見出し画像

楽しいことを、楽しいままに

平穏に慣れない。暑くも寒くも眩しくもない日。窓を全開にして涼しい風を楽しみながら、哲学の本と、仏像の事典を交互に読む。楽しい。こんなに楽しくていいのだろうか。

わたしの脳内には変な羽虫が寄生していて、少しでも楽しくそして静かな時が続くとその平穏を邪魔しにかかる。過去の数え切れないほどの失敗や苦悩、人に迷惑をかけたこと、人に言われた恐ろしい言葉。「お前はだめだ」という呪い。頭の中にブンブンと飛び回る。

せっかく苦労して手に入れた平穏は、世間的には異様に見えるらしい。わざわざ何の縁もない田舎に引っ越したのも、20代の女性であるのに服やコスメよりも本やお寺のほうが好きだということも、早く結婚するための努力をしないことも。

否、自分が世間の価値観に、まだ囚われているだけだ。

楽しいと感じた時、無条件に罪悪感を覚えるのをやめたい。楽しむことや平穏であること、幸せであることは悪いことみたいだ。そんなはずはないのに。

どうか目の前の小規模な視界に映るものを、目の前にある1冊の本を、味わい尽くせるような集中力が芽生えますように。脳内にブンブン飛び回る虫たちが、自然と去ってゆきますように。本が好きなわたしと本当に友だちになれますように。楽しいことを、楽しいままに感じて、心の栄養にできますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?