田中ゆゆ子の古典落語劇場(スタリラ)@飛行船シアター
真矢に緩まされた涙腺がゆゆ子で崩壊しました。
昨年のロミジュリから引き続き2作目の朗読劇を観てきました。
朗読劇シリーズ、距離が近い劇場での上演や古典からのテーマ選定等から学生として演劇に取り組む等身大の舞台少女たちを観て感じることができ、不思議な臨場感・没入感と、じっくりお芝居を味わえる面白さがあります。
アニメの第三者的な視点やミュージカルのA組B組という繋がりとはまた違った、一観客として舞台少女たちがおくる舞台を観るという体験と距離感にハマります。劇スで華恋とひかりが観客を感じたあの一場面の拡張というのが近い感覚な気がします。
特に今回、ゆゆ子の誕生日当日である6/5という日付けや、ブシロードが取得したばかりの飛行船シアターという劇場の存在がスタァライトの世界と現実との橋渡しをしていたのも大きかったです。
初めての飛行船シアターは、売りのプロジェクションマッピングはあまり気に止まらず(下手にめくりがあったのを見つけたときはちょっと楽しくなりました)、むしろ照明の美しさが印象に残っています。色も光も強く鮮やかで、特に舞台少女を後ろから照らすスポットライトの光の筋が綺麗でした。
劇中最初と最後に舞台少女たちに飛行船シアターの説明というか宣伝がかなり織り込まれていたので、ここを推していきたいブシロードの気合を感じました。ちょっとしつこいほど飛行船シアターを語らせていましたもん。
前回同様生演奏も贅沢で耳が幸せです。皆さん和服で決めていらっしゃって、エンディングでは客席を煽っていただいたり、楽しかったです。
衣装
先にスタンバイされた音楽の方々が和装だったのでもしやと期待していたら、今回は衣装が皆さんお着物でした。キャラクターの個性も出演者さんの持ち味も両方感じるようなまとめ髪のお美しい着物姿で眼福でした。
ゆゆ子@佐伯伊織さんはキャラクターカラーのピンクの着物。レヴュー服の蝶の髪飾りを思わせる蝶のかんざしをつけていらっしゃって、すごくゆゆ子でした。塁ちゃんとの身長差も可愛いです。
塁@紡木吏佐さんは黒の着物に扇形簪と振り向いた時に緑の玉簪も見えて格好良かったです。すらっとされていて目が印象的なのでとてもお似合いでした。
文@倉知玲鳳さんは純白の着物。金属っぽいコームでまとめた夜会巻き風の髪型と相まってぐっと大人っぽく、得も言われぬ迫力があります。一緒に行った文推しの友人は銀座のママと評してました。納得。
クロちゃん@相羽あいなさんは山吹色の着物。落ち着いたトーンの着物の中で鮮やかな色味で簪も5本も挿していてとても華やかで、さすがクロディーヌという存在感でした。簪の挿し方から見て紺屋高尾は花魁かなと思ったらその通りで、役にも合っていて良かったです。
真矢様@富田真帆さんは布っぽい2本の玉簪に紺地の着物で、袖からちらりと見える朱が素敵です。紺屋高尾では男役、浜野矩随では進行役だったので落ち着いた雰囲気でした。文が白い着物だったので真矢様自分のカラーじゃないのかと思ったんですが、紺屋の久蔵を演じるための紺だったんですね。
紺屋高尾
真矢様というか真帆さんがずるいです。
悶々とした恋煩いから始まって文演じる親方との息のあった愉快なやりとりのせいで途中までは本当に顔芸の人だったのが、後朝の高尾太夫との会話で真実を明かすシーンで切なくなるくらいの高尾太夫への一途な恋情を一心に訴える久蔵に全部持っていかれました。吉原に飽いた高尾太夫の心を動かすほどの熱意と真剣さに心を打たれます。それまでコメディタッチで展開してきた物語の空気を一気に変えて、真帆さんにぐっと引き込まれるお芝居でした。
コメディパートは安定の真矢真帆さんでした。やりすぎなくらい全力で笑いを取りに行くのが清々しいくらいで、たくさん笑わせていただきました。
前回のロミオも素敵でしたが、久蔵を演じる真帆さんに、分かりやすく格好いい役ではなくても笑いと実力と熱意をもって観客を魅せ釘付けにする、舞台人天堂真矢の持つきらめきを見せつけられた思いです。
