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Michel Camilo「Take Five」:ピアノの音で立体的に描く変拍子、カンヴァスを飛び出すメロディ

よく聴くジャズの曲をリストにするならば、確実に「Take Five」が含まれます。The Dave Brubeck Quartetの原曲はいうまでもなく、いくつもあるカバーも好きです。優れたメロディと音は互いを引き寄せると僕は常々思っています。特に多くのジャズ・ミュージシャンがカバーする曲には、そういった「惹かれ合う」ものがあるのではないでしょうか。

カバーの数だけ「Take Five」の新しい顔を見ることができます。山中千尋による演奏に続き、ドミニカ出身のジャズ・ピアニストMichel Camiloが弾く「Take Five」に感動しました。アルバム『What’s Up?』に収録されています。身体を動かしたくなる躍動的なピアノの音は、さすがラテン・ジャズの大家というべきでしょうか。もともと「Take Five」が持っている軽快さに磨きがかかり、加えて、軽やかな空気の中に芯の太さや力強さが見えます。

「Take Five」のメロディがリズムのように曲を貫き、支えるなかで、アドリブのフレーズが自由奔放に、そして縦横無尽に駆け巡ります。ピアノひとつで構築しているとは思えない音の連なり、いくつものフレーズが有機的に組み合うパフォーマンス。カンヴァスに描かれた絵が飛び出して立体的なオブジェになる――そうしたイメージが浮かぶ演奏です。


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