報社さんが。おれはその瞬間に、人間ではなく神様か超能力者なんじゃないかと、本気でそう思いかけました。いやたぶん確実におれの心を読んでたんじゃないかな。それくらいドンピシャでしかありませんでしたありがとうございます

おれ「ミ……………ッ(死にかけの蝉のようにたおれている)」


ここまででおれは何回も三途の河を渡っています。
画面越しに映し出される、新星急報社さんが選び抜いてくれたパーツの一つ一つが、それぞれ致死量の尊さと愛おしさを孕んで、おれという限界オタクを容赦なく殴りつけてくる。
これが「物語が紡がれていく」重みだ。
おれの愛した物語が、目の前で形になっていく、重みというものだ。

出される解釈全てにとどめを刺されながら、恍惚としんどさで完全にヤクをキメたようになっていたおれに。


新星急報社さんは、完全な「トドメの一撃」を加えました。


☆さん「そしてアジャスターの先にですが」
☆さん「こちらの偏光カラーのクリスタルパーツをつけましょう」
☆さん「このパーツ、名前を『パラダイスシャイン』というのですが」
☆さん「潤也さんとお兄さんが一緒にいた日々、そしてお兄さんに救われた日の煌めきを。『楽園の光』という言葉から連想しました」


────されど、愛しき日々。


おれの頭の中に一瞬で去来したのは、サンデー連載時の第90話の扉絵と、そこに添えられた文章でした。

連載時本誌を読んでなかったオタク、
扉絵があったことを知り本誌で読まなかったことを後悔す。

愛おしき、もう戻らない潤也さんの楽園の日々。安藤潤也というおとこがもう帰ることができない、思い出すことはあってももう二度と足を踏み入れられない、兄のいる楽園。安藤潤也にとっての「hiraeth」という言葉の行き着く先は、きっと、確実にそこであるところ。
hiraethヒライス=ウェールズ語で「望郷」「情景」を表す単語。ただの「望郷の念」などではなく、もう訪れることができないもの、失われてしまったもの、なくなってしまうかもしれないものに対する郷愁の念、というニュアンスを含む)
その象徴であると同時に、兄から救いを与えられた瞬間、潤也さんが仰いだ空から降り注いでくる光そのものでもあり。そしてきっとこの「楽園の光」は、その後の潤也さんの未来を照らす光としても捉えられるとしか思えなくて。

↑調べたらスワロフスキーのようです。本当に何色にも光り輝いて見える。合掌


なんなんだこれは。
これはもはや、推しアクセというものではない。
安藤潤也というおとこの「概念」などという、そんな生易しいものじゃない。


これは、安藤潤也というおとこの、「すべて」だ。過去であり現在であり彼の本編中の旅路であり、そして、その先に彼が辿るであろう未来の形だ。


「推し」を身に着けるんじゃない。
おれは、「推しの人生そのもの」を、このアクセサリーを纏うことで身に着けることになるのだ。


おれ「………………ミ゛」(感情のキャパオーバー)


───とんでもないものを作ってしまった。


もはや思考すらもろくにできない中で、おれはネカフェの机に倒れ伏し、陸に釣り上げられて放置されたあとの魚のように弱々しく震えておりました。まさに不審者。


☆さん「これで行こうと思うのですが」
おれ「(ここでようやく正気に戻る)ア!」
おれ「あの………とっっても素晴らしいもの作ってくれて、本当にありがたいのですが」
おれ「ここに追加で……『鷹』のイメージを……入れ込んでもらうことって……できますかね??」


限界オタク、プレゼンの間にテンパりすぎたせいで、すっかり「鷹」の話をすることを忘れてました。安藤兄弟を象徴する重要な成分だというのに、最後の最後まで話をするのを忘れてしまっていたおれ。おれはあほです。

出先だろうが「兄貴」の影を探すというのに。

☆さん「では、樹脂パーツの根元の部分にそういった要素を入れ込みましょうか」
☆さん「細いラインが入っているもので、羽の模様を連想させるものと」
☆さん「あとは鷹の色、目の色ということで。タイガーアイを入れるのはどうでしょう」
おれ「ミ゛」(タイガーアイって十月の誕生石の説もある石なんですよ……やはり女神であったか…………)


おれの無茶振りにも快く応じてくれるどころか、そこから更に情緒への追撃を加えてくる新星急報社さんのおそろしさに。おれは感謝と畏敬の念を抱きながら、誰もいないネカフェの個室の中、高速ヘドバンしながら悶絶しておりました。いやほんとに完全個室でよかった。こんな姿見られてたら警察にまず通報されてた。「連れていきなさい」か「話は署で聴こう」されてたよ。どっからどう見ても不審者です。


