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ダンサー・イン・ザ・マクドナルド

 私のお友だちの話をしてみようと思う。彼はかなり本格的かつ大規模なダンスサークルに所属していて、ダンスもうまいし、悔しいが容姿端麗。私の目には、誰よりも人生を妥協なく満喫しているように映っている。彼とは、ゼミ後にご飯を食べることが多いのだが、そのたびに質問攻めにしてしまう。そして、何かを吸収しようと思っては、キラキラしすぎて、自分はそうなれないと落ち込む。この繰り返し。ただ、彼だってとんでもない努力家で。おまけに優しいし、嘘はつかない。彼女もいる。だから虚勢を張るなんてものじゃなくて、ピュアに生活を楽しんでいるんだと確信している。
 そんな彼と今日もマクドナルドへ行った。フィレオフィッシュを食べながら聞く。「将来、ダンサーになるん?」彼の返事は意外にも「ならない」だった。即答だった。正直面くらった。彼のカレンダーは、ダンスで埋まっていたのに。大規模なイベントにおいても重要な役割を担っていたのに。「まあ、不安定やしな…」と続けていたが、すでに白身魚がのどに詰まりかけていた。将来はダンサーにならないって決めている人間のスケジュールなのか、あれが…と驚きを隠せなかった。しかし、帰りの電車で気が付く。彼は未来のことを考えているからこそ、今を楽しんでいるのだ。どうせ将来ダンスをしないのなら、今のうちに謳歌しまくっておこうということなのだろう。また、落ち込んだ。だけど、少し元気も出た。その考え方なら私でもできる。未来のことを考えているからこそ、今を楽しむ。なるほど。

 とりあえずシャカチキを追加オーダーするところから始めてみた。

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