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ワンピースで学ぶダイバーシティ:ダイバーシティとは何なのか

はじめに

漫画ワンピースの麦わら海賊団は非常にユニークな人々などで構成されている。ゴム人間の船長ルフィ、剣士ゾロ、航海士のナミ、コックのサンジ、狙撃手ウソップ、医者のチョッパー、考古学者のロビン、船大工フランキー、音楽家のブルック、そして操舵手のジンベエ。

彼らの個性は全く異なっているし、考え方や価値観が違っている様子が幾度となく漫画には描かれている。
この意味で、それぞれ個別の夢や目標を持ち、全く違った価値観を持っているにもかかわらず、全員がチームとしてルフィの「海賊王になる」という目標をサポートしている点は、いかにダイバーシティのあるチームをまとめてチームの目標を達成するのかを考えるうえでヒントになるかもしれない。

ダイバーシティとは

そもそもダイバーシティとは何なのか。ダイバーシティの研究は人類学、社会学など様々な分野に及び、各分野においてその定義はさまざまである。

ここでは、あくまで自分の研究分野である経営学、そのうちの組織行動論において、どのようにダイバーシティが定義されているのかについて触れておく。ちなみに、経営学や組織行動論においてもダイバーシティの確固たる唯一の定義というのは存在しないことを断っておく。また、組織行動論において、ダイバーシティの研究は主にチームレベルの研究が主流であり、以下の定義もチームレベルの定義であることに注意が必要である(企業レベルのダイバーシティの定義ではない)。

Jackson, Joshi, & Erhardt (2003) では、チームのダイバーシティを「ワークユニットの中で相互関係を持つメンバー間の個人的な属性の分布」と定義している。

ワークユニットとは、組織内において成し遂げる必要のある特定の作業やプロジェクトを意味し、主としてチームや複数の人間によって取り組まれるものである。プロジェクトチームは代表的な例だろう。

また、個人的な属性とは「年齢、ジェンダー、人種・民族」といった特徴だけでなく、「個性、知識、価値観、さらには教育や勤続年数、さらには職歴」といったものを含む個人の特徴と思ってもらえばよい。

Harrison & Klein (2007) もダイバーシティを「ある共通の特徴においてユニットメンバー間での違いの分布」と述べている。共通の特徴とは、Jacksonらの定義でいう個人的な属性と捉えて差し支えないだろう。

これらの定義を見ると、特定の集団・組織における個人的な属性のばらつき(分布)のことをダイバーシティと捉えればよいだろう。ばらつきとは「違い」ということになる。ダイバーシティという概念はチームの構成員の違いに着目するものだといってもよい。

麦わら海賊団とダイバーシティ

ダイバーシティがその構成員の違いに着目するのであれば、それは男女、人種(非人間を含む)、性格、悪魔の実の能力者か否か、など、様々な点で表現される。冒頭にも述べたように麦わら海賊団は団員全員がユニークな特徴を持っているという点でダイバーシティが高い組織といえるだろう。

ダイバーシティが高いと様々なメリットとデメリットがある。ここでは簡単に麦わら海賊団においてダイバーシティがどのようなメリットを享受しているのか、どのようなデメリットを被っているのかを述べておこう。

大きなメリットとしてはお互いに苦手分野を補い合っているところだろう。例えば、ルフィは好奇心旺盛だなリーダーだが、時に暴走してしまう。それゆえ、ルフィのようなメンバーばかりだと無謀な冒険をしかねない。しかし、麦わら海賊団にはナミ、サンジ、ゾロなど、ルフィよりは慎重な思考の持ち主もおり、ルフィの暴走を可能な限り食い止めている。

お互いの欠点を補いあい、長所を活かすことができればダイバーシティの高い組織は大きな成果を出すことができるだろう。

一方、デメリットとしてはコンフリクトがあげられる。ゾロとサンジは性格からか馬が合わず、しょっちゅうけんかをしている。ナミも物語においてはよく叫びながらルフィのことを怒っている。ウソップもルフィと大喧嘩をして海賊団を抜けるというところまでコンフリクトが大きくなった。

違う価値観や考え方の人々が集まれば、それだけ言い争いが発生する可能性が高まる。実際にダイバーシティの高い組織やチームで仕事をしたことのある人は分かると思うが、かなりストレスのたまってしまうのである。

それでは、どうすればダイバーシティのメリットを最大限に享受し、デメリットを最小限に抑制することが出来るのか。次回はそのヒントとなるインクルージョンという概念について解説する。

References

  • Harrison, D. A., & Klein, K. J. (2007). What's the difference? Diversity constructs as separation, variety, or disparity in organizations. Academy of Management Review, 32(4), 1199-1228.

  • Jackson, S. E., Joshi, A., & Erhardt, N. L. (2003). Recent research on team and organizational diversity: SWOT analysis and implications. Journal of Management, 29(6), 801-830.

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