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【診断士試験】経営法務まとめ③知的財産権(基本テキストより)

こんにちは。なごみ地蔵です☺

本日は、「今年度、中小企業診断士試験を受験予定だ」という方に向けての記事です。

前回、前々回と、民法、会社法を取り上げたので、今回は、経営法務まとめシリーズの最終回として「知的財産権等に関する知識」をまとめていきます。

特許法

特許法に関する基礎知識
・発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの。
・創作を要件としていることから新規性が求められる。
・発明は、物の発明(コンピュータプログラムを含む)と方法の発明に分けられる。
・原則として、発明者に特許を受ける権利が発生する。
・複数の出願のうち最初に出願した者に特許権を付与する。
・協議が不成立の場合には、誰も特許を受けることができない。


特許権の取得手続
1.出願
・図面の提出は物の発明の時。
・1つの請求項(クレーム)に記載される発明と、その発明に対して一定の技術的関係を有する発明については、1つの願書でまとめて出願できる(=出願の単一性)。
・新規性を喪失したものについて、公表日から1年以内に例外規定の適用を受けたい旨の書面などを特許出願と同時に提出し、かつ出願日から30日以内(原則)に公表などの事実を証明する書面(証明書)を提出すれば、新規性喪失の例外として、特許を受けることができる。
※公表等が本人の意思に反する場合は、例外規定の適用を受けたい旨の書面および証明書の提出は不要。

2.審査請求
・出願日から3年以内(原則)に審査請求がない場合は、出願は取り下げたものとみなされる。
・出願人に限られず、審査請求は誰でも可能。

3.出願公開
・出願から1年6月経過すると、特許出願を特許公報に掲載することにより出願公開される。
・補償金請求権を早期に得るために、出願人の任意での出願公開請求が可能。

4.特許査定・設定登録
特許料は、初回に限り第1年~第3年分を一括納付。

5.特許無効審判
利害関係人のみ、いつでも可能。

6.特許異議の申立て
何人も(=誰でも)、特許公報発行から6月以内に限り、特許異議の申立てをすることができる。


特許権の効力と制限
・特許権の存続期間は、出願の日から20年。
※農薬や医薬品は、5年を限度とする延長が認められている。
※出願から5年または審査請求から3年経過日のいずれか遅い日以降に特許権が登録された場合も、存続期間の延長が認められる。


その他特許権に関する知識
1.特許権の活用
・特許権の移転…相続・合併などによる承継の対象になる。
・専用実施権…登録が必要。発明者自身もその発明を利用することができなくなる。
・通常実施権…独占性がない。登録不要。当然対抗制度。
・仮専用実施権と仮通常実施権…特許出願段階(特許権発生前)のライセンスを保護するための制度。仮専用実施権の設定および仮通常実施権の許諾をすることができる。
・質権の設定…質権者に対して特許権・実施権を提供する必要はなく、特許権者は質権設定後も特許発明を実施できる。特許権および専用実施権を目的とする質権の設定には登録が必要。

2.共同発明
持分の譲渡、実施権・質権の設定…他の共有者の同意が必要。

3.職務発明
・従業者が特許を受けると、企業は無償の通常実施権を得る。
・企業が特許を受ける権利の取得(あらかじめ勤務規則等の定めが必要)をすると、従業者は相当の利益を受ける権利を得る。

4.先使用権
出願前から当該発明を実施し、かつ当該出願につき善意であれば、今までの事業の範囲内で当該発明を無償で実施できる(無償の通常実施権)。


意匠法

意匠法に関する基礎知識
・工業上の利用可能性が要求される。
・改正により、従来は意匠法で保護されなかった建築物の外観や内装デザインが、新たに意匠法で保護されるようになった。
・クラウド上に保存され、ネットワークを通じて提供される画像や、道路に投影された画像等が保護対象となった。
・改正後も保護されない画像の例…壁紙(装飾的な画像)、ゲームの画像(コンテンツ画像)


意匠権の取得手続
1.出願
図面の提出は必須(写真やひな形、見本でも可)。

2.審査
すべての出願が審査される。

3.意匠登録査定・設定登録
初回の登録料は第1年分のみ納付すればよい。


意匠権の効力と制限
・意匠権は登録意匠に類似する意匠にまで効力が及ぶ。
・意匠の類似の判断については、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行われる。
・意匠権の存続期間は、出願の日から25年。


商標法

商標法に関する知識
・商標法の目的は、需要者の利益を保護すること。
・商標法には「創作」という概念がない。
・商標の分類…立体商標(立体的形状からなる商標)、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標など
・我が国の商標法は「登録主義」を採用している。
・不使用取消審判(継続して3年以上日本国内において使用されていない登録商標の取消し審判を請求できる制度)によって、使用主義的な要素を取り入れている。
・出願が同日の場合は、協議によって決められるが、協議が不成立の場合には、商標登録を受けることができる出願人は、特許庁長官が行う公正な方法によるくじで決められる。
・以下に該当する商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品または役務を認識することができるもの(全国的な知名度で有名になった商標)については、登録を受けることができる。

