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第4回「いばらき ひらこか」開催しました!

令和5年に新しくオープンする新施設と広場。新施設は各階に配置される子育てや文化芸術、市民活動支援などさまざまな機能が「縦の道」と呼ばれる各階をつなぐ空間によって混ざり合うような設計となっています。この新施設の7階に市民活動センターが移転する予定です。そして、移転後のセンターに必要な役割や機能について考えるワークショップが、「いばらきひらこか」です。全7回に渡るワークショップは、前半3回は学びが中心となる「アイデアのとびら」、後半4回は実践が伴う「チャレンジのとびら」という構成です。

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「チャレンジのとびら」のポイントは、第6回(12月)にワークショップ参加メンバー内で活動を披露し合うことです。メンバーはワークショップで得た新たな学びを活かして、自分の活動に実験的な要素を加えて披露します。また同時に、他のメンバーの活動を観察することで、茨木市の市民活動に必要な支援内容を考えます。

10月5日(火)の第4回から、いよいよ「チャレンジのとびら」がスタートしました。当日の様子をレポートでお伝えします。

1.前回のふりかえり

前回(第3回)は、他地域への視察のふりかえりと、10年後の理想の姿から逆算して活動をとらえ直す「バックキャスティング」に取り組みました。参加者同士で「ひらこか手帳」をめくりながら、前回のワークショップで印象に残った言葉や出来事を紹介し合いました。

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2.近畿大学 久 隆浩 先生による講演

「チャレンジのとびら」に臨むにあたって、近畿大学 総合社会学部 総合社会学科 環境・まちづくり系専攻教授の久 隆浩 先生より、「ネットワーク活動と中間支援」というテーマで講演していただきました。以下は講演から抜粋させていただいた内容です。

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中央集権社会からネットワーク社会への変化

NPO法ができたのが1998年です。それから23年経って、時代が変わっています。長くNPOの活動に関わってきた人と、現在の若い人たちでは動き方が変わっています。その中で世代間ギャップも起こっています。同じ市民活動といいつつも、目指していることが大きく違ってきているのかもしれません。

またテレワーク、在宅ワークという動きはコロナに関わらず進んでいました。これからの社会は情報社会、ネットワーク社会へと大きく変わっていきます。さまざまな組織がネットワークの形態をとるようになり、中央集権型ではなく、分散型組織に変わってきました。市役所と市民の関係も同じなのではないでしょうか。

変化する教育のあり方

近代の教育は、より良い工業労働者をつくるというのが目的でした。命令に従ってまじめに働くことが求められました。しかし現在の教育現場ではオンラインで授業をしています。授業を見たい時に見れるオンデマンド型や、リモートによる授業参加が普及し、命令が届かなくなっています。これからは自分で考えて行動する「自律」が求められています。それに対応して、学習指導要領も変わってきています。課題を与えてみんなで考えるということを、小学校の授業でも行われています。

参考:千代田区麹町中学校(校則をなくした中学校)

参考:パプアニューギニア海産(人を縛らない働き方)

生徒が自律して学ぶ学校や、社員が自律して働く会社などは、信頼関係を前提として成り立っています。信頼関係が崩れると、自律も生まれません。

協力がつくる社会とは

「公・共・私」という考え方があり、コロナ禍において改めて「共」の重要性を実感しました。

私:市場経済
経済は浮き沈みがある水もの。経済だけに頼ると、沈んだときに大変な状況になってしまう。

公:おもに行政
法律に則って仕事をしなければいけないため、スピード感が乏しい。行政が追いつかない部分は、市民が協力せざるをえない。そこで重要になるのが「共」。

共:協力、支え合い
例えば、コロナ禍になったばかりのタイミングでIBAR EATSが動き出した。これは市役所に頼らず市民がつくった仕組み。このような仕組みは、必要なときに生まれ、必要なくなったら終わる、それでいい。その繰り返しが今後の社会を動かしていくのではないか。

