第1回「いばらき ひらこか」開催しました!
令和5年に「育てる広場」をコンセプトとした新しい施設と広場が市民会館跡地エリアにオープンします。新施設の7階に市民活動センターが移転する予定です。新しいセンターでは、中と外をつなぐ縁側のように、人と人、人と活動、人とまち、人と団体など、様々な人をゆるくつなぐ役割を展開し、誰もが訪れたくなる「みんなのえんがわ」のようなところにしていきたいと考えています。全7回にわたるワークショップでは、これからの市民活動センターに必要な役割や機能についてみなさんと一緒に考えていきます。
6月29日(火)18:30-21:00に第1回「いばらきひらこか」を開催しました。参加者は30人、10代から70代まで幅広い年代の方々が参加してくれました。前半3回のワークショップは「アイデアのとびら」と題し、学びを中心にセンターを活用するアイデアを考えます。秋以降に開催する「チャレンジのとびら」ではアイデアをワークショップメンバーの中で実験し、センターのコンセプトに反映します。
冒頭、参加者のみなさんに一人1冊ずつお配りしたのが「ひらこか手帳」。この手帳にはワークショップの中での学び、気づきなどをありのまま書き込んでもらうものです。手帳に書き込まれたことを丁寧にひろいながら、新しい市民活動センターの運営方針に反映していきます。
当日の様子をレポートにまとめました。
1.茨木市市民協働推進課長あいさつ
茨木市市民活動センターは平成18年にオープンし、現在はクリエイトセンターの中にあります。令和5年はオープンする新施設の7階にセンターが入ります。新施設と広場の整備コンセプトが”日々何かが起こり、誰かと出会う”ですので、市民活動の必要性、重要性がますます高まってくると考えています。センターにどのような機能があれば市民活動がしやすくなるのか、どうしたら市民活動をやってみようと一歩踏み出せるのか、みなさんと一緒にこれからの時代に必要とされる市民活動について学び、実験しながら新たなセンターについて考えていきたいと思っています。
2.自己紹介
参加者同士で自己紹介をしました。席の近い人同士3人1組になり、自分の日頃の活動やワークショップへの参加動機、趣味や最近はまっていることなどを共有しました。はじめましての人が多い中、最初は緊張した様子でしたが徐々に笑いが起きたりと、その後の休憩時間も使いながら自己紹介しました。
3.対談 「なぜ今、茨木市の市民活動に新施設と広場が必要なのか」
伊東豊雄さん(伊東豊雄建築設計事務所)×山崎亮さん(studio-L代表)
コロナウイルス感染予防対策のため、新施設と広場の設計を担当した伊東さんはワークショップに参加できませんでした。そこで、事前に対談を収録し会場では動画を視聴しました。
山崎:設計者である伊東さんから、建物全体の設計に対する想いや、市民活動センターが入る7階を市民のみなさんにどのように使ってほしいかについて、お話を伺います。
伊東:ホールだけではなく、子育て支援、図書館、市民活動センター、プラネタリウムまで実に様々な機能が混在した施設で、最初はどう設計したらよいかと悩みました。しかし、しばらくしてから、これはとてもおもしろいことだと思うようになりました。文化的なものだけではなく、子育てなどジャンルの異なるものが混ざり合う活動が起きるかもしれないからです。「毎日でもここに来たら、誰かに出会って、何かが起こる」ということをテーマに、緑空間を7階まで積層して公園のような場所にしようと考えました。また緑が多いということだけではなく、いろんなところでいろんな活動を自分で選んでできるという公園のような場所にしていきたいと考えました。そのために途中で設計を変え、梁のない床にして自由に歩き回れる場所にしました。
山崎:公園は思い思いに活動ができる場所であり、その考え方が建物の中にも反映され、壁や柱のない設計に見直されたんですね。
