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第3回「いばらき ひらこか」開催しました!

令和5年に新しくオープンする新施設と広場。新施設は各階に配置される子育てや文化芸術、市民活動支援などさまざまな機能が「縦の道」と呼ばれる各階をつなぐ空間によって混ざり合うような設計となっています。この新施設の7階に市民活動センターが移転する予定です。そして、移転後のセンターに必要な役割や機能について考えるワークショップが、「いばらきひらこか」です。全7回に渡るワークショップは、前半3回は学びが中心となる「アイデアのとびら」、後半4回は実践が伴う「チャレンジのとびら」という構成です。

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この「アイデアのとびら」の第3回が、8月23日(月)18:30-21:00に開催されました。当日の様子をレポートでお伝えします。

1.前回のふりかえり

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前回(第2回)は、岐阜市の「みんなの森 ぎふメディアコスモス」の吉成さんによる講演と、参加者同士で活動紹介を行いました。参加者同士で「ひらこか手帳」をめくりながら、前回のワークショップで印象に残った言葉や出来事を紹介し合いました。

2.視察のふりかえり

第2回と第3回の合間に、他の地域へ視察に行きました。あべのハルカス近鉄本店(大阪市)と、草津川跡地公園(滋賀県草津市)です。各施設では地域の方々が市民活動に取り組んでおり、活動を支援する役割としてコーディネーターが常駐しています。茨木市の市民活動センターを考えるにあたって、このコーディネーターという仕組みを現地に足を運んで学んできました。今回はそのふりかえりとして、各地をサポートしている事務局スタッフよりプロジェクトの内容を紹介したあと、視察に参加したメンバーと共に意見や感想を共有しました。なお現地の写真は、視察時に事務局スタッフが撮影したものです。

2.1あべのハルカス近鉄本店「縁活」について

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あべのハルカス(以下、ハルカス)は、2014年4月にグランドオープンしました。ハルカスの中に近鉄百貨店が入りましたが、売り場面積は10万㎡あり日本一といわれています。しかし今この時代に、この広大な面積を従来の方法で運営するのは難しいかもしれません。ということを踏まえて打ち出されたのが、“モノ・コト・ヒトが出会う「街のような場」”というコンセプトです。その街のような場を実現する一つの方法として、「縁活」というプロジェクトが生まれました。

百貨店の各フロア内に「街ステーション」と呼ばれるスペースをつくり、そこで団体の皆さんがプログラムを展開しています。それまでの百貨店はモノを買うというお客さんと店員の一方向の関係でしたが、地域の団体やボランティアが参加して、楽しくて、日々の暮らしや地域、そして社会をちょっと良くするプログラムを展開することで、出会いや学びなど買い物だけではない双方向の関係性が百貨店の中で生まれていきます。

街ステーションは現在、5階と7階と8階の3か所にあります。またキッチンスタジオがあり、普段は料理教室などが開催されていますが、日曜日は縁活のプログラムで使うことができます。また屋上のステージなど、百貨店内の様々なところで日々プログラムが展開されています。

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縁活はハルカスがグランドオープンする数年前から準備が始まっていました。市民活動団体の皆さんと出会い、集まってもらってワークショップを開催し、どのような場所があれば百貨店で活動してみたくなるかについて議論しました。そこで生まれたのが、縁活で大切にしたい10のコンセプトです。縁活が始まってから8年が経ちますが、今でも大事にされています。

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(縁活の募集チラシより)

縁活のプログラム例

様々な団体がプログラムを実施しています。例えば・・・

●展示:団体が作品展示し、人気投票を実施。その後の街ステーションでのプログラムへつなげる。
●体験:児童教育の学部の大学生が、子供向けのプログラムを実施。幼稚園や保育所とは異なった環境での子どもとコミュニケーションをとる場として活用。
●健康増進:婦人服を販売しているすぐ横の街ステーションで、エクササイズプログラムを開催。
●相談会:困った時の駆け込み寺的な役割を果たせるよう、街ステーションでカウンセラーが定期的に相談会を開催。
●料理教室:地元の食べ物を使った料理教室をしながら、地域を紹介するプログラムが開催。
●鑑賞:マジックを披露し、通りすがるお客さんにも楽しんでいただけている人気プログラムを開催。

