小沢健二 犬は吠えるがキャラバンは進む
このアルバムとの出会いは大学の終わりの頃だった。平野敬子がデザインした「dogs」のオシャレなパッケージがブックオフの安売りコーナーで窮屈そうに異彩を放っていた。飼い主に捨てられたつぶらな瞳の子犬を拾うように気づけば手を差し伸べていた。
それまでは熱心なファンでもなくHEY!HEY!HEY!でのダウンタウンとの軽快なトークやラブリーのハッピーな歌のイメージがあったので、このファーストアルバムを初めて聴いた時はとても衝撃的だった。
ミディアムテンポな暗い曲が殆どで削ぎ落とされた骨太なバンドサウンドと抑揚の抑えた歌謡で聴けば聴くほどのめり込む中毒性の高い音楽だった。星野源のばかのうたにも親和性を感じられる原点。以後の作品は大いなる冒険と蛇足である。
それから何十年か経った今年の年末にリマスター盤が届けられた。
このCDは、録音時に僕がスタジオで聴いていた音に最も近い音です。音を近く感じると思います。
特に買う気はなかったが、この本人のコメントと元気のなくなったCDコーナーでまたしても奇抜な色で輝きを放つワンちゃんを思わず救出してしまった。
改めてクレジットを見ると大好きな「天気読み」と「天使たちのシーン」のサックスが先日亡くなった平原まことだった。直接的ではないが以前ほんの少しだけ彼に関わる仕事をしたことで何かの縁を感じた。
当時の作った人や聴いていた人がいずれいなくなっても、作品はずっと生き続け新しい出会いを創出する。
永遠にリマスター希望。