見出し画像

deadmau5「Superliminal」:音に誘われ音に沈んで音の虜になる

deadmau5「Superliminal」は、アルバム『> Album Title Goes Here <』の開幕を飾るインストゥルメンタルです。アルバムに収録された「There Might Be Coffee」が好きでよく聴いていましたが、改めて全体を通して聴いてみて、琴線に触れたのが「Superliminal」です。

重くて厚い音が淡々と響くエレクトロニック・ミュージックです。時間をかけて音が集まり、交わり、重なり、グルーヴを生み出す。少しずつ雰囲気を変えるエレクトロニック・サウンドが聴く人に潜り込み、やがて身体を支配します。ライブが始まるときの期待と緊張が綯い交ぜになった気持ちを思い出します。何が待ち構えている?

「Superliminal」を聴いて湧くのは踊りたい欲望ではなく、さりとてリラックスして聴き入りたくなるわけでもありません。生まれるのは、いうなれば「音を見つめる」という音楽体験。ときに無機質に響き、ときに緊張感を滲ませる音の連なりに魅せられ、音と音が絡み合うその奥に何があるのか見たくなる。

不穏な感じのする音が、頼りない小さな灯りを手に暗闇を歩くイメージを呼び寄せます。知らず知らずのうちに、見知らぬ場所に迷い込み、足元は沈み込む。この音が具現化するならば、森の沼地が相応しいのではないでしょうか。僕らは音に誘われ、音に沈んでいく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?