見出し画像

企業のSNSアカウントの始め方【静岡トヨペット様との意見交換会】

このnoteの読者の皆様の企業では、SNSを運用しておりますでしょうか?

既にSNSを運用している企業はもちろん、これからSNSを運用しようと考えている企業も多いでしょう。しかしながら、「何から始めればいいのだろう?」とか、始めたはいいけど何を発信していいか分からず開店休業状態になってしまっている、というケースも多いのではないでしょうか。特に規模が小さい企業や地方の企業ですと、社員のどなたかが片手間で運用したり、効果が実感出来ず結局長続きしないというようなことも多いと思います。

年々SNSアカウントを開設する企業は増えていますし、BtoB、BtoCに拘わらず企業にとってSNS運用は広報、採用、マーケティング、販促キャンペーン等において欠かせない活動となっています。

私たちアイ・ブロードも企業SNSアカウントを運用しています。日々、いかに自社のビジネスにとってプラスの影響を生み出せるかを試行錯誤しながら進めています。

そしてこのほど、静岡トヨペットIT戦略部部長鈴木様と同じくIT戦略部IT戦略グループグループ長西村様と、お互いの企業のSNSアカウントの運用状況に関する意見交換の機会を頂くことが出来ました。せっかくの貴重な機会でしたので、その時の様子を記事にまとめ、noteで公開させて頂くことにしました。

実は今回の静岡トヨペット様との意見交換会に至ったのも、アイ・ブロード代表取締役社長上柳が、アイ・ブロード社内で開催された「SNS運用会議」の様子を自身のfacebookにアップしたことがきっかけだったのです。

また、今回の意見交換会はZoomを使用してオンラインで開催されました。当日出張に行っていた上柳はビジネスホテルのテレワークプランを利用し東京から参加しましたので、静岡市、富士市、東京をつないだ3次元中継でのミーティングでした。これも時代だなという感じですね。

静岡トヨペット様とアイ・ブロードが、普段どのようにSNSを運用しているか、どのような過程を経て運用までに至ったかはもちろん、日々こんな課題やあんな悩みを抱えながら運用している、というようなこともお話させて頂きましたので、「あるある」と共感して頂きつつ、今後の皆様の企業でのSNS運用のお役に立てて頂ければと思います。

企業のSNSは目的が明確でないと運用に困る

鈴木氏:私は元々静岡鉄道株式会社の社員でして、トヨタ系ディーラー各社の※全車種併売化を見越し、2017年に静岡トヨペット、トヨタカローラ東海、ネッツトヨタスルガのバックヤードの協業を推進することをミッションに静岡トヨペットへ出向しております。当初は協業だけだったのですが、2018年より併せてIT戦略も担当することになりました。

※全車種併売化・・・以前は同じトヨタ系ディーラーであってもディーラーによって取り扱い車種が異なっていたが、今年の春からトヨペット店、トヨタ店、ネッツ店、カローラ店のどの店舗でもトヨタ自動車の全車種が購入出来るようになった

2020年4月にはトヨタ自動車の全車種併売化が決まったこともあり、3社協業ではなく3社統合を目途にカーディーラー3社の経営効率化を目的とした「静鉄GTホールディングス株式会社」が設立され、私は静岡トヨペットと静鉄GTホールディングスを兼務し、現在に至っております。

私のミッションは幾つかあるのですが、IT戦略の分野では業務の効率化の他、営業活動のデジタル化もあり、※トリプルメディア戦略やインサイドセールスにも取り組んでいます。

※トリプルメディア・・・マーケティング活動においてメディア戦略を考える際にメディアをペイドメディア(有料広告メディア)、オウンドメディア(自社で運営管理するメディア)、アーンドメディア(消費者が起点となるSNSなどのソーシャルメディア)の3つに分類したもの

稲葉:私自身は普段営業や採用担当をしており、社内のIT推進やマーケティングを専門でやっているわけではないので、お二人からすると「何を今さら」みたいな感じもあるかもしれませんが、色々と勉強しながら独自で取り組んでいることもありますので、少しでも静岡トヨペット様のお役に立てるようなお話が出来ればと思います。お手柔らかにお願いします。

鈴木氏:いえいえ(笑)。

稲葉:インサイドセールスに取り組み始めたということですが、偶然ですが今年は新型コロナウイルスの蔓延もありましたが、カーディーラーとしての営業活動という意味ではタイミングが良かったのでしょうか?

