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UC Berkeley Business Schoolからの手紙⑪(報酬制度の原則)

もしあなたが自由に決められるとしたら、あなたは自分の給料をいくらにしますか?また他の社員の給料をいくらにしますか?

ア:感覚的に
イ:隣にいる人と同じ金額に
ウ:隣にいる同じ職種の人と同じ金額に
エ:同業他社の賃金と同じ金額に
オ:会社の経営状態次第で変化させる

1. 報酬制度の原則

賃金というものは、人事として働く方々にとってみれば非常に複雑な問題です。自分事でもあり、会社事でもある。しかも、それ次第で社員のモチベーションダウンを招いたり、現場からの不満につながります。様々な企業様のお話を聞いても、報酬制度をどのように組み立てていくか、悩まれている企業様は多いです。だからこそ、原理原則を学ぶことはとても大事だと思うのです。

Business Schoolでは以下の5つのポイントを抑えましょう、と教わります。

1) 高業績者に高い報酬を与え、低業績者に高い報酬を与えない
2) 高い報酬の可能性を明確に示す事によってトップクオリティ社員を組織に引き付ける
3) 期間的な報酬戦略(ストックオプションや退職金など)を通じて従業員を維持する
4) 正しさと公平さは、事実(金額)ベースではなく“認識・知覚ベース”で生まれる。したがって、経営者は社員の認識・知覚を管理しなければならない。
5) 経営者が報いるべきものは、経営者が得たもの。それ以上でもそれ以下でもない。

2. 報酬の形態

(1) 基本給:
あなたが“働く”事によって、(ほぼ自動的に)得られる金額(時給、給与)

(2) メリット・ペイ:
仕事の成果(パフォーマンス)の対価として増える給料(通常は年収のXパーセンテージなどの計算式)

(3) 個々のインセンティブ/ボーナス:
個々の従業員によって創られた特定の行動、または就業成果に結びついた金銭(勤続X年、クロスセル)

(4) 利益分配:
組織のすべてのメンバーに報酬を与えるために設定される全社利益ベースの報酬。会社が特定の目標(例えば、各人に10%のボーナス)を達成できるように設定される。

(5) ゲインシェアリング:
コスト削減またはビジネス活動の合理化によって達成された利益のパーセンテージを、組織のすべてのメンバー、またはコスト削減をもたらした特定の個人またはチームに支払われる報酬(コストが100万円減ったので、利益が100万円上がる。そのうちの10万円を報酬として支払う、など)

(6) 株式保有:
通常、株式の一定数の株式を職務遂行に基づいて付与するが、在任期間に適用できる。個々の受取人への株式価値は、その日の株式の市場価値となる。従業員は株式を売却し、純付加価値を保持することができる。

(7) ストックオプション:
ストックオプションが付与された日の価格で株式の会社株式を購入するオプションの付与。オプションは権利確定スケジュール(通常は4年間年間権利確定権利の25%)を有し、権利行使期間(通常はオプションを実際の株式に転換するために7年)を有する。ストックオプションの価値は、オプションが付与された日の株式の価格と従業員がストックを行使して売却した日の株式の価格との間の価値の差である。オプションの所有権にはネガティブな側面はなく、価値があるのかないのかのどちらかです。時が経つにつれて株価が上昇するならば、高い上昇の可能性があります。

ストックオプションとは?

3. どのように基本給を決定するべきか


基本給についての前提となる考え方ですが、「普遍的な価値の基準はなく、仕事の絶対的価値(売上、粗利益など)と相対的価値(同業種との比較など)の差異によって、適切な報酬は決まる」という事を抑えておく必要があります。その上で、以下の4要件をチェックするべきと教授は言います。

法的要件をクリアする -Equal Pay Act、FLSA、FMLAなど
組合契約をクリアする - 団体交渉協定に必要なもの
報酬に対するポリシーを決定する(何を授与できるか、何を授与したいか)
内的公平性 VS 外的公平性(どちらを達成するべきかを選ぶ)

