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5分間ロマンス

チャイムが鳴って みんなで帰りの挨拶 掃除が終わって ようやくあなたと 部活行かなきゃなんて言って 2人で音楽室へ あと5分 静かな廊下をふたりきり 今だけはまるでベルベットの階段 5分間の距離を あなたと歩くの

    • 言葉にできない、を言葉にして

      映画でも演劇でも音楽でも、作品の感想を伝える時に「言葉にできない」と言うのは甘えだと思っていた。自分が作り手だった経験があるからこそ、作品の作り手に対する最大限の感謝と敬意を表すためにも、感想を伝える努力を放棄してはいけない と感じていた。言葉にできないんですけどめっちゃ良かったです!と言ったら、それで終わってしまうじゃないか。諦めたら試合終了。感動を生み出してくれた作り手に、受け手の思いが届かない。 ところで私事だが、私が長年愛してやまないバンドのライブに行ってきた。

      • 消失を流す私たちの親指

        友人のお父さんが亡くなったと、SNSを通じて知った。まだ50代、突然の知らせである。 死っていうのは、概念としては全く消えてしまうことを示すけれど 物理的な意味では、人は死んでも動かない体が残る。 消えたと思うのに消えていなくて、 消えていないのに元に戻らない。 一連の投稿を見ながら、私はそんなことを考えていた。 しかし友人の投稿の合間には、他の人たちの楽しげな投稿が入り込む。 何日かすれば、友人の泣こうにも泣けない戸惑いを含んだこの文章も、どんどん流されて見え

        • コップ1杯の海

          背を向けた椅子 少女が出てくる腰掛け、背もたれに腕を置く 腕の上に顔を置き、ぐったりする少女 顔を伏せる 顔を横向け、空を見つめる 海が 海が見えないの 後ろの方に元から座っているもう1人 片手に本を持っている 手元に目をやったまま 海? そう 海が見えない だってここは陸だから そう ここは陸だから 海は見えない 海は遠いところにあるから 見えない 海が見たいの? そう 海が見たいの 海の方へ行けばいい 顔を伏せる少女 行かないの? ここで 海が見たい

        5分間ロマンス

          優しさの因数分解を

          好きな人のタイプを聞かれて、優しい人 と答えていた時期がある。 優しさ、大切だ。男だって 女だって 子供だって 大人だって、皆 優しい人が好きだと思う。 あるとき 好きなタイプを問われ、いつものように 優しい人 と答えた。ちょうどその場には私の好きだった人がいて、その人が自分の想いに気づいてくれたらいいのに、と思っていた。 その人はとても心使いが細やかだった。自分が人知れず辛い時には、その人だけが声をかけてくれた。誰もが認める 優しい人 だった。好きなタイプ に対する私

          優しさの因数分解を

          通学路、もしくは巨大なプラネタリウム

          久しぶりに小学生の頃通っていた道を歩きました 前に地元へ帰ったのは最近でしたが あの道を歩くのは数年ぶりでした あの頃あった不思議な喫茶店は今も残っていて あの頃あったお家のいくつかは駐車場になっていました 世界の背丈が縮んだようで あの頃を思い出していると言葉がどんどん溢れてきますが かつてわたしがどんな言葉を思い浮かべて歩いていたのか、思い出すことはできません 友達のおばあちゃんが住んでいた集合住宅と、家の周りの坂道だけは 今も変わらず私にとってはとても大きく 超えられな

          通学路、もしくは巨大なプラネタリウム