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20代から美術館に通い始めたアート好き。美術教育を受けていない視点で、展覧会の感想を綴…

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20代から美術館に通い始めたアート好き。美術教育を受けていない視点で、展覧会の感想を綴ります。日常や好きなもののことについても、ときどき。

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  • コミュニケーションの勉強中

    いいな! と思えたコミュニケーションの記録

  • 好きなものについて語るときに私の語ること

    私の人生を彩るものの記録。

  • 展覧会探訪記

    展覧会やその他の作品について、私なりの感想を。

最近の記事

コーヒー屋さんの白湯

数週間前の蒸し暑さが嘘のように、涼しくなった10月の頭。外の空気は乾燥し、心地の良い涼しい空気の奥には、これから訪れる厳しい寒さを予感させる冷たさがある。 そんな時期に行ったお気に入りのコーヒー屋さんでの出来事。フリーで出されたお水が、冷たい水ではなく人肌くらいの白湯だった。確か以前は氷入りの冷たいお水のはずだったけど、いつのまにか変わったのか。身体がキーンと冷えるような冷たさはなく、でも火傷するほどの熱さはない、心地のいいぬるさ。外の風で冷えた体や、乾燥した空気のせいで傷

    • おじいちゃんのこと

      おじいちゃんが亡くなった。 一昨年かその前に米寿のお祝いをしたから、90歳近い歳だったはず。 持病はなく、亡くなる数日前の夜に体調を崩してそれっきり。 だけど体調を崩した日の昼間は、デイセンターで大好きなカラオケをしていたらしく、それを聞いて少しだけ嬉しかった。 長崎の田舎から上京して大学を出て、内閣府で働いていたおじいちゃん。当時はそんなすごい仕事をしていたなんて、ちっとも知らなかった。 こんな状況だからと、都内にいる私を含めた孫達はお葬式に出ず、地元にいる両親と

      • 失恋して服を作る彼女のこと

        失恋をしたときに、人は何をするだろうか。大泣きをする人もいれば、お酒を飲む人もいるだろう。感傷的な映画を見たり、反対に大爆笑できるテレビを見る人もいるかもしれない。 彼女は服を作った。 彼女が失恋をしたばかりのころ、たまたま二人で会う機会があった。失恋の感想として、彼女は「どうせなら触ってほしかった」と言っていた。その言葉に悲しいくらい共感できて、私は「わかる」と言った、らしい。正直、記憶にない。 その1年後、彼女はその時の気持ちをもとに服を作った。 タイトルは「おっ

        • 「つづける」覚悟を持った服

          「せめて100年続くブランドに」  東京都現代美術館で開催されている、ミナペルホネンの展示会の冒頭の文章には、ブランド創設時のデザイナーの想いが書かれている。  「つづける」覚悟とともに始まったブランドの、「つづく」という名の展示会。  そこでは、デザイナーの哲学や服飾技術といったブランドサイドの紹介だけでなく、作られた服がデザイナーやブランドの元を離れた後にも、そこに込められた思いが続いていく様子が見られる構成となっている。  展示会の途中、服を着て暮らす人々の

        コーヒー屋さんの白湯

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        記事

          すぐに正解が出ないことに向き合う力

          4年ほど前から生け花を習っている。習い始めて1年がたち、2年がたち、3年がたち、時間はどんどん過ぎるのに、自分の技術はなかなか向上しなかった。週に一度のレッスンで花を生けるたびに、自分が生けた花と、先生が生けた花を比べて落ち込む日々。先生にあって、私にないもの。考えても見つからない答えを探して、レッスン帰りはいつもうだうだと悩んでいた。 そんな、数年考えても見つからなかった問いの答えが、21_21 design sightで開催されている㊙展で見つかった。 この展

          すぐに正解が出ないことに向き合う力

          少しだけ背伸びをする人生

          中学生か高校生くらいの時にぼんやりと思い描いていた夢は、ハイヒールを履いて颯爽と歩く女性になることだった。成し遂げたいことや、なりたい職業なんてなかったのに、なぜかそんな女性の姿だけが憧れとして頭の中にあった。 それが理由かは分からないけど、いつも少しだけ背伸びをする人生を歩んでいる気がする。 受験の時の志望校は自分の実力より少し頑張らないといけないレベルにしたし、ファッションやメイクはその時の自分にフィットするものよりも、少しだけ先の未来に「こういう自分でありたい」とい

          少しだけ背伸びをする人生

          視覚以外で感じるアート作品- more than reason

          銀座のLIXIL GALLERYで隈研吾•山口一郎(サカナクション)•森永邦彦(ANREALAGE)の3名が、音楽の垣根を超えたコラボ作品を展示している。 会期が明日24日までということで、滑り込みで作品を見ることができた。 作品のテーマはタイトル「more than reason」の通り、意味を超えたもの。 展示は足だけが見えるマネキンに、スカートのようなヒダのある物体がかぶさっているものだった。それが黒と白の二つ。 ただ、そのスカートはウエストで一度細くなった後

          視覚以外で感じるアート作品- more than reason

          国立新美術館で考えた、余白のある展示

          国立新美術館で開催されている「話しているのは誰?現代美術に潜む文学」という展示会を見てきた。 参加アーティストは6名で、文学の要素を反映する作品作りが特徴。文学というタイトル通り、作品単体で見る面白さだけで無く、作品同士の結びつきの中から大きな物語が見えてくるような展示のされ方をしていた。 中でも小林エリカさんの展示がとても印象に残っている。作品のテーマは戦争、核。 核燃料のウランで作ったドルの模型、1940年に開催される予定だった東京オリンピックの聖火の軌跡、「彼女た

          国立新美術館で考えた、余白のある展示

          塩田千春展を見て

          三連休の初日に、森美術館でやっている塩田千春さんの展示を見てきた。 「不在のなかの存在」というのが、彼女の作品に一貫したテーマらしく、繋がりや記憶、不安など、認識はできても視覚で捉えられないものを、絵画やインスタレーションとして表現しているそう。 部屋全体を赤い糸が埋め尽くすインスタレーションは視覚的にとても強烈で、多くの人が写真を撮っていた。(私もその1人だけど) そのなかに、作品を背景にした自分のポートレートを撮っている人もいた。笑顔だったり、糸を自分を縛る何かに見

          塩田千春展を見て

          ポルトガルで10年前の答え合わせを

          毎年恒例、夏休みの海外旅行。2019年はポルトガルに行ってきた。 「ポルトガル?良さそうだね。で、何があるの?」ポルトガルに行くことを伝えたとき、人からさんざん言われた台詞がこれ。 確かに、フランス、イタリア、スペインなどと比べると、超有名な建築物があるわけでもなく、すぐに頭に浮かぶ料理やブランドがあるわけでもない。 だけど訪れてみると、のんびりした街の空気や、親切な人々含めて、魅力的なものがたくさんある国だった。 そもそも、私のポルトガルとの出会いはこれ。 陸路で

          ポルトガルで10年前の答え合わせを

          本に誘われ、ロンドンでジンを一杯

          2019年8月7日から9日までロンドンに行ってきた。 お盆休みに友人たちとポルトガルへ行く予定だったので、その日程に無理やりくっつけての弾丸旅行。               そうまでしてロンドンに行きたかった理由は、ロンドンでジンを飲みたかったから。ただ、それだけ。 ジンとの最初の出会いは、山田詠美さんの『放課後の音符』。(装丁が変わったのを知らなかった) 今より少し前の時代の女子高校生が体験する、甘酸っぱくて、でも少し寂しい恋愛が描かれた短編集。その中の1篇に

          本に誘われ、ロンドンでジンを一杯