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UC Berkeley Business Schoolからの手紙⑮(ハラスメントの原則)

さて、今回はハラスメントについてです。

「もしあなたが会社の管理職で誰か関係を持ったら、どんな理由であれ、どんな経路であれ、ハラスメントの対象になるのよ」

という事を教授が言ってました。

アメリカでは、このトピックもきちんと授業の中で取り扱っていきます。日本とその定義や法的な考え方が異なりますが、アメリカではどのような考え方をしているものか、シェアしていきたいと思います。

アメリカでは、Google、Uber、Facebookなどなど、多くの企業がセクハラを理由とした人員解雇を行っており、また、2018年頃から話題になったMetooなどの社会的な運動もいまだに強いパワーを持っています。Metooなどの社会的な運動もいまだに強いパワーを持っています。

これまではの対策の一般的なモデルは「企業内に対策室を設け、仲裁にはいること」でした。しかし、少しトレンドが変わってきています。

企業内の対策室は、事象の透明性を担保することや被害者側が不利になることもあり、Facebookなどは「対策室をなくし(仲裁をやめて)、法的判決を最優先にする決断」を進めています。

日本はあくまでも企業内で解決する事が主流になっているかとは思います。アメリカは、個人と弁護士との距離が近い(ような気がする)ので上記の判断も現実的でより公平なプロセスのように感じます。

1. ハラスメントに関する原則

・雇用者は「セクシャルハラスメント」と「脅迫」のない職場を維持する支援的な義務を負う
・セクシャルハラスメントとは、「性的かつ嫌悪的な言葉遣い、視覚的または肉体的な行動」を示す
・被害者は、同性も対象となる
・尚、必ずしも性的なものとは限らない

日本でも定義がありますが、厚生労働省にて発表されている資料の中から見るに、非常に複雑です。とはいえ、日本のルールですのでご一読いただくことをお勧めします。特にパワハラと呼ばれる領域は、「部下・同僚の制度利用に関してどのような発言があるか」によって、パワハラと認定されることがあり、非常にセンシティブな領域だと思います。

発言例

2. 「不快感」という感情がハラスメントのすべて

ハラスメントに関する原則として、以下7つのポイントをおさえましょう。

「不快感」という感情がハラスメントのすべて
意図の有無、場所に拘わらず、ハラスメントの対象となる
同意した上での関係でも、性的嫌がらせに変わる可能性がある
監督者、部下、同僚、ベンダー、請負業者、顧客、応募者も加害者となりうる
”合理的な女性”という法的な判断基準
・非常に複雑かつ曖昧なテーマである為、ハラスメントに関するトレーニングが必要である
・である事象が起きた後の救済措置が非常に重要である

重要なポイントは、意図の有無・オフィス内外に拘わらず、ハラスメントの対象となりうるという事です。

日本においても、厚生労働資料にてハラスメントについては業務上の必要性に基づく言動はそれに該当しないと定義づけられていますので、こちらも覚えておく必要があります。

業務上

3. Quid Pro Quo&Hostile Work Environment

セクシャルハラスメントには大きく2種類存在します。

Quid Pro Quo (管理監督者が、労働環境下でのメリット"昇格・降格の取り消し"などを与える代わりに、性的メリットを得ようとするもの)
Hostile Work Environment(役職問わず、仕事で関係する全ての人々が対象となり、特定の人が不快に感じる働きをしている環境)

Quid Pro Quoは言い換えれば上下間の関係性があり、Give and takeを脅迫的に行うもので、例えば雇用継続や昇格を条件に、性的なメリットを得ようとする行動がそれに該当します。

Hostile work environmentは、関係性は関係なく、視覚的、口頭、身体的に不快な行動をしている場合に該当します。

更に具体的な例はこちらです。

<Quid Pro Quo>
・望ましくない性的な進展 ※断られても何度もデートに誘う、など
・性的要因と引き換えに雇用的メリット(昇格など)を提供する
・性的な進展への否定的な反応の後に報復をする、あるいは脅迫する

<Hositile Work Environment>

・視覚的行動:性的な目で見る事、性的ジェスチャーをなすこと、性的示唆のある物や写真、漫画やポスターの表示
・口頭による行為:個人の身体に関する軽蔑的な論評または発言、個人を説明するために使用される言葉の性的嫌悪、示唆的または猥褻な手紙、メモまたは勧誘
・身体的行為:接触する、暴行する、妨害する、または妨げる、動き

4. 組織内で権力を持つ人たちがハラスメントの加害者となった場合、大きな経営リスクを背負う事となる

監督者/マネージャーがハラッサー(セクハラをする人)である場合、経営者は厳重な責任を負う
同僚がハラッサーである場合、経営陣に情報が提供され速やかな救済が実施されたかどうかに応じて、補償、損害、雇用喪失、懲役刑が発生する。

冒頭の各社の例のように、ハラスメントは企業にとって大きなリスクとなります。ここからわかることは、組織内で権力を持つ人たちがハラスメントの加害者となった場合、大きな経営リスクを背負う事となる、という事です。だからこそ、組織としてハラスメントに対する対策を行っていく必要があるのです。

5.Reasonable Woman Standard

しかし、ハラスメントの証明は簡単ではありません。

何がセクハラと判断されるのか、ということに対しては、「第三者目線(Reasonable Woman Standard)」という考え方があり、客観的な目線で事象を見たときにセクハラに相当するのか、ということが基準になります。

勝手な推測にはなりますが、このReasonable Woman Standardについても、近いうちにWomanという言葉がなくなるのではないでしょうか。ハラスメントは女性のみを対象にするものではなく、LGBTQなどからも性別という物は多様化していきます。そうなると、このWomanというものは一種の偏見であり、この言葉がなくなることは必然かと思います。

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