あたしたちは、全員金髪で生まれればよかった

あたしは、学校の「髪染め禁止」の校則に逆らってどうにか髪を染めようとしてる高校生でもないし、20歳の成人式で金髪で市役所会館かなんかで暴れて成人を祝う若者でもない。言っておくと、成人式で暴れるのは良くないと思うけど、金髪で出席しようがピンク色の髪で出席しようが、ステキだと思う。

でも、黒染めしないと修学旅行に行けない高校生がいるという事実は、正気ではないと思う。いつかのネットニュースで見たけど。

あたしの高校ももちろん、染髪は禁止だった。しかもそのうえ、「地毛証明書」とかいう恐ろしい証明書があり、髪の毛がもともと黒ではない人は、「この子は生まれた時から髪の毛が黒ではありません。それゆえ黒ではないこの髪色で学生生活を送ることをどうかお許しください」という書類を親に記入してもらい、担任に提出するという、決まりがあった。学校で決められていることになると、逆らおうとしなかった自分が恐ろしくもある。

しかし最も恐ろしいのはこの地毛証明書ではないと思う。髪の毛が黒であることが学校の方針で絶対であり、元の髪色が何色であろうと黒髪を維持しなくてはならず、その方針に対して高校時代、あたし自身が何にも疑問を持てなかったことだと思う。

高校在学中に、仲の良かった先生になぜ髪の毛を染めてはいけないのか、聞いてみた。もちろんその先生はあたしが反抗したがっているのではなく、ただ単に疑問に思って尋ねているのだと理解してこう答えてくれた。「なんでなんだろうね、(笑)」と。

生徒に対して、髪の毛を染めないでと指示する先生も、実際にはなぜ髪の毛を染めてはいけないか、の答えなんて知らないんじゃないだろうか。ちなみにこれは余談だが、あたしの高校は、天パの子がストパー ( ストレートパーマ ) をかけることは許されていた。それは髪の毛がくるくるしていることがコンプレックスであり、ストパーでそれが直せるなら、ということだとその先生が教えてくれた。それもそもそもおかしいと思うので、後々言及しようと思う。

髪の毛を染めてはいけないことに理由なんてないだろうとはっきり言いたい。理由が言えないのは、理由なんてないからだと思う。

たまにこういう主張をする先生を聞いたことがある。全校生徒の髪の毛が黒ではないことで、学校の「和が乱れる」とか、「規律が破られる」とか。理由がないから、それっぽい理由を言って、生徒を丸め込もうとしてるようにしか、あたしには聞こえない。今となっては。しかも和ってなに??日本人が全てを、なにもかも犠牲にしても守り抜く和ってなんなんだろう。

なにが言いたいかまとめようと思う。多数派になることが正しくて、とりわけ見た目の話になると、揃っていることが美しい、同じであることが綺麗、そんな思考をあたしは美しいと思えないし、はっきり言って、うんざりしている。なくなればいいと思う。

だからあたしは日本人としてのDNAを少しばかり恨んでいる。もし日本人という人種が、ひとりひとり違う髪の色で生まれたとしたら、きっとあたしたちはそのままでいい。みんなの髪色を揃えて画一にすることに意味がないことに気付く。欧米や他の国のように。

あたしたちのDNAはたまたま、髪の毛の色をこれ以上に暗い色のない黒を選び、そして多くの人がこの色の髪を持つ。それゆえ少し異なるDNAを持ち、髪の色が異なると多数派になることを強制的に強いられる。それをしなくてはいけない意味が、あたしには見出せない。

天パとストパーの話に戻ろう。あたしの高校時代のある先生は、「天パがコンプレックスの子がいるから、ストレートパーマをすることは校則に違反しない」と言ったが、人がどんな髪型をコンプレックスに思うかなんて、他人が口出しできるものだろうか。天パをコンプレックスに思う人もいれば逆に、生まれてからずっとストレートの子で、パーマをかけたい、ストレートがコンプレックスだ、という友だちはいる。

髪の毛というものは、ストレートかパーマかで、髪の毛量が軽く見えたり、逆にボリューミーに見えたりする。元々の髪質や毛量は人によって違うので、自分の好みの髪の見た目を演出するには、何か手を施さなければ、その理想に近づけない人ももちろんいるわけである。「天パからストレートにすることは許す」というのは、人々の髪型の「普通」を勝手に「ストレート」と決めつけ、そうではない人は、その「普通」に戻るために手を施せるという意味と取れる。髪の毛に普通なんてない。クルクルでもあり、ストレートでもあり、ニョロニョロでもあり、チリチリでもある。人の髪は人間が生まれた時に生えて、老いれば色は変わり、抜け落ちる。それ以上でも以下でもない。

あたしは美容師ではないのだが、髪の毛についてこんなに長く書いてしまった。なにか事実と違うことがあれば是非教えてください。

冒頭に、あたしは校則を違反しようと企むティーンエイジャーではないとはっきり断言した。しかし、あたしは、あたしたちのような若者や学生たちを地味な黒色で統一させようとしてるという凝り固まった考えをする大人たちの画策にのりたくないと、少し子どもっぽいが、本気で思っている。

このまま日本が「大多数に揃えることが良い」とする社会でいる限り、どんな色だろうと、大多数に揃えると思う。だからタイトル通り、こう思うのだ。「ほとんどの日本人が金髪で生まれてしまえばいい」と。ほとんどが金髪なら、黒髪の人はブリーチして金髪にさせられる。どうだろう。偏差値が高い、低いは関係ない。どんな中学も高校も、登下校中や朝礼中、とんでもないヤンキーやギャルたちばかりだ。おもしろすぎる。ギャルやヤンキーが嫌いな学校の先生、ざまあみろ。もっとも、みんなが金髪の時代は、逆に黒髪の人がヤンキーやギャルとされるのかもしれないが。

でもあたしがいちばんに望むのは、どんな髪型でも髪色でも、縛られずにありのままで生きていける社会だけどなあ。

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