・その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産・使用の方法もしくは時期その他の特徴、数量・価格、またはその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法もしくは時期その他の特徴、数量・価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
・ありふれた氏または名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
・極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標


商標権の取得手続
1.出願
出品または出展の日から6月以内に、特例規定の適用を受ける旨の書面を出願と同時に提出し、かつ出願日から30日以内(原則)に出品・出展の事実を証明する書面(証明書)を提出すれば、その出品・出展の時に出願されたものとみなされる。

2.出願公開
・出願があったときに商標広報に掲載される。
・金銭的請求権が認められている。

3.商標登録査定・設定登録
登録料は10年分の一括納付または5年分ごとの分割納付のいずれかの方法で支払わなければならない。

4.商法登録無効審判
商標登録無効審判を請求できるのは利害関係人のみ、いつでも可能。

5.登録異議の申立て
誰でも申立てが可能であるが、商標広報発行から2月以内に限り、申立てをすることができる。


商標権の効力と制限
・禁止権…自身が独占的に使用できる権利ではないが、登録商標に係る指定商品・役務において類似する範囲内で、他者の使用を禁止できる権利。
・商標権の存続期間…登録の日から10年。何回でも更新することができる。


その他の商標権に関する知識
・ライセンス…商標法では、専用使用権、通常使用権という。通常使用権は登録しなければ対抗要件を満たすことができない。
・先使用権…需要者に広く認識されている(周知性がある)必要がある。先使用権者に対し、自己の登録商標との混同を防ぐのに適当な表示をすべきことを請求できる。


意匠法・商標法の特殊(独自)制度

特殊な意匠制度
1.部分意匠制度
・物品等の全体から物理的に切り離せない部分に関する意匠について意匠登録を受けることができる制度。
・部分意匠の意匠権の効力は、その部分意匠と同一・類似の部分を含む全体意匠に及ぶ。
・部分意匠の出願は、全体意匠に係る意匠広報の発行の日の前日まで認められる。

2.組物意匠制度
改正意匠法により、組物意匠についても部分意匠が認められるようになった。

3.関連意匠制度
・意匠(本意匠)に類似する意匠(関連意匠)について意匠登録を受けることができる制度
・本意匠に類似せず、関連意匠にのみ類似する意匠についても登録を受けることができる。
・関連意匠の出願可能期間が、原則として、本意匠の出願の日から10年以内まで延長された(最初に選択された意匠を基礎意匠という)。

改正意匠法における関連意匠制度のポイント
・関連意匠の意匠権の存続期間は、基礎意匠の意匠権の意匠登録出願日から25年。
・関連意匠は、本意匠(基礎意匠)と一括でなければ意匠権の移転はできない。
・本意匠(基礎意匠)または関連意匠に係る専用実施権は、本意匠(基礎意匠)およびすべての関連意匠について、同一人に対して同時に設定する場合に限り、設定することができる。

4.秘密意匠制度
・設定登録日から3年を限度として意匠を秘密にすることを認める制度。
・秘密意匠の請求は、意匠登録出願と同時または当該意匠の第一年分の登録料の納付と同時にしなければならない。


特殊な商標制度
1.防護標章登録制度
・登録商標を使用した結果、需要者に広く認識(著名)された場合、その登録商標を他人が指定商品または役務以外に使用することによって商品または役務の出所の混同を生じさせるおそれがあるとき、他人の当該登録商標の無断使用を禁止する制度。
・登録防護標章は非類似の商品・役務についても禁止権が及ぶ。

2.団体商標登録制度
・事業者を構成員に有する団体が、その構成員に使用をさせる商標について商標登録を受けることができる制度。
・団体商標登録出願が可能な団体とは、商工会・商工会議所、NPO法人等。法人格を有しない団体および会社は出願できない。

3.地域団体商標登録制度
・地域名と商品名からなる商標(地名入り商標)について、早期の団体商標登録を受けることができる制度。
・地域団体商標の出願は、商工会・商工会議所およびNPO法人が可能。
・周知性があればよい。
・地域団体商標に係る商標権は譲渡できず、専用実施権の設定もできない。
・地域の名称および商品、役務の名称等の文字のみであることが必要。


著作権法

著作権に関する基礎知識
・著作権法は文化の発展に寄与することを目的としている。
・コンピュータプログラムはプログラムの著作物に含まれるが、プログラム言語、規約(プロトコル)、解法(アルゴリズム)は、プログラムの著作物とされない。
・第三者が二次的著作物(翻訳、映画化等)を利用する場合には、二次的著作物の著作者に加えて原作の著作者の許諾も必要。
・共同著作物は、原則として、全員が共同でなければ権利を行使できない。


