旅するように生きていけたら。
ちょっとの間旅行をしていた。ひとりで奈良の古寺を巡ったのだ。ひとりで旅をしている間は、わたしそのものになれる。行きたい場所を自分で決めて、見たものや出会った出来事に自分の心だけで向き合う。
家に帰ってくると、さっきまで春日の神域の空気に圧倒されていたことや、文殊菩薩像の精緻な顔付きに惚れ惚れして時間が止まったような気がしていたことなどが、急速に遠くなる。明日からまたいつもの日々。
出会った仏像のこと、初めて知ったこと、美しかった景色、それら全てを正確に書き留めることができたら、ずっと覚えていられるのだろうか。美しいものたちが与えてくれた心の静けさをずっと持っていたい。
旅が好きだ。ずっと目的があるから。ずっと移動していられるから。ずっと 美しいものを見られるから。普段からこんな風に生きれたら、どれほど素敵だろう。
歩きすぎて、足が痛い。暑すぎたから頭も痛い。疲れが取れて元気になったら、仏像について書いてみよう。どんなところが美しくて、どんな風に感動したのかを。いつもはあっという間に日常に戻ってしまうけれど、今回はまだ旅を続けていたい。
焦点を美しいものに、好きなものに合わせること。いつか誰かと共有できることを願っている。
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