高尾太夫のクロちゃんはある意味真矢さんと真逆で、どんな場面でも西條クロディーヌを感じさせてくれて、クロちゃんが演じる高尾太夫であるというのがすっと入ってきます。声が印象的なのとすごく安定して話されるのが大きいですね。クロちゃんの大人っぽい女性らしい声が高尾太夫に合っていて、艶と少しの寂しさを感じさせる台詞回しが素敵でした。
お芝居中に羽織られた赤い打ち掛けも似合っていらっしゃって、一層クロちゃんの華やかさに磨きがかかっていました。
年季明けの日の再会は、久蔵と高尾太夫の期待が込もった表情、仕草、シンプルに交わす言葉の全てから2人の幸福感がすごく伝わってきて、観ているだけで安心したような嬉しいようなそんな心地になりました。顔を合わせるまでの文、塁、ゆゆ子の畳み掛けるようなテンポも、逸る心が感じられて良いんですよね。
なんかもう何度も見ている気がしてましたが、真矢クロの劇中劇でのラブシーンは初めて見ました。真帆さんもあいあいさんも熱量大きい感情豊かな直球芝居をされるので、ぜひまた真矢クロとして作品を演じてほしいです。
文の親方はいかにも江戸っ子らしいきっぷのいい感じで、現実を理解させようとしつつも結局は久蔵の思うようにさせてやるところに思いやりを感じて良い親方っぷりでした。真矢&塁との立て板に水のやり取りは爽快感がある楽しさです。2作ともコメディ要員だったとアフタートークでおっしゃっていましたが、どんな雰囲気でもがらっと変えて自分のペースに巻き込むお芝居の威力はさすがでした。客席との絡みもうれしかったです。
塁のヤブ医者はイロモノ系演技だったので何か裏があるのかと思いましたが、別に特になく、ただイロモノなだけでした。出番がそれほど多くないのに個性的で楽しかったです。あいあいの下りも、普通に真面目にアドバイスしてただけだったのかと後から思いました。
ゆゆ子がすごく良かったんです。
紺屋高尾では花魁と進行役をされていたのですが、目を見張ったのが花魁のお芝居です。1場面高尾太夫と会話するシーンがあるだけなのですが、高尾太夫の背景や思いを引き出す会話の過程で、自分自身も達観も諦めも決意も抱えつつ高尾を諭すという、大人びて気怠げな色気を漂わせた演技がすごく刺さりました。
一見ゆゆ子がやらなそうな役に思えつつ(実際、花魁を演じる声色もゲーム寄りの声では話されていなかったので)、ゆゆ子であることが妙にしっくりくる不思議な役でした。
浜野矩随
ゆゆ子が圧巻でした。
幼さや甘さがあり、名人と呼ばれた父親に遠く及ばないのが言外にもわかる登場のシーン。
若狭屋さんに現実を突きつけられて自棄になりながらも見せる痛々しい意地。
母親に悟られずに死のうと嘘をついても隠しきれない、母との絆と真っ直ぐな性根(このあたりからもう堪えきれなくて泣いてました)。
魂が抜けたような呆然とした様子からどれだけ一心に観音様を掘り上げたのかが垣間見え、そのふわふわした状態から震えながら若狭屋さんに30両と言い出すまでの覚悟。
泣きじゃくって母に報告する姿。
どの一瞬も朗読劇であることを忘れるくらいあまりにも生き生きとしていて、矩随の心情が痛いほど伝わってきて、迫真の演技から目が離せなかったです。観に来て本当によかったと思わせてくれるお芝居で、感動しました。
ゆゆ子の存在感があまりにも強烈だったせいで実はそれ以外の場面が若干飛んでいます。
塁の若狭屋甚兵衛もしんどそうな役を頑張ってました。ゆゆ子から観客から嫌われかねない役とフォローが入るくらいTHE憎まれ役を担っている若狭屋ですが、最初の穏やかに矩随に話しかけている姿を見ると、そこまで言うかと思うくらいの暴言の裏で今まで矩随への期待と落胆を繰り返して来たんだろうなという忍耐強さも見え隠れしてきます。まあ正直そこまで言うかって今も思ってますけど。
緊張の糸が切れた塁ちゃんが泣き出すのもわかるなあと思うくらい、こちらも全身全霊の演技でした。
矩随の母はクロちゃん。優しさや愛情深さが滲む台詞が印象的でした。文の使用人?は空気の読めなさがちょっとほっとするタイミングを作ってくれていました。真矢は今回進行役で、1席目とうって変わって堅実で落ち着いた進行でした。
