第27節 アビスパ福岡vs徳島ヴォルティス レビュー
昨季のJ2の、首位・徳島ヴォルティスと2位・アビスパ福岡。
勝ち点で並び、非常に拮抗した成績だった両チームはしかし、J1の舞台で明暗を分けつつある。
アビスパは前節は首位・川崎フロンターレを破るなど10位につける一方、ヴォルティスは3連敗中で17位と降格圏に入ってしまいこの試合を迎えた。
両チームに明確な戦力差があるわけでは決してない。
しかし今節を通して、現状の明確な違いが見えてきた。
この試合について
アビスパは前々節のメンバーをベースに、左SBに志知、左SHには杉本を起用している。
3連敗中・さらには無得点が続いているヴォルティスは疲労を考慮したのか、また対アビスパ仕様なのか前節から5人を代え、さらにシステムも3バックに変更しこの試合に挑んできた。
このヴォルティスの変化は確かに有効だった。セカンドボールを回収し、サイドから攻撃を仕掛けることができていた。
ただしそれは、試合の序盤だけ。
試合が進むにつれ、守備時に5バックになるが為の前線の迫力不足、前方向の出し所に困る場面が目立つことに。
戦力の大きくないチームが優れた結果を残すために相手の良さを消すことは大切だが、それだけでは頭打ちになってしまう。
その点、長谷部アビスパは相手がどこだろうがブレることがない。4-4-2でまずは守備、そこから縦に速い攻撃に繋げている。
3バックを使うこともあるが、それはリードし逃げ切りを図る場面に限られる。
長谷部監督の選手起用がハマることが多い要因は、相手の良さを消すこと以上に良さをいかすことにある。
重廣を右SHの位置で投入したことはその最たる例。J1のCHとしては守備に課題があるがパスセンスには秀でている彼をSHで起用したことで途中投入された徳島・西谷の良さを消しつつ、ジョン・マリの2得点をお膳立てしてみせた。
相手の良さを消すことはもちろん、それ以上に自分達らしさや良さを出すことを意図しているか否か。
そこが、3-0という明確な差に繋がった一戦だった。
ヴォルティスとしてはボールを奪われた瞬間の守備を向上させること。
また途中出場で違いを見せた西谷、不動のキャプテン・岩尾など昨季のJ2で抜群のプレーを見せていたMF陣が適切な距離感でプレーできるか。それによって垣田、一美のFW陣がゴール前で勝負できる回数を増やせるかが浮上の鍵を握っている。
採点(及第点は5.5)・寸評
GK村上昌謙 6.5 久しぶりに目立つことの少ない試合だったが、集中力高く安定したプレーを披露。
DFエミル・サロモンソン 5.5 12分に右肩を負傷し交代。鎖骨の大きな負傷でなければいいが…。
DF奈良竜樹 7.0 文句なしのディフェンスリーダーは徳島のFW陣に仕事をさせず。終盤に臀部を気にしていたことが気掛かり。
DF宮大樹 6.5 前節に続き、非常に安定したプレーを披露。出場機会の少ない期間もしっかりと準備を続けた、高いプロ意識の表れだ。
DF志知孝明 6.5 守備に意識を向け、しっかりと自サイドをシャットアウト。途中出場の湯澤との強度の高いSBコンビは守備面で安心感があった。
MF金森健志 7.5 MOM。先制弾で勝利に大きく貢献。ゴールを見ることなく放ったあのシュートはアンダーの代表に選出されていた頃の「ゴールへの嗅覚」を感じさせるものだった。
MF前寛之 6.5 中村と組むことでより前を目指すプレーが増えた。85分には強烈な枠内シュートを放つ。
MF中村駿 6.5 合流からあまり経っていないとは思えないほど違和感のないプレー。出足鋭く、判断も優れている。
MF杉本太郎 6.0 右からの攻撃が多くなったが、堅実にプレー。テクニックは確かなだけに、38分にパスが弱くなった場面はもったいなかった。
FWフアンマ 6.5 徳島の守備、鳴りやすい笛にも苦しんだが最前線で身体を張り続けた。数字に見えない貢献をしている。
FW山岸祐也 7.0 プレーエリアが広くなり、フアンマとの役割分担がはっきりしつつある。身体の使い方も上手くなった。積極的に競り、金森の先制点をアシスト。
DF湯澤聖人 6.5 サロモンソンの負傷により12分から急遽出場。18分にサイドを突破されそうになったが、しかし頭でボールを止めたシーンはまさに真骨頂。J1においても信用できる。頼りになる。
MFジョルディ・クルークス 6.0 杉本に代わり65分から出場。得点への関与はなかったが、守備面での成長が著しい。
FWジョン・マリ 7.5 フアンマに代わり80分から出場。短い時間で、身体の強さをいかし2得点。カメルーン代表での活動に弾みをつけた。
FW渡大生 6.0 山岸に代わり80分から出場。役割を理解し、ハードにプレスをかけ続けた。
MF重廣卓也 7.0 金森に代わり80分から出場。右SHでの起用に応え、抜群のパスセンスでジョン・マリの2得点をお膳立て。
長谷部茂利監督 7.0 重廣の右SH起用がハマり、3-0の快勝。選手の良さを引き出す能力はJ1でも屈指。
印象に残った場面:自らのミスからではあったが、前述した湯澤が頭を投げ出した18分の場面。彼はアビスパの長友佑都だと思っているが、今季は心身ともに大きな成長が見られそう感じる場面がより増えている。
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