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アナルクライシス〜フィンランドの風を添えて〜


大2の頃、道端であったオカマ二人と俺で
飲みに行ったことがある。
出会いは、偶然新宿ゴールデン街で飲んでる時にふと話しかけられたのがきっかけだ。

名前は遠い昔の話なので、記憶の波に攫われてしまったが、確かマリンちゃんと、マイちゃんだったと思う。

2人とも、おそらく30歳くらいだったとは思う。
マイちゃんは言われたら分かるが、
正直女性と言われたら女性にしか見えなかった。少し、骨格が逞しかったが、そこ以外は女性だった。実際俺も男性だと最初の数分は分からなかった。

マリンちゃんは、失礼を承知で言うが
クレヨンしんちゃんの映画の敵幹部でだった。
恐らく彼女が出ていたら名作だったであろう。



俺は正直大2で浮かれていたのもあるが、
酒が飲めればよかった。
むしろ、自分が関わったことない人種との邂逅に心を躍らせて、新宿へと向かった。


新宿に着くなり、サイゼリヤで飲むことになった。俺が金のない学生だと伝えると、
「いいのよ!若いんだから!」
とご馳走してくれた。人の優しさを感じた。


少しだけ身の上話を聞いた。
マイちゃんはパパ活をしているという事。
どうやら金主のおっさんがいて
金を出してくれるらしい。

イチモツを持つ男に、
イチモツを持つ男が貢いでパパ活とは
日本語とは実に難しい言語であるな、と感じた。

イチモツを持つ男の金が、
イチモツを持つ男に渡り、
イチモツを持つ私のサイゼリヤ代に
なっているのだ。 


これ以上イチモツと言うと、夢に出てきそうだ。
辞めよう。


マリンちゃんの話は思い出せない。

聞いているときに、
ずっと「ユルユルでDE-O!!」が流れていたからであろう。

サイゼリアでしこたまワインを飲まされた俺は、
そのまま流れるように、ゴールデン街の行きつけの店に連れてかれた。

色褪せた階段を登ると、そこには10畳ほどの
アメリカンダイナー風の立ち飲みBARがあった。
そこには踊り狂う女性たち数人と、
男性数人がいた。
なぜか男性は全員外国人であった。

マリンちゃんの知り合いらしき女性が
店に入ると話しかけてきたのだが、
俺は目を疑った。

褐色で金髪の偉い美人な女性であった。
だが、異質な点があった。

同人誌でしか見たことない、
アルファベットで表せるかすら不明なほど
巨大な乳。

冬なのにも関わらず、
異様に薄い白のタンクトップ一枚だけを
着ていた。

だがそんなものはもはや議題に上がらない。

タンクトップから乳首が透けているのである。
というか、
もはや乳首そのものであった。

ここは
アメリカンテイストだから、
乳首とかを気にしている俺が悪いのか?

最早これは乳首から目線を逸らすとかそういう
問題なのか?

アメリカではこれが普通なのか?

と自問自答を繰り返し、たじろぐ俺に
マリンちゃんが言った。

「こいつも男よ〜ww」と。


踊り狂う女性たちをよく見てみると、
謎が解けたのである。

この店には、オカマと外国人と、
俺しかいなかった。

俺が目を逸らした乳首も男性のものだった。

最早目の前の乳首に自問自答している事が、
アホらしくなった。


オカマ達は博識らしく、
店の中から聞こえる言語は8割英語であった。

最早どうにでもなれ!と酒をしこたま飲む事
にした。
マリンちゃんは何故かずっと俺の横にいた。

数時間には、イケメンの白人の男(確かフィンランド出身と言っていたので、以下フィンと呼ぶ)と
マリンちゃんで酒を飲んでいた。

マリンちゃんは少し前から泥酔しているようだ。

急にマリンちゃんが口を開いた。
「ねぇホテル行かない?」と。

俺は驚いてしまった。

俺は人生でそんなセリフを言われた事がない。

いや、
むしろ全男性が言われて嬉しい言葉であろう。

だが、違うのである。
目の前にいるのは男。

だが、女にロクに相手もされずにセンズリを
繰り返し、努力もせずに女叩きをし、
泥酔して判断能力も落ちていた私は、
少し悩んでしまった。

確かにいい匂いはするな...

ちんこ一本生えてても目を瞑れば...

服は女、、服は女、、


だが、俺は断った。
だがまりんちゃんは折れなかった。

服は脱がないから!!見ると萎えるだろうし!!
触らせてくれるだけでいいから!!と。

俺はこの言葉に感動した。

今、生まれてこの方不細工と罵られてきた
俺の体に触りたい女(男)がいるのか!!
俺の体に価値があるのか!!!と。


少し嬉しくなってしまった。
ヤリマンの気持ちがわかったような気がした。

悩む俺に、何故か唐突にフィンが声を荒げた。

俺はこの言葉を忘れる事は生涯忘れる事はないと思う。

「コタさんはオンナの人としかHしたことないですよね!?ボクは、オトコの人とHしてはじめて
女性がスキってきがつきました!!だから!コタさん若いんだから挑戦するべきです!!」

本当に最初はなに言ってるかわからなかった。
こんなに咀嚼しないと飲み込めない文章は
センターの現代文以来だったと思う。

だが、同時に感動した。

こいつはチャレンジャーじゃねぇか。
俺はチャレンジもしてねぇのに、何言ってんだ。

確かにわかんねぇし、
こんなん若いうちだけじゃねぇか。

世に蔓延る女性は俺に見向きもしないが、
目の前で対峙する、マリンちゃん(男だが)は
確かに、俺を見てくれてるじゃねぇか!と。



俺は苦悶を繰り返し、断った。


俺は弱い人間だった。

あと切れ痔だったし。

帰り道に、申し訳なくなってしまった。
お金とか出してくれたのももしかしたらその
伏線だったのかな?と。

どうやら俺にヤリマンの才能はないらしい。



そんな悪いような良いような夜を思い出して、
今日も寝れないまま夜が明けていく。

フィンもマリンちゃんも今頃何してんのかな?

まだゴールデン街にいんのかな?


次は「うん」って言えるかな


言ってどーすんだよ


シコって寝ます。おやすみ。

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