著作者
・法人著作(職務著作)…従業者が職務上作成する著作物は、使用者の名義の下に公表する場合、はじめから使用者が著作者となる。任意グループ、自治会、PTAといった団体にも職務著作の規定が適用される。


著作権
1.著作人格権…譲渡・相続できない
・公表権
・氏名表示権
・同一性保持権

2.著作財産権…譲渡・相続できる

3.著作隣接権
・著作隣接者…実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者
・報酬請求権を持っているのは、実演家とレコード製作者。


著作権の発生
・無方式主義…出願や登録といった手続は不要で、創作と同時に著作者に著作人格権、著作権が発生する。
・著作権の登録…第三者への対抗要件。ライセンス契約は当然対抗制度が導入され、対抗するための登録などの手続は不要。


著作権の存続期間(保護期間)
・「生存している期間」+「死後70年間」
・著作権法における保護期間は、死亡・公表・創作した年の翌年の1月1日から起算する。


著作権の制限
1.私的使用のための複製
・違法ダウンロード…改正著作権法により、漫画、書籍、論文、コンピュータプログラムなどを含む著作物全般に拡大された。

①漫画の1コマ~数コマなど「軽微なもの」
②二次創作・パロディ
③「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合」(詐欺集団の作成した詐欺マニュアルを防犯目的でダウンロードする行為など)
のダウンロードは規制対象外

2.非営利・無料の場合の上演・演奏・上映・口述・貸与など
・非営利・無料の利用の場合には著作権侵害にならない。
・「複製・譲渡」や「公衆送信」の場合には著作権侵害になる。
・喫茶店においてあるテレビなども著作権侵害にならないが、通常の家庭用受信機(テレビ・ラジオなど)を用いることが必要。

3.写り込み等
・改正著作権法により、スクリーンショットやインターネットによる生配信などを行う際の写り込みも幅広く認められるようになった。


著作権の活用
1.著作権の移転
・移転の効力の発生のために登録などの手続を要しない。
・著作権を譲渡する契約において、「二次的著作物の創作権」または「二次的著作物の利用権」が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡したものに留保されたものと推定する。
・「すべての著作権(著作権法第27条および第28条の権利を含む)を譲渡する」と、明記して契約する必要がある。

2.ライセンス
・出版権…排他的権利。電子出版でも設定できる。


著作権の権利侵害に対する手段
1.著作権の侵害
①リーチサイト・リーチアプリにおいて侵害コンテンツへのリンクを提供する行為
②リーチサイト運営行為・リーチアプリ提供行為
が規制される。

2.著作権侵害に対する手段
・過失の推定規定はない。


不正競争防止法

不正競争防止法の目的
・国際約束…パリ条約、マドリッド協定、TRIPs協定、OECD外国公務員贈賄防止条約
・不正競争防止法では、「物」にプログラムが含まれることを明文化している。


商品等表示
・「容器もしくは包装」も含まれる。


不正競争行為の類型
1.周知表示混同惹起行為
・周知…著名でなくともよい
・混同を生じさせる行為

2.署名表示冒用行為
・「混同」を要件としない。
・フリーライド、ダイリューション、ポリューション

3.商品形態模倣行為(デッドコピー)
・日本国内で最初に販売された日から3年を経過した商品の形態模倣は適用除外。

4.営業秘密
・営業秘密として保護を受けるためには、秘密管理性、有用性、非公知性という3つの要件のすべてを満たさなければならない。

5.限定提供データに係る不正競争
・限定提供データとして保護されるためには、限定提供性、電磁的管理性、相当蓄積性の3つの要件(のすべて)を満たさなければならない。
・自動走行用地図データ、POSシステムで収集した商品毎の売上げデータ等が考えられる。


不正競争に対する手段
・過失の推定規定はない。


最後に

今回は、経営法務の中でも出題割合の高い「知的財産権」について、ポイントをまとめてきましたが、いかがでしたか?

これまで、「中小企業経営・政策」「財務・会計」「経営情報システム」「経営法務」をまとめてきましたが、今回でこのまとめ記事が最後となります。

(すでにお気付きの方もいるかと思いますが、私は多年度受験生のため、上記以外の3科目は科目合格による受験免除を受けています。)

1次試験まで残り2ヵ月となりましたが、まだまだ間に合いますので、良い結果を出せるよう、一緒に頑張っていきましょう!


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

「この記事を読んで良かったな」
「1次試験まで残り2ヵ月自分も頑張るぞ!」
と少しでも思っていただけたら、
「スキ♡」やコメントをいただけると嬉しいです☺

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