大変な状況になると支え合う必要があります。阪神淡路大震災の時は、多くの人が日本中から集まってくれました。今は毎年のように水害や震災が起こりますが、毎回ボランティアが来てくれます。しかし大変な時に助け合うだけでなく、それをきっかけに、社会の中に仕組みをつくり上げていくことが必要ではないでしょうか。

ヨハイ・ベンクラーが「協力がつくる社会」という本を出していて、この本の英語タイトルは「ペンギンとリヴァイアサン」です。

ペンギンは、LinuxというパソコンのOSのシンボルマークです。OSとはWindowsやMac OSなどの基本ソフトのこと。その一つがLinuxです。他のOSは会社が開発をして販売していますが、Linuxは世界中の技術者が協力して開発しているので無料で使用できます。会社組織が作るのではなく、みんなが協力してボランティアで作り上げています。こういう仕組みが社会を動かしていくのではないか、というのがベンクラーの説です。

一方でリヴァイアサンとは、トマス・ホッブスが書いた本です。ホッブスは、主権者に権利を預けて保証してもらったほうがいいと考えました。それが今の国や行政といった仕組みです。さらにアダム・スミスは「国富論」で、見えざる手という概念を提示しました。私たちは自分の利益を追求しても、市場が調整して社会全体の利益になるということを唱えています。これが現在の経済の仕組みです。

皆さんが何かを始める時に、権力で人を動かすのか、お金で人を動かすのか、協力して人の自発性で動かすのか。今までは、権力・お金・組織で社会を動かしていましたが、これからは共感のネットワークで社会を動かすようになるのではないでしょうか。

小さなアクションでまちを魅力的にする

最近、タクティカルアーバニズムというしくみが注目されています。日本語の本も最近出版されました。

今までは行政による出資や、民間デベロッパーが投資してまちを変えていた。一方で市民が手をつないで小さなアクションを繰り返し、まちを魅力的にしていこうという動きが世界中で起こっています。これがタクティカル・アーバニズムと呼ばれているもので、今の都市計画の最前線の考え方です。

NYタイムズスクエアでは、もともと道路だったところを歩行者天国にしました。コペンハーゲンのブリズベンでも、ベンチを置いて人々が楽しむ空間を作っています。これらはお金をかけずに市民が動いた取り組みです。

奈良県生駒市の事例

●good neighbors
子育て世代のママが中心となって開催されている「いこままマルシェ」と、生駒大社の境内で開催されている手作り市、それぞれの中心メンバー2人が組んで、good neighborsという場所を作りました。近鉄生駒駅の空き店舗を借りて、自分たちの後輩や仲間がギャラリーや会合で使えるようなスペースです。この初期費用を集めるためにクラウドファウンディングを実施し、目標額150万でした。難しいのではと思いましたが、最終的には156万集まりました。2人がつくってきたネットワークが達成に導いたのでしょう。
●公園にいこーえん
生駒の萩の台住宅地というニュータウンで行われている、子どもたちが楽しく公園を使おうという取り組みです。生駒に移住した女性が、自分が公園で遊ぼうと思う時間に、一緒に遊ばないかと近所の人たちを誘い、それが口コミで広がっていきました。この活動は一人でやっていて、ある時、どのくらい継続する?次はどうする?という話になりましたが、自分がやめたくなったらやめたらいいのでは?と伝えました。少し強引な言い方ですが、周りの人がおもしろいと思ったら自然と続くと思います。無理に続ける必要はないのです。

このような市民のアクションに応じて、行政も動きました。生駒市ではバラバラに展開されていた活動をつなぐ仕掛けとして、「100の複合型コミュニティ」という仕組みづくりが始まりました。

これからはネットワーク型活動が主流に

ネットワーク型活動とは、「この指とまれ方式」です。何かしたいという呼びかけがあった時に、おもしろそうだと思って人が集まります。最初から組織やグループがあるわけではなく、賛同する人たちが集まってグループができます。このやり方が今後主流になっていくのではないかと思っています。