おれ「ぁは………は………ぁりがと、ござい、ますっ………(情緒も理性もぐちゃぐちゃになりながら)」


ここまでのものをお出しされるとは、おれも予想できなかった。


ありがとう新星急報社さん。
おれは、ここでアクセサリーを作ってもらってよかった。


圧倒的な感謝の気持と、それと同時に致死量の尊さを連続して浴びせられたことによる疲労感から、完全にボロボロになりながらも。おれはどうにかオンラインセッションを終え、半ば夢の中にいるような状態で、豪雨の中でネットカフェをあとにしたのでした。


おれは果たして、このアクセサリーを身に着けた瞬間に、果たして人としての意識やら理性やらを保っていられるのだろうか。
魂がどこか遠いところに連れて行かれてしまって、そのまま帰ってこれなくなるようなことにならないのだろうか。


そんな期待と不安を両方抱えながらも日々は流れ。


おれ「ァ………きちゃっ、た…………(震え声)」


素敵な包装に包まれ、おめかしして。
安藤潤也の概念、もとい「彼が生きた証」であるそのブレスレットは。無事におれの手元に渡りました。

安藤潤也というひとりのおとこの「人生のすべて」が。おれというしがない限界オタクのもとに、やってきました。


安藤潤也、着弾。

彼に一刻でも早く、少しでも早く触れたくて。
会社の昼休みに入るやいなや運送会社の営業所まで突撃し。人っ子1人いない踊り場で、おれは期待と興奮と悦びに胸を躍らせながら、その愛らしい包みをほどいて。

おれ「………会いたかったよ(嗚咽)」


安藤潤也というおとこの生きた証を、生きていく「未来」を、手につけました。

おれ「重い………(嗚咽)」


ひとつひとつの、その全てに「物語」の閉じ込められたパーツが、おれの手にぐるりと巻きついて。ブレスレット自体の重量はそれほど重くないのに関わらず、手の上の方に来る鎖が、棺が、救済のあかしが。ずっしりと重い存在感を放っているような感覚がします。手を動かすと時に鎖が、じゃらりと重い音を立てるのがこれまたたまらない。こちらが意識していなくても、潤也さんと兄貴の間に横たわるものの重さが、「音」と「重み」で伝わってくる。こんなの情緒が壊れる。
手首を裏返すとそこには、ルチルクォーツとサンストーン、そして煌めく細い未来の道筋、夜の闇であり兄貴の存在、そして、安藤潤也というおとこの「hiraeth」であり「未来」。

未来と過去が煌めく。何色にも。


おれ「ヒィッ(あまりの尊さと美しさに悶絶)」


光に透かすと、また違った美しさを放つのがまたたまらなくて。
ルチルクォーツの一見曇りガラスのように見える本体の中には、繊細で薄い、それでも鋭利な印象もある金色のルチルによるひび割れが、太陽の光がいくつも見え隠れして。サンストーンの斑のような美しい文様もよく見えるし、アジャスターチェーンはそれこそきらきらと、「安藤潤也というおとこの未来」に至る旅程のように煌めいて。そして先端の黒曜石と「楽園の光」が、暗闇の前と先にあって、そしてこれからも「在り続ける」ものを示してくれている。
安藤潤也の辿った物語と。
これから辿る物語が、おれの手の周りにある。

尊い以外の何物でもない。
おれは、今ここで、「安藤潤也」というおとこのすべてを纏っている。
一介の限界オタクとして、ここまでのよろこびは、どこにもない。


おれ「ゥゥ………ァ………潤也、さん………(嗚咽)」


オタクでいてよかった。
安藤潤也というおとこに狂わされて。
長い間彼という炎に灼かれ続けて、本当によかった。

これまでの感情も記憶もすべて思い出しながら。
おれは安藤潤也というおとこの旅路に、そして「これから」の物語に。ひとり誰もいない踊り場で、暫し思いを馳せたのでした。


改めまして、新星急報社さま。
今回はこんな限界オタクの無茶を叶えていただき、
想像以上の喜びを与えていただき、本当にありがとうございました。あなたに形にしていただいたおれの推しの人生が、おれにとっては一生の宝物です。
何度感謝しても足りません。心から、本当にありがとうございます。

この世すべての「推し」とその物語を愛する皆様。是非ともこの至高の体験を、一度は楽しんでみてください。

そして毎回のことですが。
素晴らしい作品を、推しを生み出してくださった伊坂幸太郎先生、大須賀めぐみ先生。本当に本当におれの人生に喜びを与えてくださり、ありがとうございます。

聖典「魔王」も、「魔王 JUVENILE REMIX」も。
皆様どうかよろしくお願いします。(ダイマ)


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