第28節 鹿島アントラーズvsアビスパ福岡 レビュー
今シーズンの第5節・鹿島アントラーズを相手に勝ち点3を積んだが、勝利はなんと15年ぶり。
それほどまでに苦手な相手に、3-0というスコアでシーズンダブル(シーズン内で同じ対戦相手に連勝すること)を達成した。
この事実だけでもどれほど歴史を変えているシーズンなのか、分かることだろう。
開幕直後と現在の違い
5年ぶりのJ1。前評判の低さ。J1へのリスペクト。それらが作用し、仕方のないことではあるが序盤戦は後手を踏むことが多かった。
つまりは相手の攻撃に対し、どこかで想像を上回られ着いて行けなくなっていたのだ。
キャプテンの前寛之がSBのカバーに入る場面が多かったことは象徴的で、全体の重心も現在より後ろにあった。
ところが夏の移籍市場で守備のバランスを保つことに長けた中村駿を獲得したこと、リーグ屈指のキックの精度を持つサロモンソンを負傷で欠いてしまったことは残念だが代わりに対人守備に優れた湯澤が右SBに入っていること、SBが中央に絞るタイミングが適切になったことで、数的優位でなくても相手を止められるようになり守備ブロックの強度が向上。
後ろが安定感を増したことで攻撃に入った際には自信を持って全体を押し上げることができている。
まさに「良い守備から良い攻撃」を、まだ道半ばだがある程度実現出来つつあったのが、前節の徳島戦だった。
そんな中迎えた鹿島戦
そこから中断期間を挟み、おそらくこの期間に前線の距離感を意識した練習を行ったのだろう。
先制点の場面でFW・SHの全員が最前線で絡んで崩しきったように、明らかにこれまでとは違う質の攻撃を見せてくれた。
残留ではなくさらに上を目指すために欠かせない攻撃の質の向上を、実戦で一発回答で示したと言えるだろう。
水戸ホーリーホックを率いていた頃から引き続き、シーズン終盤にさらに完成度を上げ続けられる長谷部監督の手腕には感服させられる。
対する鹿島は荒木、上田と今後の飛躍が期待される選手が前線にいた一方で、CBは町田と犬飼を欠きブエノと林のペア。
前方向への強度はあったが、急造コンビなだけに最終ラインを必要以上に下げてしまう場面が見られ、失点に繋がってしまった。
採点(及第点5.5)、寸評
GK村上昌謙 7.0 11本の枠内シュートを打たれながら無失点。激しい接触後も安定したプレーをし、73分にはビッグセーブ。
DF湯澤聖人 7.5 対面の安西の積極的な攻撃参加に難しい対応を迫られたが、要所を抑えながら41分には攻撃参加から絶妙なクロスでアシスト。
DFドウグラス・グローリ 7.5 守備の要として抜群の働き。53分にはゴールに向かうボールを掻き出した。誰が相手でも自由にさせない強度は見事。
DF宮大樹 7.5 カバーリングの質が高く、出場機会は奈良とグローリと差があるがJ1に相応しいパフォーマンスを見せている。
DF志知孝明 7.0 攻守に堅実なプレーをしながら、危険な場面では中央に絞りカバー。目立つことは多くなかったが、無失点で終えられた大きな要因。
MF金森健志 7.5 湯澤との連動性が良く、より中央に近い位置でボールを引き出すシーンが増えた。3点目を質の高いクロスでアシスト。
MF前寛之 7.5 守備においては以前より目立つ場面は減ったが、それはチームの完成度が上がったことと中村駿の加入というポジティブな要因によるもの。すでに完成度の高いCHだが、攻撃面の更なる進化に期待。
MF中村駿 7.5 中断期間で連携を深められたのが、危険な場面をさりげなく潰すプレーを何度も見せた。前寛之との補完性の高さも見ていて楽しい。
MF杉本太郎 6.5 左SHながら、先制点の場面では右寄りの位置まで入りスルー。見逃しかねないが、大きなプレーだった。
FWフアンマ・デルガド 8.0 MOM。スルーパスに反応しPK奪取。GKの逆を突く冷静なシュートで先制点。右からのクロスに完璧に右足を合わせ2点目。プレスバックも含め「フアンマ無双」と言うべき出来。
FW山岸祐也 8.0 PKは決められなかったが、PKに繋がったフアンマへのスルーパス、1点目のアシスト、3点目のヘディングシュート。フアンマとの距離感が良くなり、ブレイクの予感漂う。
MFジョルディ・クルークス 6.0 75分から金森に代わって出場。イエローカードはもらってしまったが、攻守共に真剣にチームに貢献しようとしていることの表れ。
FW渡大生 6.0 75分から山岸に代わって出場。鹿島のDFにプレスをかけ、チャンスではゴール前に飛び込む。勝つための役割をこなせるプレーヤー。
FWブルーノ・メンデス 採点なし。81分からフアンマに代わって出場。残り試合での得点量産に期待。彼が途中から出てくる層の厚さが嬉しい。
MF重廣卓也 採点なし。81分から杉本に代わって出場。SHの守備時の約束事・ポジショニングが身につけば、チームにとって大きな存在になり得る。
長谷部茂利監督 7.5 鹿島の良さを消しながら、選手が1番輝くポジションで起用。戦術家としてもモチベーターとしても見事な手腕を発揮した。
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