鈴木氏:インサイドセールス自体はまだ取り組み始めたばかりでさらに仕組み化していきたいと考えています。実は自動車の販売業界はIT化が遅れておりまして、未だに車検の予約がネットで出来なくて電話しなければいけない、みたいなこともあります。インサイドセールスを推し進めていくにあたり、まずは弊社の存在をどこで気付かせるか、全車種併売化によって(商品としての)車そのものでは差別化出来ないので車以外の弊社の様々な取り組みをいかに知らしめていくかについて、トリプルメディアを戦略的に活用していこうとしています。そこから発信したことを「店舗への送客」という形に繋げられるようにインサイドセールスにも取り組んでいる所ですが、例えば見積もりついては公式サイト上で出来るといった小さな部分から始めています。

伝える、という部分でも現在は静岡県内にある静岡トヨペット店36店舗(2020年10月時点)それぞれが自店で行っている取り組みや魅力をお客様に伝える「店舗のメディア化」というプロジェクトを進めています。

稲葉:アイ・ブロードでは元々facebookとLINEの企業アカウントを一番古くから運用しておりましたが、Instagramは昨年、Twitterは今年の9月からアカウントを開設しました。YouTubeに関してはチャンネル自体は3年くらい前からありましたが、動画をしっかり撮影して編集してアップするということを始めたのは本当にここ最近の話です。

ただ私個人としてもこれらのSNSの企業アカウントの運用に課題を感じていて、まず運用の目的が明確で無いというのがありました。
目的が明確で無いので何を投稿していいか分からないということもありましたし、運用ルールを決めていない為、投稿に一貫性が無い、その場の思い付きで投稿してしまっている、投稿頻度もバラバラ、という状態でした。

加えて、SNSを運用はしているけど効果が実感出来なくて運用している側(スタッフ)のモチベーションが上がらないということや、目的が明確で無いので、特にYouTubeやInstagramの投稿ネタ(企画)に困る、ということが続いていました。

そういった課題を抱えたまま運用していたので、当然投稿するコンテンツのクオリティも低く、例えば何か宣伝や告知することがあった場合にチラシの画像をそのまま投稿したり、フリー素材を使用したり、各SNSの特性を無視して全てのSNSで同じような投稿をしたり・・・。「とりあえずやってる感」が満載で、とてもモヤモヤしたものを感じていたのです。

静岡トヨペット様でも企業のSNSを運用する上で同じような課題や悩みなどはあったのでしょうか?

鈴木氏:思いっきりありました。静岡トヨペットは2013年4月に現会長の平光が社長に就任してから企業のブランディング活動を様々な形で進めてきたのですが、そういった活動を伝え切れていないという課題もありましたし、販促活動などにSNSを利用出来ていないという状態でした。3,4年前にfacebookとYouTubeを始めたのですが、体制が整っておらず運用ルールも無かった為、発信したら発信しっぱなし、とりあえず発信しといたらいいじゃん、という状態でした。

そのような感じでSNSの運用を、しっかり体制を整えて取り組んでいかなければいけない、という危機感を持ったのはアイ・ブロード様と同じですね(笑)。

まずは運用体制を整えることから

稲葉:企業アカウントの運用体制を構築しようと私が動き出したのがここ2か月くらいの話なので取り組みとしてはまだまだです。段階的に進めているのですが、まず第1段階として社内の関係スタッフ向けにSNSに関する勉強会のようなものを開催しました。世代の違いや、プライベートも含めてSNSの利用頻度によってスタッフごとのSNSへの理解度も異なると思ったので、ある程度スタートラインを揃えるということが狙いでした。SNSごとの特性、マス広告との違い、ユーザーとコミュニケーションを取ることが出来るということなどを説明した上で、運用目的が明確になることによるメリットや、最終的には売上アップに繋がるというような話をさせて頂きました。

第2段階として企業アカウントの運用体制構築会議を開催しました。と言っても全てのSNSを検討対象にするのではなく、Twitter、Instagram、YouTubeの3つが普段から投稿ネタに困るという話が多かった為、この3つのアカウントに絞って会議を進めようということにしました。