伊東:新施設には、”縦の道”という各階を結ぶ空間があります。エスカレーターで各階を行き来しながらフロアの様子が見えるので、違う階で誰かが何かをやっていたら、近寄って見にいくことができます。違う階の気配を感じることができる様になっています。約1200席のホールがありますが、毎日イベントが開催されることはないでしょう。ホールしかないとイベントのある日にしか人が来ない。しかし、この施設なら毎日人が来ることができます。立地的にも2つの駅を結ぶ場所にあり、まちなかでこれだけの緑があるというのは他の公共施設にはない魅力だと思います。
山崎:新施設の7階に市民活動センターが入ります。ここも、他の人の様子が見え自然と交流できる場所になっていますね。
伊東:7階には中庭があったり、和室があったりと非常に多面的な場所になっています。
山崎:市民活動をしている様子が、他の人たちから見つけてもらいやすい設計になっているんですね。市民活動のコーディネーターによって、他の団体とつながることができるということはありますが、空間的に自然とつながることができるのは、活動している団体からしてもうれしいことだと思います。
伊東:図書館が各階に配置されていているので、各階のテーマにふさわしい本が配架される予定です。図書館はこれからの公共施設の中心になると思っています。図書館があることでにぎわいが生まれます。
山崎:誰かがいるかと思って図書館に行くけれど、誰にも会えなかったから仕方なく本を読むという場所なのかもしれませんね。であれば誰がいるのかが見通せる空間は必要ですね。”縦の道”から遠くまで見通せる設計になっているので、この施設に来たらキョロキョロしてほしいですね。
伊東:ぜひいろんな場所を歩き回ってほしいですね。こんなに機能が複合したのは予想外でしたが、今となっては市の慧眼なのではと思っています。
非常に緑が多いので、緑に関するワークショップができるといいですね。親子で木を育てて植樹してもらうようなワークショップをすることで、子どもと共に木も育つ、それが循環するような施設になるといいなと思っています。また、ワークショップに参加したメンバーが緑のメンテナンスをしてくれるようになることも期待しています。コロナ禍において、屋外空間の重要性が高まっているので、新施設にテラスが多いことは有効だと思います。
山崎:タワーマンションなどに暮らしていると、庭がないので土に触って木が育つことを経験する機会が少なくなってしまいます。新施設や広場に来れば、友だちと一緒に土に触れる経験ができるといいですね。新施設や広場ができることがとても楽しみになりました。
※対談の動画は茨木市公式Youtubeチャンネルから視聴できます。
4.講義 「人生を豊かにする市民活動とは?」
山崎亮さん(studio-L代表)
友だちの数で寿命がきまる!?
石川善樹さんの「友だちの数で寿命がきまる 人との「つながり」が最高の健康法」という本があります。海外の研究論文をわかりやすくまとめてくれている本です。喫煙している人よりも孤独な人のほうが寿命が短くなることや、お見舞いに来てくれる人数で余命が変わるなどの研究結果がデータと共に紹介されています。超長寿社会の中では、友だちの数が豊かさの一つの指標になっていくのだと思います。
また、一般的に健康で長生きするためには運動をしたほうがいいと言われていますが、運動をするのかしないのか、一人か複数人でするのかを比較した研究もあります。複数人で運動することが一番よいというのは明確ですが、次に来るのが、一人で運動するか、複数人で運動をしないなのか。結果は後者でした。一人でコツコツ運動するよりも、複数人で運動している人たちを応援しに行っている人たちのほうが健康だという結果になったそうです。新施設や広場では、友だちを増やすこと、そして友だちと出来事を共有してほしいなと思います。まずは健康で長生きすることを基本にできるといいですね。
行動経済学 システム1とシステム2
