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NODA・MAP 野田地図 兎、波を走る

チケットがなかなか取れない野田秀樹の作品を3年連続観られるとは。ピョンピョンと跳ねる気持ちで劇場へ向かった今年は兎年。

未だ解決されていない現実の問題と不思議の国のアリスの非現実の世界がまぜこぜになったエンターテイメント。新たに導入されたデジタル映像と十八番のアナログなロープや布を使いこなし舞台ならではの表現力に磨きがかかる。AIの技術を真っ向から否定するのではなく、演劇に取り込み人間の肉体の魅力と可能性をさらに引き出していた。

黒を基調とした舞台セットにピンク、水色、グリーンのポップな色が施された衣装。松たか子と多部未華子の濁りのない透き通る声。高橋一生のアスリート並の身体能力。アンサンブルの痛々しいほどの大声と規律性。そのどれもが素晴らしかった。

あのような不条理が現実に起きていたことを忘れてはいけないし、すべてはロボットではなく人間の仕業。どの世代にも語り継ごうとする野田秀樹の覚悟。

大切な人はひとり残らず今すぐ抱きしめよう。