兵庫県の事例

●三田市の高平里づくり協議会 里カフェ部会
地域づくり協議会の女性が、カフェを始めることになりました。お茶を飲めるだけではなく、月に何回かランチができます。そばを作れる人は、そばランチDayを担当し、主婦で将来的にお店をしてみたい人が、主婦シェフランチDayを担当しています。誰一人やりなさいと言われてやっている人はいません。みんなの「やりたい」を持ち寄っています。
●宝塚市のまちづくり協議会ガイドライン
まちづくり協議会のガイドラインとして、23項目のチェックリストを作りました。その中に「参加したいと思った時、参加の意思表示ができる方法はありますか?」という項目がありました。まちづくりにおいて、なかなか「やりたい!」と言える場所がありません。それを言いやすい雰囲気をつくることが目的です。

「この指とまれ方式」において重要なことは、プラットフォームの存在です。例えば6人が互いにつながろうと思うと、多くのネットワークが必要になり難しいです。しかし一人が中心になってつながるとシンプルになります。誰かが間に入ってつながってもらうと、みんながつながります。こういう仕掛けがこれからのネットワーク社会では重要です。

こういう人のことをコーディネーターと呼びますが、これは人でなくても場所でもいいのです。集まる場所、情報交換する場所があればよく、ネット上の掲示板やSNSもそういう場になっています。

ネットワーク型活動における中間支援

市民活動センターが中間支援組織として、媒介者、仲介者としてネットワークの真ん中に入り、つないでいく役割をもっています。NPO法の第2条には、NPOの活動として中間支援が位置づけられています。

中間支援の主な役割
「連絡」:交流会、ニュースレター、ホームページの作成なでどお互いの情報を交換できるようにする。
「助言」:相談がきたら適切な助言をしていく。
「援助」:活動支援、お金が欲しいというニーズがあったときに、民間の財団の募集について享保提供したり、スキルアップ講座を開催して、活動がよりよくなるように支援する

中間支援は重要ですが、なかなか担い手がいません。中間支援においては知識や能力、技術が必要だからです。また役割にふさわしい対価(報酬)も、現状では充分とはいえません。

NPOなどの団体の共通した悩みとして、活動をしたい、現場に行きたいという人が多く、団体の本部ががら空きになってしまうことがあります。一方で、裏方が得意な人もいます。以前の仕事で総務や会計の経験がある人や、HPをつくることができる人。このように裏方になってもらう人も必要ですが、こういう仲間が見つかりません。活動を実践する立場もあれば、中間支援に向いている人は、サポートする側に回る方法もあります。

これからは自律の時代です。これからは市民活動センターが場所や機会を提供し、集まった人が自ら動いて関係づくりをしていく必要があるでしょう。

3.実験に向けた準備がスタート

ワークショップの後半では、ワークショップメンバー内で活動を披露しあう実験に向けた準備が始まりました。メンバーはワークショップで学んできた「バックキャスティング」をもとに、日頃の活動に実験的な要素を加えて披露します。同時に、お披露目された活動を観察することで、その活動に必要な支援内容も検討します。

実験にあたっては、メンバーは3つのパターンに分かれます。久先生のお話にもあったように、中間支援の役割には、市民活動の相談に乗る「助言」があります。今回はこの相談において想定される3つのパターンに分かれて実験し、具体的にどんなニーズがあるのかを検証します。

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会場を3つのパターンに仕切って分け、メンバーは希望するパターンを選んで分かれました。「ソロ」を選んだメンバーは、自分たちの活動を自力で発展させることを検討します。「コラボ」を選んだメンバーは、この場で偶然一緒になったメンバー同士でコラボレーションする方法を検討します。「サポート」を選んだメンバーは、自ら活動することを選んだメンバーたちをサポートする方法を検討します。

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今回のワークショップは、各パターンのメンバーでLINEグループをつくり、自己紹介などの交流で終えました。次回は11月4日(木)ですが、その前に実験内容を事務局と一緒に具体的に話し合う個別相談会を開催します。相談会を経てどんな実験が提案されるのか、とても楽しみです。

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