行動経済学とは、人々は何によって行動するのかを研究している学問です。その中で脳の構造から行動がどう起きているのかを研究している学派があります。例えばラーメンを食べたときに、まずはおいしい!うまい!と瞬時に考えます。その次においしいけど価格は高い?やカロリーが高すぎる?など予備知識がないと判断できないことを考えます。おいしい!うまい!と判断したのはシステム1です。これは楽しいか、かわいいか、美しいかなど感性で判断しています。一方で、おいしいけど価格は高い?などある程度の予備知識が必要で、判断するのに時間がかかるのがシステム2です。これまで見てきた市民活動団体の方々はとてもまじめて正しくて、論理的に情報発信ができています。これらはシステム2に働きかけていると言えます。しかし、楽しい、美しい、かわいいなどシステム1に働きかける部分も発信していかないと、多くの人たちが参加しようと思わない結果になってしまいます。正しいことだけで行動できる人も少数いると言われていますが、正しさだけでは動けない人がほとんどです。みなさんがやろうと思っている活動が正しすぎると、友だちが増えない可能性があります。情報発信するときに、システム1に訴えかけることを心がけてみてください。
活動に対する感じ方とやりとりするお金の関係
楽しいし、意義がある(TI)、楽しいが意義はない(Ti)、楽しくないが意義はある(tI)、楽しくないし意義もない(ti)を縦軸に、たくさんのお金を受け取っている場合は+2、ある程度のお金を受け取っている場合は+1、ほぼお金のやりとりがないが0、ある程度のお金を払っている場合は−1、たくさんのお金を払っている場合は−2を横軸にして、独自に表をつくって整理してみました。
仕事で考えると、楽しいし意義があって、たくさんのお金を受け取ることができる(TI+2)のは理想ですね。世の中には、楽しくないが意義はある(tI+2、tI+1)仕事というのも意外と多いのかもしれません。
一方、市民活動は楽しいし意義があり、ほぼお金のやりとりがない(TI×0)のところにあるものが多いと思います。しかし、自分たちが楽しくて意義のあるものだったら、若干お金を払って活動してもいいのかもしれません。例えば三千円ぐらいでコーヒー豆を仕入れて、無料でコーヒーをふるまい、周りに喜ばれて1日楽しい時間を過ごす。二万円を払って旅行に行くよりも、1日三千円を払っていろんな人に出会い、友だちが増える楽しさがあります。正しいことばかりに意識が行ってしまうと、意義はあるけれど楽しくないことをやらされている感覚になってしまいます。そうならないように、自分が楽しいと思えるようにすることが大切です。ドイツの哲学者ハンナ・アレントの「人間の条件」という本の中で、人間の行為は労働(laber)、仕事(work)、活動(action)があり、この3つはグラデーションのように1つの軸上にあると言われています。労働よりは楽しさや未来の永続性を重ねて仕事に転換していくことが必要であり、さらにもっとも大切なのは、自分に正直にやりたいことを自発的に行う活動です。市民活動に関わる方々には参考になる本だと思います。
5.感想の共有
参加者同士で、各自「ひらこか手帳」に書き込んだ内容を見せ合いながら、対談や講義を聞いた感想を共有しました。お二人の方から共有の内容や感想を発表してもらいました。
ー感想ー
伊東さんの動画について、会場の中に様々な機能がミックスされることで、思わぬ効果が生まれるかもしれないこと、さらにそれを構造化しているところがすごいなと思いました。使い方の自由度が高いことやいろんな出会いが生まれる場になりそうなので楽しみです。各階に図書館が分散していることについて、コンパクトにまとまっていると調べものするのにアクセスしやすくなるので、そんな学びの場になったらいいなという話をしていました。
市民活動と言っても、人によって何を思い描いているのかが違うのだろうと思います。ワークショップを通じて、参加されているみなさんと話をしながら、みなさんの考える市民活動とはどのようなものなのか、知りたいなと思いました。
次回の「活動アイデアの芽をひらこか」は7月21日(水)18:30-21:00に市役所南館8階中会議室(予定)での開催です。講師は「みんなの森ぎふメディアコスモス」総合プロデューサーの吉成信夫さんにお話を伺います。
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