進め方としては3名1組のチームを3つ編成し、それぞれTwitterチーム、Instagramチーム、YouTubeチームとして、議論を進めてもらいました。検討してもらった内容としてはSNSごとの特性に合わせた運用目的と、KPIのような運用目標の設定、制作したコンテンツを誰に届けたいかというターゲットの明確化、コンテンツ制作ルールの作成、振り返りを含め定期的な会議開催による継続運用の為の仕組み作りについてなどでした。

この会議の狙いとしては、チームを編成することにより属人的にならず且つ楽しみながら運用すること、KPIを設定することにより「なんとなく運用」ではなく数字をしっかり追いかけること、「どのようなコンテンツならユーザーに刺さるか」を考えることによるスタッフの発想力の向上、企画・制作・投稿・振り返りのPDCAを回すことによるコンテンツのクオリティ向上などがありました。

西村氏:確かに「何のためにやるのか」「誰に届けたいのか」がはっきりしていないと、結局「言われたからやっている」「とりあえず投稿する」という状態になってしまいますよね。考え方や進め方は弊社と通じる部分があります。

鈴木氏:我々も各店舗ごとにInstagramのアカウントを開設し運用しているのですが、先ほどの「店舗のメディア化」の活動を弊社内では「キラ活」と呼んでいます。各店舗のInstagramを担当しているスタッフに「キラ活アンバサダー」という役割を与え、各店舗内でInstagramの運用も含め「店舗のメディア化」を推進してもらっています。「キラ活アンバサダー」は各店舗にいるのですが、アンバサダーとは別に「キラ活サポーター」というスタッフがおり、各店舗の「キラ活アンバサダー」をサポートする役割を担っています。「キラ活サポーター」は6名いるのですが、その6名が集まって「どうすれば店舗のメディア化を浸透・推進出来るか」を悩み考えているので、御社の取り組みには非常に共感出来ますね。

アイ・ブロードのInstagramアカウント。少しずつ工夫を重ねながら見た人が楽しめるような投稿を心掛けています。

競合ディーラーとの差別化の為にSNSを

鈴木氏:弊社は2018年を第1期として「企業のメディア化プロジェクト」というものをスタートさせました。それこそコンサルタントに入ってもらったりしながら当初はブログで情報を発信して新規顧客の獲得に繋げようとしていました。各店舗のスタッフにブログの執筆をお願いしていたのですが、「ブログを書く」ということ自体が店舗で働くスタッフにはハードルが高く、なかなか書けなかったんですよね。
そのような反省もありつつ第2期には、「どのような文章なら読まれるか」「ブログを書くことで何に繋がるか」というようなことをスタッフに学んでもらいながら進めました。その甲斐あって記事はある程度投稿出来るようになったのですが、今度は店舗からは「ブログを書くことが自動車の販売に繋がるのか?」というような意見も上がってきてしまったんです。

トヨタ系のディーラーでは全車種併売化がスタートした為、車の魅力で店舗が選ばれるということが難しくなりましたが、見方を変えれば自分たちの店舗が新規のお客様にネットなどで検索されるチャンスという捉え方も出来るようになりました。これからはお客様から選ばれるように自分達の会社や店舗や社員の魅力をどんどん発信していかなければならないという状況になったんです。特に店舗は静岡県の端から端まである為、各地域で情報を発信出来るようにと、「店舗のメディア化プロジェクト」を進めていくことになりました。

店舗の魅力を発信し続ける仕組みを構築する為、各店舗でスタッフ(営業、サービスエンジニア、事務スタッフ)がチームを編成してプロジェクトを進めていたのですが、その中で、ブログだけでなくSNSを通じて自分達の魅力を発信していこうということになりました。SNSを取り入れていかないと新規のお客様、特に若い層を取りこぼすという危機感もありましたし、SNSを通じて静岡トヨペットのお客様同士が繋がって、安心してお店にいくことが出来るという状態を作りたい、という思いもありました。

そのような紆余曲折を経て先ほどの「キラ活アンバサダー」や「キラ活サポーター」というスタッフが生まれ、各店舗のInstagram運用が始まった、という感じですね。

ただ、もちろん各店舗によってInstagramの投稿数やフォロワー数にばらつきはありますし、リールなどの機能を使えている・使えていないなどの違いもあります。藤枝築地店という店舗のアカウントでは、スタッフがK-POPグループのTWICEのダンスを踊っている、いわゆる「踊ってみた動画」を投稿した所、結構バズってフォロワーも増えました(笑)。

