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HR豆知識④5分でわかるOKR(基礎編)

(・・・大好きなスラムダンクからお借りしてきました)

One for ALL, ALL for One

OKRの最大の効果は、一言で言えば「One for All, All for One」という状態を作り出すことができるという事。古くからはインテル、最も著名なものではGoogle。そしてビルゲイツ財団、YouTube、Adobe、ズーム・ピザ、ミュージシャンのボノなど。多くの組織で使われている目標管理制度の手法です。

今回のブログは、前回「明日から使えるHRとしての目標15選」の中で、「HRはビジネスに貢献できる」という事を書き(いいねして下さった方、有り難うございます)、こんなありがたいコメントを頂戴したからです。



参考になります。会社のビジョンに対するプロットが視覚的に表現できて、経営陣と合意できておくと進めやすいですね。




ということは、結局は、

従業員満足度調査って何のためにやっているの?

という質問に対して、

会社の組織目標である●●を達成するためです。

ときちんとHRが言える状態が必要だという事だという事です。

私はその手法として、OKRは最適だと思っています。

OKRの前の概念 MBO(マネジメント・バイ・オブジェクティブス)

ちなみに、OKRを理解する上ではMBOの理解も有益ですので少し振り返ります。目標管理制度というと、OKRの概念の前はMBO(マネジメント・バイ・オブジェクティブス)が最も有名でしょう。MBOの生みの親は、ピータードラッカー。1954年出版の「現代の経営」にて、MBOを「目標と自己統制による管理」の手法として定義づけています。彼はこんな考え方を発表しています。

・企業は、労働者を利益を生み出す機械として捉えるのではなく、信頼と尊敬に基づくコミュニティであるべき
・企業は、「個人の強みと責任感を発揮させつつ、同時に全員のビジョンと努力の方向性を一致させ、チームワークを醸成し、個人の目標と全員の幸福を調和させること」が目標の達成確率を最も高める手法だ

従って「人間らしい目標設定をしよう」という事が彼のもっとも意図したところです。しかし、残念ながらMBOという仕組みでは以下のような弊害が生まれていました。

(1)私たちはどこへ向かって仕事をしているのか、という虚無感
(2)あそこの部門はほんと何もやってない、という非協力的感情
(3)結局売上を上げればいいんですよね、という意義のない数値目標
(4)目標の設定と評価に恐ろしいほどの時間を使う無駄感
(5)リスクを取ることがマイナス評価につながるイノベーションとの矛盾

OKRとは何か

OKRとは、Objective(目標)・Key Results(主要な結果)の略語であり、上記のような項目で整理をしていく目標の事を言います。わかりやすいように、例えばプロ野球チームでOKRを実践したとしましょう

図4

図5

図6

如何でしょうか。ポイントに気づきましたでしょうか。


目標に連動性がある」のです。


GMから監督から打撃コーチ、投手コーチ、守備コーチ夫々の目標がひとつになっているのです。従って、OKRの手法による最大のメリットはつながりであると言えます。

全体像で見てみるとこのような形になります。

図3

では、具体的にその作り方のポイントを書いていきます。

OKRの作り方

(1)経営目標から、目標を書いてみる

目標を設定する上で、「目標(Objective)」と「主要な結果(Key Results)」の因数分解と測定可否でしょう。因数分解のひとつが「経営目標と連動させる」ことです。

図5

経営陣が経てている目標からHRの目標を考えましょう。労働生産性・労働分配率が大きな目標になるはずです。この観点では、HRとしてのミッション(存在意義)と役割を改めてご認識頂くといいと思います。

話を野球の例に戻しましょう。

野球というスポーツは比較的因数分解が簡単で、得点するか失点するかの主要な結果を定めればよい(上記1と2)のです。更に、平均防御率というのは自責点ベース、即ちエラーによる失点を含みませんので、このエラーの指標である守備率というものをKRに定めます。

これを例えばHR(採用責任者)の目標に置き換えるとこのような形になります。仮に、経営陣が「利益を生み出す組織体制」という目標を設定したとします。以下のような例が目標になります。

図1

ここで重要な点は、どのくらいできたか?という進捗を管理できる目標にすることです。逆に以下のような目標はあまり良い目標とは言えません。宜しくない例は以下のようなKRです。

(あまりよろしくない例)

図7

強化するという事は抽象的な言葉であること、また採用HPの刷新は本来エントリーやリテンションを改善していくための手段であることから、成果を測定する事ができません。従って、主要な結果を完了すれば必ず目標は達成されることが重要なのです。

ちなみに、GoogleのOKRマニュアルにおいては、以下のようなポイントが書かれています(一部抜粋)。

目標=「何を」
・ゴールと意図を示す
・野心的だが、現実的である
・具体的、客観的で、曖昧さがない。第三者から見ても目標達成度が容易にわかること。
・目標の達成が組織に明確な価値をもたらすこと

主要な結果=「どのように」
・測定可能なマイルストーン、目標達成と連動している事
・活動(行動)ではなく、成果を書く(NG:相談する、分析する、参加する)
・完了したエビデンスを明示する

他にも営業としての目標例(BAD&Normal&Good)を挙げておきます。

図8


(2)目標を絞り込んでみる(6個以上つくらない)

スティーブ・ジョブズは、「イノベーションとは1000個の提案に対してノーと言い続ける事だ」と語っていたそうで、OKRにおいても3個から5個までのKRを定める事が理想的だと言われています。

これは、フォーカスする・コミットすると力を弱めてしまうからであり、Googleのラリー・ペイジはこんな言葉で目標を絞り込むことの重要性を表現しています。


勝利する組織は、少ない矢を全身全霊で射つ


この絞ることの重要性は、脳科学的にも共通する部分があり、チャンク化することと類似しています。少し実験してみましょう。

「3659238362を10秒間で覚えてください」

という実験があったときに人は塊り(36 59 23 83 62)で覚えたほうが記憶力が高まります。15個の選択肢よりは、3個の選択肢の方が意思決定しやすいのも似ている。従って、OKRの目標も少ない方が、ヒトの記憶力を高めたり、コミットメントを高めやすいというのも頷けるのではないでしょうか。

参考:最高の脳で働く方法 Your Brain at Work

従って、経営陣が立てた目標(KR)をブレイクダウンし、HRとしての役割の中で3個から5個の目標(KR)を設定していく事が重要なポイントです。

(3)野心的目標とコミット目標

なお、上記GoogleのOKRマニュアルにも記載の通り、OKR内の目標には二つの考え方があります。

・野心的目標(達成率70%でOKとするもの)
・コミット目標(達成率100%でOKとするもの)

これは従来のMBOの問題点であった「もし仮に目標の100%を達成できなければ報酬が下がることにより、ヒトはリスクを回避するようになる」という問題点を解消します

この野心的目標は「ムーンショット」とも呼ばれ、イノベーションを起こしていくためのヒント、とも称されます。従って、目標を設定する際はきちんとこの両方を整理しながら作成する事が重要です。

まとめ

・OKRは「One for All, All for One」の為のツール

・従来のMBOの要素である数値目標に加え、組織全体で目標をつなげる事で、組織の目標が合理的でありながらも一体感を生み出す目標となる

「HRが設定する目標」と「会社が設定している目標」のつながりを言えるようにしよう


気合い入れて書いてみたらとっても長くなってしまったので、2回に分けて書いていこうと思います。次回は、OKRをうまく運用するために重要な点について書いていこうと思います。


少しでも皆さんの参考になっていると嬉しいです。。
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参考:Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR


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