エピローグ/アフタートーク
真矢クロが出ているのできっと真矢クロシーンがあるだろうと思っていたらナチュラルにお互いが相手役で良かったと笑い合っていて、2人の信頼感が見えて嬉しかったです。そうかと思えば主役を巡って激しく、ほんとに激しく張り合ってて、何をやっていても真矢クロだなあとしみじみ感じてしまいました。
そしたら爆弾はアフタートークで投げ込まれました。
真帆さんにドキドキしたと言わせたいあいあいさん最高ですか。可愛すぎ。
随分必死そうにドキドキしたと言わせたがってるように見えているあいあいさんと、素なのか意図してなのか乗ってあげない真帆さんの絶妙に噛み合ってないやり取りから受け止めきれないほどの真矢クロを感じて、もう言葉になりません。本編が終わっているはずなのに何を見せられたのか私は。。。好きです。
もうウケ狙いでもなんでもいいのでいつまでも2人でわちゃわちゃやっててくださいと思います。いつまでも見ていたい。
時系列がばらばらですが印象的だったことです。
エピローグはゆゆ子の誕生日。素に戻ったゆゆ子のマイペースで嬉しそうな様子が可愛かったです。今回ストーリー的にも、そして演技でもとてもきらめいていて、ますます好きなキャラクターになりました。
アフタートークでは佐伯さんの「お腹すいた」の一言があまりに実感がこもりすぎていて、着物大変そうとかやっと肩の荷が降りたんだろうなあとか色々頭をよぎりました。本当にお疲れさまでした。
今回、全体を通して凛明館の文を見られたのも印象深かったです。
前回のシークフェルト公演では独立心を感じさせる、シークフェルトや晶に対してどちらかといえば精神的に大人な文、という描かれ方に感じていました。今回は同じ凛明館の後輩2人との関係が描かれているので、着物姿由来の圧倒的大人っぽさはありますが、むしろ先輩としての面倒見の良さや等身大の舞台少女らしさ、ゆゆ子や塁との打ち解けた距離感が全面に出ていて、凛明館に馴染んでいることが伝わってくるような文の楽しそうな笑顔がたくさん見られたような気がしました。
シークフェルト中等部
まさか出演されるとは思ってなかったのでびっくりしました。宣伝活動頑張っていらっしゃるんですね。
帰りに手書きのチラシを一人ひとりに手渡してくれるイベントがあったんですが、何より手作り感満載のチラシを出演者が自ら配るというシチュエーションにすごく学生演劇感を感じてエモさに悶えてました。
全然中等部の子の感想じゃなくてすみません。ちなみに私が並んだ列は久家心さん&佐當友莉亜さんのペアでした。笑顔で対応されてて応援したくなる可愛さでした。
飛行船シアター
最後に少し飛行船シアターのメモ。今後のスタァライトのイベント系のメイン会場になりそうなので。
行きは銀座線稲荷町から、帰りは上野へ歩きましたがどちらもそれほど時間はかからず、アクセスの良さを実感します。
席数が500程度とそんなに多くないので、ロビーはそれほど広くないです。今回は結構時間が経ってから入場したのと過去グッズの再販売だったので列は大したことなかったですが、本格的に物販やろうと思うと列形成は大変そう。ちょっと不思議な構造で半地下っぽいスペースに続く階段があったのでそっちに逃がすのかな、という感じ。
階段2つくらい降りたところにお手洗いがありました。そこそこ基数があり、スタァライト系のイベントであれば女性限定公演でない限りそんなに行列にはならなくて済みそう。トイレ行く途中にコインロッカーもちらっと見ましたが、貴重品ロッカーみたいな小さいロッカーっぽかったです。
気になったのは舞台。デフォルトなのかプロジェクションマッピング用なのか舞台上にせり出す形で白い板が立っていました。今回の見切れ席がどこに当たるのか確認していませんが、前方端だと視界は結構きつそうな角度に見えました。
次回作も発表されました。
ぜひ観たいところですが次回は聖翔メインで一気にチケット取りにくくなりそう。。。頑張ります。