見出し画像

勝ち負けだけが、結果じゃない。―MMA選手として夢を追う塩川さんから学ぶ、理想の人生の切り開き方―

働き方や生き方が多様化している現代で、自分自身の生き方に悩む人も多いのではないだろうか。そんなとき、夢に向かって突き進む誰かの存在が指針となったり、刺激となったりするものである。会社員として働きながらMMA*選手として夢を追う塩川玲斗さんは「所属する団体の試合で優勝し、チャンピオンベルトを巻く」という目標を胸に、試行錯誤を繰り返しているという。たくさんの選択肢があった中で、なぜMMAに夢中になったのか。まっすぐで迷いがない彼からは、学べることが多い。試合で負けても決して諦めない原動力はどこから来るのか、塩川さんに話を伺った。

*総合格闘技

塩川玲斗さん/1998年生まれ大阪育ち。
2018年、大学1年生のときにMMAを始める。大学卒業をきっかけにプロのMMA選手を目指すことを決意。現在、総合格闘技団体WARDOGに所属。
Instagram @1oire
X(旧Twitter)@4oka8

未完成でも挑戦する勇気を持つことが大切

今を逃したら夢を叶える機会は二度と来ない

一般大学生が人生を変えるきっかけに出会って

やりたいことがなく、ただなんとなく大学で経済学を学んでいた塩川さん。大学1年生のときに観戦したMMAの試合で、162cmくらいの日本人選手が170cm以上のアメリカ人選手を倒す姿に感銘を受けたという。その試合がきっかけとなり、塩川さんは約1週間後にMMAのジムに入門した。

大学生の間ジムでMMAの練習をしていた塩川さんだが、同世代が就活を始める時期には進路に迷ったと教えてくれた。プロの選手を目指すと決める前に自分の本当の気持ちを確かめたという。

「就職するタイミングでこれからの人生について考えました。社会人になった自分がMMAから離れてしまう姿を想像したとき、『それは嫌だ』と思ったんです。MMAを辞めたくないという想いに気付いたとき、思い切ってアマチュアの試合に申し込みました。初めての試合ということもありボコボコにやられてしまいましたが、負けたことでより自分の気持ちに火がついたんです」(塩川さん)

新たな挑戦により見えてきた初めての夢とは

自分に足りなかった部分もあれば、練習の成果を感じられた部分もある。大学生から始めたMMAがどれだけ通用するか確かめるために挑んだ試合で、たくさんの発見があったという。試合に負けてしまった悔しさと同時に、チャンピオンベルトを取ることが届かない夢ではないことを確信したそうだ。

この試合から始まり、合計13試合もの経験を積んできた塩川さん。結果は6勝4敗、3引き分けと優勝を勝ち取るまでの道は決して簡単な道ではなかったという。それでも頑張り続ける原動力はどこから来るのだろうか。

「”初めて見つけた夢”だからですかね。これまで習い事をしたこともなかったし、夢を持ったこともなかった。そんな自分が初めて見つけた『MMAの試合で優勝してベルトを取る』という夢をとても大切にしています。これを叶えなければ、今後自分の夢を叶える機会は二度と来ないと思っています。MMAは自分にとってのロマンですね」(塩川さん)

”想い”が新たなチャンスを引き寄せた

経験ゼロからの挑戦は壁の数々

MIMA選手の中には幼い頃からMMAや他のスポーツをやっていた人が多い。その一方で、大学1年生から全くの未経験でMMAを始めた塩川さん。経歴が長い選手とのレベルに差を感じ、悔しい思いをしたことも少なくないそうだ。アマチュアからプロに昇進するための試合では、幼い頃から空手をやっていて、優勝経験がたくさんある選手に負けてしまったという。

「ここで勝ってプロの道に上がろうと意気込んだ試合でしたが、負けてしまいました。その時はかなり悔しかったですね。『これだけ練習してもダメだったか……』と。試合が終わった直後は何も考えることができずに呆然としていましたが、応援に来てくれている人の顔を見た瞬間、涙が溢れたんです。『応援してくれている人に勝った姿を見せられなかった』と、申し訳ない気持ちでいっぱいでした」(塩川さん)


MMAと向き合い続けた矢先、チャンスは巡る

結果が出せず悔しい思いをした塩川さんだが、試合中に表現した”自身の熱い想い”が新たなチャンスを引き寄せたという。試合を見ていたあるMMA団体の代表者が、塩川さんに声をかけたそうだ。

「試合後、現在所属しているWARDOGという団体の代表者に『うちの試合に出てみない?』と声をかけてもらいました。試合に負けて心が折れていましたが、『WARDOGの試合に出させてもらえるなら、もう一度頑張ってみよう』と前を向けたんです。勝ち負けとはまた違った”自分の想い”を表現できたからこそ、掴めたチャンスだと思っています。自分を拾ってくれたWARDOGの代表や、支えてくれた周りの人、そしてスポンサーの皆様には本当に感謝しています。いつか夢を叶えることで、恩返しがしたいです」(塩川さん)

そう語る塩川さんの目標は、2025年10月までに自身が所属するWARDOGのフライ級でチャンピオンベルトを取ることだ。

未完成でも挑戦する勇気を持つことが大切

大学1年生から始めたMMAの道を、自身の熱い想いで切り開いてきた塩川さん。たくさんの人からの応援を背負い、戦い続ける姿が印象的である。そんな塩川さんは、自分らしい人生への1歩を踏み出すために”未完成でも挑戦する勇気”を持つことが大切だと語る。

「やりたいことを見つけたとき、『100%の自分を作ってから挑戦しよう』と考える人がたくさんいると思います。練習して自信をつけてから試合に申し込もうとか、もう少し自信がついたらオーディションに申し込もうとか。もちろん100%の状態を作り上げることも大切ですが、”未完成でも挑戦する勇気”を持つことが何よりも大切です。自分のように試合に負けても、新たなチャンスが舞い降りてくることだってあります。いつどこで道が開くかは分からないので、どんなチャンスも掴む気持ちでいたいですね」(塩川さん)


働き方や生き方が多様化している現代で、自分らしい生き方について考える時間は昔に比べて増えている。加えて「今からではもう遅い」と諦める瞬間や、「いつかやろう」と思っているうちにチャンスを逃してしまうことも、同じくらいたくさんあるのではないだろうか。100%の自分が完成していなくても、道を開くことはできる。やりたいことがある人は、未完成の状態でも勇気を出して1歩踏み出してみることで、理想の人生へと近づくかもしれない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?