このように街ステーションで市民団体や地域の皆さんが協力してプログラムを実施することで、百貨店の中に公民館のような空間ができあがってきています。

縁活を支えるボランティア

また縁活には、CSR(コンシェルジュ、サポーター、レポーターの頭文字から命名)というボランティアの枠組みもあります。縁活が始まる前に開催したボランティア養成講座を経て集まった人たちが、縁活に興味のある人たちをつなげたり、団体によるイベントの開催を手伝ったり、縁活の取り組みを情報発信するといった役割を担っています。

例えば9月の敬老の日にお手紙を書いて送るという「おてがみ企画」というプログラムでは、郵便局の人たちをCSRの皆さんがサポートする形で、手作りのポストを用意して百貨店に郵便局のような場をつくるといった、まちのような場を実現するという企画が毎年開催されています。また地域のお祭りに縁活の団体やCSRの皆さんが一緒に出店する、といった地域とのコラボレーションも生まれています。

「縁活」視察の振り返り

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縁活の視察に参加したメンバーと一緒に、感想や印象に残ったことを交えて視察の内容を振り返りました。視察では、「あべの子ども博覧会」という縁活の団体が関わるイベントの見学や、縁活を支えるコーディネーターに話を聞きました。縁活には現在、400を超える市民団体が登録されていますが、その団体の活動を支えるコーディネーターは、現在近鉄百貨店のスタッフ2名で担当しています。縁活で活動したい方が来ると、まずはこのコーディネーターが窓口となり相談に乗ります。

コーディネーターの方々から、最初の面談に時間をかけるという説明がありました。団体が縁活でやりたいと思っている活動が、ハルカスや街ステーションの特徴も活かすとどんなプログラムに発展させることができるのか、コーディネーターが一緒に考えます。プログラムの実現方法はもちろん、縁活に関わる人たちをつなげてコラボレーションを生み出したり、ハルカス全体の動きと縁活を調整したりと、縁活で多様なプログラムが生まれている背景にはコーディネーターの支えがあることを学ぶことができました。

2.2草津川跡地公園について

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滋賀県草津市は、東海道と中山道が交わる宿場町で、そこには天井川として全国的に有名な草津川がありました。東海道の浮世絵などにも出てくる景観は草津市民にとっても大切なものでしたが、度重なる水害があり治水することが難しくなったため、川の流れを変えることになり、約15㎞にわたる跡地が残されることになりました。ここを市民のいこいの場として公園として活用することが、草津川跡地プロジェクトの始まりです。

市民参加で検討された空間デザインと活動のコンセプト

市民と話し合いながらプロジェクトを進めていくことになり、2012年から公園の空間デザインについて話し合うワークショップが開催されました。そして2014年からは、公園で市民が活動していくためのコンセプトを検討することになりました。これもワークショップ形式で話し合いながら、実際に活動をやってみてコンセプトに反映していく社会実験にも取り組みました。そうして提案されたのが、「新しい草津のシンボルにしよう」「みんなの想いが集う場にしよう」「草津の自然や文化の種を大切に育てよう」という3つのコンセプト。そして「くさねっこ」という草津川跡地公園での市民活動の愛称も生まれました。

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日常をイメージした社会実験とルールづくり

コンセプトが決まってからは、公園のオープンに向けて小さな社会実験も始まりました。公園で市民活動となるとイベントが想像されがちですが、イベントばかりでは長続きしません。日常をイメージした活動を検討していくための社会実験として、5ヶ月間に渡り、お絵かき教室やリースづくり、健康マージャンなど、22のプログラムが実施されました。

