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仙台

 思えば、遠出という遠出をしていなかったことに気づく。2020年の夏に香川旅行を開催した以来、近畿圏内から脱出していない。留学を真剣に考えていた男が何をしている!と自分に憤り、腐れ縁の親友おふたりに旅行を企画した。私は東京を企画したが、男3人で東京のチームラボなど行ってどうするんだ、バチェラージャパンに出ていた女性のパン教室など行って何になるんだ、など波乱の話し合いを経て、行き先は仙台へ決まる。人生初の宮城旅の幕が上がる。

有意義な移動を楽しむ。

 企画したのは私だが飛行機・旅館の確保は"Tさん"という今回一緒に旅に出たうちの1人が全てやってくれた。感謝しかない。私はタイムスケジュールを簡単に作成しただけであるどころか、ちょっと寝坊する始末だ。

 遅刻者の私は単身、大阪市内から関空に向かう。時間的余裕はあったが、特急に乗りたくなった。「遅刻したからこそ乗れる!」という意味不明なポジティブシンキングで、切符を購入。香川に行った時には新幹線・特急を一切使わなかった私も変わったものだ…と2年前の自分に思いを馳せる。あのときの同行者を務めてくれたあなたへ、私はお金にずいぶんと寛容になりましたよ。
 特急はとても快適だった。朝井リョウのエッセイ「時をかけるゆとり」を読み進める。ちょうど読んでいたエピソードのタイトルが「旅行を失敗する(その2)」だったという、縁起があまりにも悪い幕開けになったことは忘れられないけども
。イヤホンから流れるDISH//の「沈丁花」が、故郷を去り新しい街で頑張る自分の背中を押してくれている(ただの旅行だけど)。気づけば関西国際空港に着いていた。

 無事ふたりと合流したのも束の間、手荷物の重さが7kg以下ではならないという衝撃の事実を知る。サブバックを2つ、重めのパーカー、ボードゲームなど、ギリギリいらんと判断されるものを大量に入れていた。若かりし頃、筆箱に入っていた、なけなしの小遣いで買った高級コンパスを飛行検査場で没収されるというトラウマを持つ私は、鋭利なものにこれほどまで注意していたのに…爪が甘かった。重さを測定すると、6.6kg。なんとかギリギリセーフで搭乗。お土産は、軽量重視で行くと決めた。
 酔い止めを服用し忘れるという痛恨のミスを犯しながらも、スマホで機内食を注文したり、その航空会社の特別コンテンツを観て噴き出すほど笑ったり、約3年ぶりの飛行機を謳歌していた。途中、気流のせいで、ウィザーディングワールドオブハリーポッターくらい揺れたが、それすらエンタメと感じられるくらい、この旅にワクワクしていた。

HPの画像です。美味しそう…!
注文した「炙り牛スープ」まさかの形態で登場。
コーヒーSとの注文ミスと疑ったが、中身は💮

仙台は「食べる」街

 この旅の1ヶ月前、大学図書館で「仙台・松島」の「るるぶ」を借りた。他に借りたのは、レポートで使った社会学的な学術書ばかりだったのもあり、「あ、この生徒はフィールドワークに行くのか」と司書さん達を欺くことに成功した(自信はある)。
 この「るるぶ」を観て驚いたのはとにかく「食べる」スポットを推してくるのだ。1泊2日しかないのと言っているのに。牛タンだけで3ページも…。海鮮も食べたい、え?鍋もあるの?よ、米沢牛…仙台駅の吉野家は米沢牛とか使ってたりしないかな?と、愚かな考えをし始めるくらい、本当に困る。"Tさん"がこれを食べたいと提案してくれたのが救いだった。もし一人旅だったら、悩みすぎて日が暮れ、結局特産物を食べずに吉野家に行っていたのは目に見えている。
 飛行機から降りて、私の趣味である空港探訪にふたりを付き合わせてから、レンタカーを借り、"Tさん"の運転。風が気持ちよくて、車線も空いていて、快適極まりないドライブを味わうと、あっという間に昼食会場に着いていた。たくさんの丼ぶりがある。豪華絢爛な「海鮮丼」、私の大好物カニがたっぷり「北海丼」、マグロがこれでもかとのった「まぐろ丼」…無理だ、決められない。私のせいで、後ろのサラリーマンの方々の食券購入の遅延行為をしたことをここで反省する。脳内住人総動員の脳内会議を経て「まぐろ丼」を注文することにした。まあ、美味しいのはわかっていた。ただ、わかっていた美味しさを軽く上回ってくる。しかもリーズナブル!関西地方にあったら危ない。毎日通い詰め、常連になってしまう。そして、何かの拍子に食べられなくなったら禁断症状なるものが発生するのは間違いない。伝わらないかもしれないが、これを食べたらみなさんも全く同じ感情を抱くことは断言しておく。と言ったくせに、私の絶望的なカメラセンスのせいでここに載せられないのが本当に悲しい。

こけしの絵付けも体験しました。
左から、私作、"Oさん"作、Tさん"作

 ああ、1人紹介し忘れていた。旅行に行ったのは、私と"Tさん"。そして"Oさん"の中学の同級生トリオである。"Oさん"とは私のかつての隣人であり、私が世界でダントツで1番クレイジーで面白いと思う人間である。この投稿では好青年に映った"Tさん"も2番に位置するクレイジー人間だ。仙台空港で飲んだ「ずんだシェイク」の感想一言目が「えだまめ。」という褒めたのか貶したのかよくわからないコメントをするような"Oさん"という男が、「食べる」街・仙台の大事な大事な夕飯でとんでもないことになるのだが、それは、それとして。

つづく

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