稲葉:見ました(笑)。BTSのダンスを踊っている動画なんかも投稿していますよね。

静岡トヨペット藤枝築地店のInstagramアカウント。次回はNiziUのMake you happyに挑戦して欲しいですね。

社内の理解を求めていくことも重要

鈴木氏:このように店舗ごと独自の運用はもちろん、本社側から会社として投稿して欲しい情報のアナウンスなどもしております。

ただ店舗によっては、キラ活アンバサダー担当のスタッフが(Instagram投稿の為)スマホをいじっていたりすると、「お前なに遊んでるんだ!」みたいに言ってくる店長もいたりするので(笑)、そういう変な誤解を生まないような仕組みを作ったり店舗内での啓蒙活動をするのも、本社やキラ活サポーターにとっての課題かな、という所です。加えてキラ活アンバサダー担当のスタッフがモチベーションを維持し続けられるように本社としてサポートするのも課題ですね。

スタッフの個人名でSNSを運用することにはメリットとリスクが

上柳:スタッフの皆様が個人の名前で運用しているアカウントはないのでしょうか?

鈴木氏:今は各店舗としてのアカウントしか無いですね。

西村氏:スタッフ個人の名前でアカウントを運用するとなると、一般のお客様含め様々な人が目にすることになるので、例えば名指しで店舗に電話を掛けてきてしまうとか、変な人がスタッフ目当てに店舗に来てしまう、ということも考えられます。もちろんスタッフそれぞれがアカウントを持って運用することにメリットもあると思いますが、名前と在籍している店舗という個人情報を公開することによるリスクもあるので、そこのバランスを取ることは課題ですね。

鈴木氏:他方でfacebookなんかは個人個人が実名でやっているので、仮に会社の業務の一環としてスタッフそれぞれのInstagramのアカウントを開設してもらうとなるとどこで線引きをするかというのは難しいですね。

誰もが気軽に行くことが出来るお店である以上、SNS上でスタッフの個人情報を扱うことのリスクも考慮する、というのはBtoCのビジネスを展開する企業にとっては共通の課題ではないでしょうか。

小さな会社を運営するように企業のSNSアカウントを運用していきたい

稲葉:アイ・ブロードのSNSはTwitter、Instagram、YouTubeそれぞれでチームを編成して運用していこうという体制にしましたが、これには狙いがあって、「小さな会社を運営するようにSNSを運用する」ということを実践して欲しいという思いがあります。

何を目的に運用するのか、どのような理念の元に運用するのか、また、顧客(SNSユーザー)のニーズは何なのかということやそのニーズに応えられているかというマーケティング的な観点、加えてフォロワー数や投稿数などの数字をしっかり追いかけられているかなど。そういうPDCAを繰り返し回しながら運用していくことで、制作するコンテンツのクオリティが徐々に上がっていくことが理想的な形ですね。

鈴木氏:弊社も会社としてはSNS運用が進められつつありますが、組織が大きい為、スタッフ1人ひとりにどうやって腹落ちさせていくかという課題はありますね。今回稲葉さんに説明して頂いたように、自社内のスタッフが手作りでその他のスタッフにSNSの運用について勉強会や会議を開くというやり方はとても参考になります。

稲葉:企業の発信する公式サイトやSNSのコンテンツは「投稿」という結果として目にすることはあっても、それがどういう過程を経て生まれたかというのはなかなか知る機会がないですよね。

西村氏:その通りですよね。お互いに第3者的な目線を取り入れて、発信するコンテンツがマンネリ化したりしないように今後も協力していけるといいですね。

稲葉:今後もお互いに情報交換していければと思います。本日はありがとうございました!

いかがでしたでしょうか?会社の規模に拘わらず新しいことを始める時には悩みや苦労が伴うものだと、この意見交換会を通じて勇気をもらえたような気がします。

facebook、Twitter、Instagramに限らず、年を追うごとに新しいSNSが生まれ、それに合わせて新しいネット上のコミュニティーが形成されています。

ただ闇雲にSNSのアカウントを開設するのではなく、自社の何をコンテンツとして発信すればビジネスに有効なのか、そのコンテンツを発信するのに最適なSNSは何なのかを社内で検討することから始めてみてがいかがでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?