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東京五輪男子サッカー、日本代表への期待

開会式の前日の22日、多くの競技よりひと足早く東京五輪の男子サッカーが初戦を迎える。

五輪での男子サッカー日本代表はこれまでに10回本大会に出場し、今回で11回目。
目立った成績としては1968年のメキシコシティ五輪で銅メダルを獲得、2012年のロンドン五輪では初戦でスペインを破るなど4位に入賞した。
今回は地の利も生かし、初の決勝進出、さらには金メダルを目指す戦いとなる。

五輪の男子サッカーとはどういうものか

日本代表が初の頂を目指す戦いのことの前に、まずは五輪の男子サッカーがどういうものかを紹介しよう。
基本的にU-23(今回は1年の延期があったため異例のU-24)の選手が出場でき、加えて3人までオーバーエイジ(規定の年齢を上回る選手)を含めることができる。
また、東京五輪に出場するのは各大陸の予選を突破した16カ国。
W杯本大会には32カ国が出場できることから、五輪にはより厳しい戦いくぐり抜けてきた国々が集まっていると言える。

その国々が4カ国ごと、A〜Dまで4つのグループに分けられ、その中で総当たりとなるグループリーグが行われる。

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日本代表の置かれている状況

フル代表とを兼任する森保監督に率いられた日本代表が入ったのはグループA。南アフリカメキシコフランスと対戦することとなった。

グループリーグを突破し決勝トーナメントに進出するためにはグループの2位以上に入らなくてはならないが、その道のりは簡単ではない。

初戦で対戦する南アフリカは来日後に選手2人、スタッフ1人にPCR検査の陽性反応が出たうえ、選手・スタッフ18人が濃厚接触者(当初は21人とされたが3人減少)に指定されたために、これを書いている21日時点では試合が行われるかに注目が集まることとなってしまっている。

とはいえ、試合の6時間前の検査で13人以上の選手が陰性であれば参加が可能であるため、おそらく試合は行われるのではないだろうか。

とはいえその場合であっても、南アフリカは確実に万全の状態ではない。
波乱の起こりやすいこのスポーツにおいては思わぬ失点への怖さはあるとはいえ、日本としては報道に惑わされることなく落ち着いて試合に入り必ず勝利しなければならない。

南アフリカの注目選手はGKのロンウェン・ウィリアムズとFWのルーサー・シン。

ウィリアムズはフル代表でも出場機会を掴んでいる29歳の選手で、このチームでも最後尾からチームを支えている。
日本としては、いくらチャンスを生み出しても彼の牙城を崩さねば勝ち点3は得られない。

ルーサー・シンはポルトガルでプレーをする、スピードに優れた選手。
得点力は特段優れているわけではないが、彼に何度も突破を許すようだと試合の流れが変わりかねない。

続く第2戦目の相手はメキシコ。
北中米カリブの雄であり、日本人と体格が似ていることから以前から日本がお手本にすべきとも言われる国でもある。

注目選手はOAのGKギジェルモ・オチョアと、MFディエゴ・ライネス。
オチョアは2014・2018のW杯ではそれぞれ4試合に出場し、A代表でのキャップ数は100を超える。
35歳になったが、まだ衰えは感じられない。

ライネスは現在21歳。すでにスペインのレアル・ベティスで出場機会を掴んでおり、細かなタッチで突破することのできるドリブラーである。主戦場は右サイド。日本の左SBは彼を自由にさせないことが求められる。

第3戦の相手はフランス。

所属クラブから派遣拒否されベストメンバーとはいかなかったが、層の厚さでカバー。
16日には韓国代表と試合を行い、先制されたものの2-1で逆転勝利。地力を見せた。

注目選手はMFトゥザールと、FWジニャック。

トゥザールはヘルタ・ベルリン(ドイツ)へクラブ史上最高額の2400万ユーロで移籍したMFで、運動量と相手の攻撃を潰す能力を持ち合わせている。

ジニャックは35歳のベテランだが、フル代表の経験が豊富で20-21シーズンもティグレス(メキシコ)で16得点。長身をいかした強さと得点感覚は全く錆び付いていない。

これらの3戦を中2日の過密日程で戦い抜き、2位以上に入ると一発勝負の決勝トーナメントへと挑むことになる。

A組の日本は1位突破であればB組(ルーマニア、ホンジュラス、ニュージーランド、韓国)の2位、2位突破であればB組の1位と対戦。

ここで勝利すれば準決勝、そして3位決定戦もしくは決勝と試合が続く。
仮に準決勝、決勝まで進むと、少なくともどちらかは優勝候補の国と対戦する可能性が高いだろう。
今大会で優勝候補に挙げられるのはスペイン、ブラジル、フランス、アルゼンチン、ドイツ。そしてこの錚々たるメンツに続く位置付けなのが、我らが日本だ。

もちろんホームで戦えるという事情も加味されているが、クラブの拒否によってベストメンバーを揃えられない国も多い中でベストメンバーを招集できたこと、そして何より日本の五輪代表史上最高とも言うべき「個」が集まったことが要因だろう。

コンディションに差があったとはいえ、17日に優勝候補筆頭とも言われるスペインに引き分けたことを見ても、従来の強豪国の次の位置に置かれていることはなんら不思議でない。

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日本代表に対する自信

もちろん勝負事であるから、やってみないとどうなるかは分からない。
予想を容易く裏切ってくることはサッカーの面白さの1つでもある。
それでも今大会の日本代表に対して自信を持って言えるのは、攻守のバランスがこれまでの五輪の代表チームより高いバランスで取れているということ。

CBにフル代表でもお馴染みの吉田と冨安のコンビ、右SBに酒井、CHには遠藤と実績のある選手を揃えられたこともあり、GKの谷や大迫、田中碧や板倉を加えた陣容からは日本代表にありがちだった守備の脆さは感じられない。

一方で、U-24世代のみで構成された攻撃陣にも駒が揃う。
FWは怪我が癒えたエースの上田やここに来て評価を上げている林、日本の肝とも言える2列目には感覚が合っている堂安と久保を中心に三笘、相馬、三好など個でも打開できる選手がいる。

確固たる自信を持ち、10年前の再来を期待できるだけの面々だ。

10年前とはそう、2011年の女子W杯。
下馬評では決して優勝候補ではなかったなでしこジャパンは、欧州の強豪のスウェーデン、勝ったことさえなかったドイツやアメリカを次々と倒し世界一の座に輝いた。

あれから10年。高倉監督率いるなでしこジャパンもさることながら、日本代表が五輪の舞台でトロフィーを掲げる姿を見たい。
延期・紆余曲折・賛否。様々なことがあったとはいえ、1964年以来となる、そしてそれ以降に生まれた方にとっては人生で二度とないかもしれない、自国開催の五輪に辿り着いたことは確かなのだから。

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