視覚以外で感じるアート作品- more than reason
銀座のLIXIL GALLERYで隈研吾•山口一郎(サカナクション)•森永邦彦(ANREALAGE)の3名が、音楽の垣根を超えたコラボ作品を展示している。
会期が明日24日までということで、滑り込みで作品を見ることができた。
作品のテーマはタイトル「more than reason」の通り、意味を超えたもの。
展示は足だけが見えるマネキンに、スカートのようなヒダのある物体がかぶさっているものだった。それが黒と白の二つ。
ただ、そのスカートはウエストで一度細くなった後、上半身でまた広がって、最終的に部屋全体を覆うようになっている。
その結果、スカートが本来の意味を失くす=意味を超える、ということらしい。
今回の展示で面白かったのは、音も鑑賞物に含まれていたこと。それも、BGMとして会場に流れているのではなく、個人が自分のスマートフォンで音を聞くような設計になっていた。
会場の入り口には、展示会の参加者3名が作った俳句が書かれたカードが置かれている。そのカードの裏には音源をダウンロードするためのQRコードがあり、鑑賞者は好きな一句を選んで、それに紐づく音源を聴きながら作品を鑑賞できる仕組み。
私が選んだのは森永さんの句で、夜の森を歩いているような、ザワザワとした少し不安になる音源だった。黒の展示の部屋で、マネキンの周りを歩きながら音源を聞くと、壁の奥にまだ空間があるような気がして感覚が歪む。また、時折音源に、人が咳き込む音なども入っていて、すぐ近くに人がいるような、ハッとさせられる瞬間も音によって作られていた。
展覧会というと、大半は視覚で鑑賞する作品になるけど、聴覚という他の感覚への刺激があることで、その作品のテーマを補強したり、作品へのより深い没入感を作り出せるのは面白い。
鑑賞後、この展示会について調べていたら、Fashionsnapのインタビューで山口さんが展覧会について語っているものがあった。
美しく難しい、余白みたいなものを3人でわかりやすく通訳するような空間を作れたら。
ちょうど昨日、自分の記事を書きながら余白のある展示について考えたばかりだったので、余白づくりを意図的に行っているこの展覧会を鑑賞できてよかった。
作品に余白を作り、鑑賞者それぞれがその作品に独自に向き合えるようにすることが、作品の作り手と受け手の良いコミュニケーションを生む鍵なのかもしれない。
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