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星空に佇む猫のロケットペンダント《黒猫白夜》

【旅する飾り屋の話 ―黒猫の願いと明けの明星―】

とあるところに黒猫と白猫の双子の猫がおりました。
二匹は幼い頃に親猫とはぐれてしまい、二匹で寄り添いながらさびれた橋の下で生きていました。
二匹だけで生きていくのはとても大変でしたが黒猫は白猫が大好きだったので白猫と一緒にいれればそれだけで幸せだと思っていました。

ある日、白猫が散歩に行って黒猫は独りで橋の下でうとうととまどろんでいた時の事。
『あら、こんなところに可愛い黒猫さん!』
ふと声が聞こえて黒猫が目を覚ますと目の前に少女がいました。
栗毛の髪に青い瞳の少女は黒色のかわいらしい洋服を着ていました。
驚いた黒猫は思わず飛び起き物陰に隠れましたが、少女はさらに寄ってきます。
『ねえ、よかったら一緒に遊ばない?ボールもあるし、楽しいわよ!』
怯える黒猫の気も知らず少女は手に持っていたボールを差し出して言いました。
鮮やかな色のボールはよく弾み、少女の周りを魅惑的にポンポンと跳ねていきます。
それを見た黒猫は怯えていたことも忘れ思わずボールに飛びついてしまいました。
『猫ちゃんすごーい!』
そんな様子を見た少女はとても楽しそうにまぶしく笑っています。
黒猫はその笑顔を見て自分まで楽しくなってしまい、いつの間にか夢中で少女と楽しく遊んでいました。

辺りが暗くなり少女は家に帰る時間になりました。
『今日はすごく楽しかったよ、ありがとう黒猫さん!』
そういうと少女は黒猫の頭を撫でました。
『ねえ、うちの子にならない?お父さんとお母さんに頼んでみるから!』
黒猫はとても驚きました。まさかそんなことを言われるとは思っていなかったからです。
『また明日来るからー!じゃあねー!』
少女は笑顔で夕暮れの街へと消えていきました。
黒猫はとても楽しく、嬉しい気持ちでいっぱいでしたが白猫の事を思い出しふと心がきゅっとなりました。
少女のお家に行けたらきっと毎日少女と遊べて楽しいでしょう。
でもそうなったら白猫は独りぼっちになってしまいます。
でも少女のお家に行かなかったら彼女を悲しませてしまうかもしれません。
そう考えると黒猫はただうなだれることしかできませんでした。

その日、白猫は珍しく夜遅くに橋の下に戻ってきました。
白猫も何かあったのかあまり元気がありません。
黒猫は気になって声を掛けようかと思いましたが自分の悩みでいっぱいいっぱいで声を掛けられませんでした。

黒猫はいっぱい考え、いっぱい悩みました。
白猫のこと、少女のことを、これまでこんなに悩んだことがないという位に。
そして眠れないまま夜が更けていき空が明るんできた頃、黒猫は空に輝く明けの明星に気が付きました。
それは白く明るんでいく空に輝く綺麗な星でした。

〈ああ、綺麗なお星さま。僕の願いを聞いてください。

どうか――――――――。〉

そうして黒猫は明けの明星に一つのお願いをしたのでした。



***


とある晴れた日の午後。
旅する飾り屋とトランクはいつものように街の市場に場所を借りて今日も飾りを販売していました。
するとそこに猫を抱いた可愛いお客さんがやってきました。

『―――で、自分の愛猫を模したペンダントが欲しいと。』
トランクがそう聞くとお客さんは明るい声で答えました。

「うん、そうなの!作ってくれますか?」
栗毛の髪に青い瞳の少女は大事そうに抱えた猫を撫でながら声を弾ませて言いました。

『もちろん!だよね、飾り屋。』
トランクが飾り屋に聞くと、飾り屋も微笑みながら喜んでと答えいそいそと飾りを作る準備を始ました。
「やったー!作ってもらえるって!良かったね、お姉ちゃん!」
「うん、本当に良かったね!」
そう言って栗毛の髪に青い瞳の少女達はお互いに微笑みあいました。
1人は白い服を、1人は黒い服を着て互いに猫を抱えています。

『…しかし君たち変わってるね。普通、自分の好きな色の猫を飼うんじゃないの?』
トランクがそう言ったのは理由がありました。
双子の少女達は白い服を着た姉は黒い猫を抱き、黒い服を着た妹は白い猫を抱いていたのです。

「私たちもそう思って初めは自分の好きな色の猫を飼いたいと思っていたんだけどー。」
「なぜか次の日になったらこっちの猫ちゃんを飼いたいと思っちゃったのよねー。」
『へー、不思議なこともあるもんだねー。』
トランクがそんなことを言って双子の少女達と話をしている間、飾り屋は猫達を見て、そしてこっそりと二匹に呟きました。

互いの願いが叶って良かったね、と。

二匹は顔を見合わせそして飾り屋の方を向いて笑顔でにゃあと鳴きました。


そんな旅する飾り屋とトランクの話。


minne

Creema

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