こうした実験と並行して、市民の皆さんが活動のルールを整理していく会議体も発足しました。こうした準備を経て、2017年4月に草津川跡地公園がオープン。「くさねっこ」として活動してきた市民はオープン後も活動を継続していることはもちろん、公園を管理する指定管理事業者には、「くさねっこ」による市民活動を支えるコーディネーターも配置されています。ルールをつくる会議には大学生も参加していましたが、2021年には、その大学生が社会人経験を経てコーディネーターとして働き始めるといったつながりも生まれています。

草津川跡地公園の視察のふりかえり

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草津川跡地公園の視察に参加したメンバーと一緒に、視察の内容をふりかえりました。視察では、「くさねっこ」として活動している団体の活動紹介がありました。公園の花を使ったドライフラワーをレジンの中に入れてアクセサリーを作るという活動や、アゲハチョウが集まる道をつくるプログラムなど、公園の特色を活かした活動が展開されています。

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情報発信についても、公園管理者と市民が連携して取り組んでいました。今回の参加メンバーもプログラムにおける情報発信に課題を感じているそうですが、公園管理者が作るイベントカレンダーに市民団体が提供する情報を集約させていくしくみは、連携のあり方として参考になったようです。

また草津川跡地公園でも、コーディネーターから話を聞きました。コーディネーターが市民活動の窓口となって、初めて相談に来た団体に「くさねっこ」のコンセプトや活動ルール(5つの作法)を紹介しています。また、1つの団体ではできないことを、団体同士をつなげていくことでプログラムの開催をサポートするなど、活動を支えています。

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(「くさねっこブック」より)

また草津川跡地公園のコーディネーターは、3つの役割に分かれて配置されていることも大きな特徴でした。ここまで紹介してきたコーディネーターは「市民活動コーディネーター」にあたります。

市民活動コーディネーター
市民活動の窓口、プログラム企画の調整など
緑のコーディネーター
緑の維持管理、空間づくりなど
事業者コーディネーター
商業関係の窓口、公園内の収益管理など

このようにテーマに応じてコーディネーターの役割を分けていることで、市民としては相談がしやすく、かつ営利活動と非営利活動をバランス良く両立させることにも貢献しているようでした。

3.バックキャスティングで活動を考えよう

「いばらき ひらこか」では、新施設に移転する新しい市民活動センターのありかたを、市民の皆さんとともに検討しています。視察では、市民活動を支える仕組みや体制を学んできました。そしてワークショップ全体の後半となる「チャレンジのとびら」では、ワークショップ参加者の間で活動を披露し合います。活動を実際に体験することで、茨木市の市民活動に必要な支援を考えていきます。

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ワークショップ参加者の間で、つまり仲間内での披露なので、既に取り組んでいる活動に+αとなる実験的な要素も盛り込みます。この+αを考えるために用いるのが、今回のワークショップで大切にしている「バックキャステイング」です。

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バックキャスティングとは、遠すぎない未来の姿をビジョンとして描き、そこから逆算してアクションを考える思考法です。現状の課題から解決方法を検討する「フォアキャスティング」に比べて、現状にとらわれずに発想できるため、より大きな変化を生み出すことができるといわれています。今回のワークショップでは、10年後の「自分の姿」と「活動の姿」を想像し、そこから5年後と2年後(新施設がオープンする年)の状態について、ワークシートに記入しながら考えました。

03ひらこか_ワーク例

(上記は事務局スタッフによる記入例)

シートの記入後は、3人1組になって内容を紹介し合いました。普段は10年後の姿を考えることはなかなかありませんが、シートに実際に書き出し、他の人たちと紹介し合うことで、自分の未来を改めて考える機会となったようです。どんな活動がお披露目されることになるのか楽しみです。

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また今回は宿題として、自分がイメージする活動の参考になりそうな事例を探してくることとしました。事例には発想のヒントがたくさんあり、アイデアが膨らみます。ワークショップ参加者に紹介した事例収集に役立つサイトを掲載します。ぜひ皆さんも、サイトをのぞいてみてください。

次回は10月5日(火)、いよいよ「チャレンジのとびら」が始まります!

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