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中学受験と「ウェルビーイング (Well-Being)」

こんにちは!公立中高一貫校対策のiBASEです。
今回は、昨今話題の概念である「ウェルビーイング(Well-Being)」について触れながら、iBASEが目指したい受験の新しい当たり前についてご紹介します。


1.ウェルビーイング(Well-Being)とは?

ウェルビーイングとは「身体的・精神的・社会的に良好な状態」のことを指すと言われています。「経済発展だけでなく人々の心の健康や幸福感が社会全体の発展にとって重要である」という認識の高まりが、普及の背景にはあります。ウェルビーイングは、身体的健康、経済的安定、良好な人間関係、達成感、自己実現など多岐に渡るのです。

ウェルビーイング研究の第一人者として有名な、慶應義塾大学の前野隆司先生は、人が幸せを感じる因子を研究し、4つにまとめています。

1.「やってみよう」因子(自己実現と成長)
夢や目標を見つけ、それに向かって努力したり、成長したりしていくとき、幸福度は増します。逆に、「やらされている感」を持っている人や、やりたくない、やる気がないのに行動している人は幸福度が低いです。

2.「ありがとう」因子(つながりと感謝)
周囲にいるさまざまな人とのつながりを大切にする人、感謝の気持ちを持っている人や、思いやりがあり、親切な人は幸せです。逆に、孤独感や孤立は幸福度を下げます。

3.「なんとかなる」因子(前向きと楽観)
どんなことも楽観的に捉えることができ、常にチャレンジ精神をもって取り組んでいる人は幸せです。

4.「ありのままに」因子(独立と自分らしさ)
他人と比較することなく、自分らしく生きている人は幸福度が高く、人と自分を比べ過ぎる人は幸福度が低い傾向があります。

日本財団ジャーナル

2.教育とウェルビーイング

実はこのウェルビーイングという概念は、教育現場でもいま、最もホットなワードとして取り上げられることが増えています。そのきっかけは、文部科学省が出す『次期教育振興計画』にて、重要なコンセプトとしてウェルビーイングが据え置かれたことです。

そこでは「2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成」とともに「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」が掲げられています。そこではウェルビーイングを、以下のように定義しています。

●身体的・精神的・社会的に良い状態にあることをいい、短期的な幸福のみならず、生きがいや人生の意義などの将来にわたる持続的な幸福を含む概念 ●多様な個人がそれぞれ幸せや生きがいを感じるともに、個人を取り巻く場や地域、社会が幸せや豊かさを感じられる良い状態にあることも含む包括的な概念

文部科学省『次期教育振興計画』

この文部科学省の答申に、ウェルビーイング研究の立場から委員として関わっておられるのは、京都大学の内田由紀子先生です。

内田先生は日本型のウェルビーイングとして「協調系幸福」という概念を提唱されています。これは、欧米型の「獲得型幸福」とは異なり、他者との関係性や協働の中での幸福感を重視する考え方です。「(人の幸せを願い行動することで)まわりまわって自分にも幸 せがやってくるという信念」とも表現されており、次の図のようにウェルビーイングは深まるという整理がなされています。

https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/000177757.pdf

3.中学受験とウェルビーイング

ここまで見てきた「ウェルビーイング」という概念は、こと中学受験においてはかなりおざなりにされてきたと言わざるを得ません。たとえば深夜までの授業が続くことで睡眠不足が慢性化し体調を崩してしまったり、常に点数によって序列化され評価にさらされ続けることで、精神的なストレスを抱えたり。そうした経験が多感な小学生の時期に重なることで、自己肯定感の低さに悩まされる中学受験経験者はたくさんいます。

一方で「合格のため・成績アップのためなら何でもあり(多少の犠牲には目をつぶらなければならない」)と思い込んでおられる保護者の方が、ほとんどではないでしょうか。そういう価値観を「受験の勝ちパターン」として押しつけ、子どもたちの幸福を奪っている塾に対して、私たちiBASEは強烈な違和感を持っています。

果たして、成績の向上とウェルビーイングの担保は、トレードオフなのでしょうか?そんな問いを持って調べてみると、「ウェルビーイング度が高いほど、学力が高くなる」という研究結果が、世界にはたくさんあるようです。

小学校入学時のポジティブなメンタルヘルスが3年後の学業成績と小さながらも持続的な正の関連がある

O’Connor, M., Cloney, D., Kvalsvig, A., & Goldfeld, S. (2019). Positive Mental Health and Academic Achievement in Elementary School: New Evidence From a Matching Analysis. Educational Researcher, 48(4), 205-216.

主観的ウェルビーイングと学業成績の間に小中程度の相関がある

Bücker, S., Nuraydin, S., Simonsmeier, B. A., Schneider, M., & Luhmann, M. (2018). Subjective well-being and academic achievement: A meta-analysis. Journal of Research in Personality.

4.これからの中学受験 ーiBASEが目指すことー

iBASEの願いは、生徒、そして保護者の皆さんのウェルビーイングと、中学受験における成長を両立させることです。ウェルビーイングをおざなりにして合格だけを獲得するという旧来型の中学受験から、脱すること。その達成がここ数年のうちに、日本中の進学塾に課せられたミッションではないでしょうか。

iBASEは、中学受験をただの試験合格ではなく、子どもたちの成長とウェルビーイングの獲得機会として捉えています。学習プランの個別化、心理的サポートの提供、家族全体のウェルビーイングへの配慮を通じて、中学受験を子どもたちにとってポジティブな経験に変えようと試みます。

また、前野先生が提唱した先ほどの4つの因子の獲得のためには、塾以上に家庭でのコミュニケーションや親御さんとの関係性が肝になります。iBASEの指導の特徴は、学びを授業だけで捉えるのではなく、生徒の生活の総体をシステムとして捉え、サポートを試みることにあります。ご家庭との面談や保護者の皆様とのコミュニケーションに力を入れているのも、iBASEの特徴の1つです。

中学受験でウェルビーイングを。そのコンセプトを大切にしながら、これからも日々受験指導のアップデートを図っていきたいと思います。

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