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仙台(その2)

 もしよかったら、先日アップしました「仙台」も読んでくださいませ。一応、その続きとなっています。そんなん読む時間ないねんというあなたに…私と"Tさん"・"Oさん"3人の仙台旅行について記しているということだけ押さえておいてくだされば、実は今回の内容は読めてしまいます。では、初日の夜ご飯のお話から。

運転する者、しない者

 1日目の夜ご飯は、サークルの同期に牛タン食べるならここに行け!と言われた場所へ向かった。「たんや善治郎」という名店である(らしい)。私は空腹の中、ここでも店頭で数分、店内で10分ほど悩みに悩み、やっとの思いで牛タンシチューを注文した。「美味しい」という4文字では足りない味であった。つい先ほど載せた「(らしい)」という表現は完全に誤ったことを一口目で確信する。加えて、今回の旅の全運転を担当してくれている"Tさん"に多少な罪悪感はありながらも、レモンチューハイまでいただいた。

牛タンシチュー いうまでもなく絶品


 この旅を開催した時点で、運転する者としない者に権力の差が生まれた。そう、今回の旅は全て"Tさん"の運転がなければ成り立っていない。とりわけ運転が好きでない彼がこの役をすることになったのは、恥ずかしい話だが、消去法である。私はそもそも運転免許を持っていない。「彼氏には免許を持っていてほしい!!」と女子大生の90%が思っているという同期の言葉に恐れ慄き、そろそろ取得せねばと気合いは入っていたが、この段階では勿論、間に合っていない。一方で、"Oさん"は運転免許を持っている。なんなら、"Tさん"よりも遥かに早く取得していた。が、彼は頑なに運転を断った。彼は、教習所を卒業するまでにあまりに時間がかかり、「出来るだけ君は運転しないほうがいい」という凄まじい言葉を教官から引き出すだけの逸材であり、運転中に何があったのか知らないが、現代社会の抱える問題と自分の問題を結びつけ、日本人で最も若くして免許返納を検討している男でもあった。そんなふたりと旅に出たせいで、"Tさん"いや、もう"Tさま"に運転を任せられてしまったのだ。
 さらに追い討ちをかけるように、私はレモンハイを頼むし、"Oさん"はビールと焼酎を飲んでいた。ボリューミーな牛タン定食と焼酎は見事にマッチしたようで、"Oさん"は店を出る頃には出来上がった状態になっていた。時刻は18時過ぎ。マスクの下の呂律はもう機能不全だった。悉く面白いことが言えていない、突然、クラウチングスタートをしたがる。まったく、一緒にいるのが恥ずかしい。確認しておくが、まだ18時である。そして、"Oさん"が飲んだお酒はわずか2杯というのがもっと恐ろしい。
 車に戻る。夜の仙台駅周辺は街が生きている。人が街を生かしつつ、街が人を生かしている、少し不思議な街に映った。車では、クリープハイプの「ナイトオンザプラネット」が流れている。MVでも夜の街をタクシーで走るシーンがあるが、夜の街のドライブとまあ合う。牛タンとレモンハイくらいは合う。乗車して3分後、例の男はぐっすり眠っていたので、ドライバーさまと喋りながら旅館へと向かう。この時間はとてもとてもワクワクして、好きな音楽の話で盛り上がった。
 この瞬間、夜の街をひとりで「ナイトオンザプラネット」をかけながらドライブしたくなった。なので、先程の文言は撤回。おしゃれにひとりドライブをしたいので、免許を取りたい。90%の女子大生が云々…みたいな不純な動機を1秒でも持ってしまっていたことは、どうか忘れてほしい。

温泉宿の醍醐味

 私は温泉が好きだ。これまで行った温泉のロビー、昼食会場、部屋、共用の温泉、全て覚えている(ちなみに、小豆島の温泉宿がベストでした)。私が旅館という空間が好きなのもあり、ただただ楽しい時間だった。私の幸せエピソードなど、誰も興味がないと判断したので、ひとり露天風呂に入っていたら、雪が降ってきて、この景色忘れられへんなぁと呟いてしまった話だけしておく。

一晩の間に外は雪景色に。

 お待たせしましたと言わんばかりに悲劇は起こる。夜更かししたせいで、目覚めると、8時10分を過ぎていた。しかも二人は朝風呂を済ませている。起床後1分後には着替えを済ませるというハイパーテクニックで、朝食会場へ向かう。なぜこれほどまで機敏な動きを披露したかというと、私は朝食ビュッフェが大好きなのだ。旅館の醍醐味であり、メインイベントであるとも思っている。露天風呂?いやいや、露天風呂よりも朝食ビュッフェである。なのに、寝坊した。9時までの会場。ゆっくりプレートを作る時間もない…おかわりも出来ないかもしれない…私は焦っていた。人間をされているみなさまならお分かりだと思うが、「焦り」は人に思わぬ行動をさせる。「エビフライを3つも取る」「温泉たまごを3つも割る」という3の妖怪に取り憑かれた行動をとっていたのだ。ウェルカム胃もたれと言わんばかりのエビフライの量と、プレートに玉子焼きあわせ、飽和卵量をゆうに超える量が目の前に並ぶ。それを凄まじいスピードで口に運ぶ(私くらいの早食いの実力者だと爆速でありながらも味覚が最大限に働き味わうことができるのです)。そして、デザートにコーンフレークをヨーグルトでいただく…と、あれ?ヨーグルトがない。これは困ったが、憂いている時間はない。仕方ない、私がお腹を崩してしまう可能性がありながらも、牛乳でいただいた。その5秒後、あんなにお世話になった温泉たまごの隣に「プレーンヨーグルト」の文字が見えた気がした。が、見えていない。きっと、見えて、いない。
 さあ、満腹になった。思い出せば2日目の最初のイベントは「いちご狩り、いちご食べ放題」だ。大阪に帰る頃にはフードファイターになっているかもしれない。そんなことを思いながら、"Tさん"はエンジンをつける。

つづく(次回、完結です)


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