日本での法的要件とは、男女雇用機会均等法最低賃金のルールになります。組合契約は企業によって異なります。

※補足※
1)内的公平性:組織内の相対評価(どんな仕事が企業の競争優位性と利益を生んでいるか?営業?オペレーション?管理職?スタッフ?)から、内的に公平な賃金階級を決める
2)外的公平性:マーケットとの相対評価(他企業が同じ仕事にいくら支払っているか)から、外的に公平な賃金階級を決める

企業によって資本の規模感が異なるため、社内外双方で公平性を保った報酬制度を構築する事は非常に難しいと言われます。

外部公平性は、採用や定着の難易度が高い場合に適した考え方であり、内的公平性は、求められるスペックが相対的に低く代替可能な場合に適している。

4. どのように賃金制度を作るか?

さて、では賃金制度を構築するにあたってのプロセスをチェックしていきましょう。

(1) ベンチマーク企業に関する給与の調査を行い、同じ職種に対して競合企業がいくら支払っているのかを確認する。
(2) 1つの組織内の仕事を定義づけるため、補償可能な要素(賃金でない提供できるもの、例えば居住区に伴う生活水準など)を特定する。
(3) 調査中の仕事に相対的価値を割り当てるための職業評価を行う。 其々の仕事に価値を割り当てるため、職業評価方法を選ぶ
(4) 同じように評価された仕事を賃金等級にグループ分けしてから、相対的価値に合わせる
(5) 賃金曲線を確立することによって、各給与等級に価格を付ける
(6) 賃金率を微調整する、または異常値を修正する

如何でしょうか。日本では”一律”の賃金が多いです。しかし、より合理的に考えれば、居住区やその社員を取り巻く環境によって、同じレベルの生活水準を達するために必要な賃金は異なります。

従って、例えばの例ですが首都圏に住むかそうでないかによって、賃金レベルが違うということになります。ちなみに私が住んでいたサンフランシスコは家賃がシェアハウスのワンルームで20万円ほど(日本だったら10万円ほどの家です)このレベルになれば、その必要性が理解できるかもしれません。


5. どのように賃金制度を作るか?

繰り返しになりますが、もしあなたが自由に決められるとしたら、あなたは自分の給料をいくらにしますか?また他の社員の給料をいくらにしますか?

ア:感覚的に
イ:隣にいる人と同じ金額に
ウ:隣にいる同じ職種の人と同じ金額に
エ:同業他社の賃金と同じ金額に
オ:会社の経営状態次第で変化させる

質問に絶対の回答はありません。ですが、ウ&エが基本原則です。オはアと同様の意味を持ちます。

賃金を決める際には内的公平性(組織内での公平性)と外的公平性(マーケットとの公平性)を加味する」だったり、「正しさと公平さは、事実ベースではなく認識・知覚ベースで生まれる。したがって、経営者は社員の認識・知覚を注視しなければならない。」これはとても大事だなと思います。

例えば、定期的にマーケット調査を行い、年齢や職種やポジションに応じて、外的公平性を保てているかをチェックする事や、その賃金に対して社員が何を感じているかを把握すること。社員の賃金は妥当か、公正か。この判断軸は感覚的判断(なんとなく)ではなく、深く考えるべきテーマです。

従って、具体的なアクションとして考えられることは以下の通りです。

① Agent(人材紹介会社)に競合他社の給与条件を確認する
② 社員に対して、ほかの社員と比較をした「給与に対する公平感」を確認する
③ どちらを優先させるかを決める

特定の理由がない限り、人間の欲求には限りがありませんので、「十分かどうか」ではなく「妥当だと思えるか否か」がポイントなんではないかと思います。「十分」という言葉は、外部環境を考えずに2億円欲しい!なんて思いがちですし、「妥当」というものは置かれた状況に対しての比較を考えると思います。

いずれにせよ個人によって、様々な状況が考えられますので、どのようなケースでいくら必要な場合は企業としてはあきらめる、というような境界線も必要になってくるかと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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