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アビスパ福岡にまつわるちょっと良い話

今回は、クリスマスに相応しく実際に自分が経験した、アビスパにまつわるちょっと良い話を。

前置き

かなり前の話になりますが、遡ること2009年の2月下旬。僕は入院していました。
病名はウイルス性の肝炎(お酒じゃないよ、ほぼ飲まない人間です)。
自覚症状はほぼなく、ただダルいだけ。

ダルさが10日以上も続いたために地元の小さい病院に行ったところ、大きい病院に行かされ即入院に。ということは身体の中はかなり悪い状況なんだろうな、とは分かっていました。
ベッド上安静と言われ、トイレに行くのにも看護師さんを呼ばないといけない、情けない状況。
しかも薬もなく、毎日ひたすらに寝ては朝数値を測るだけ。
ダルさ以外はどうということもないため暇で暇で、しかも寝てばかりだから次第に寝られなくなり、親に買ってきてもらったサッカー雑誌などを読み漁るだけの日々。
それでもなかなか数値が下がらず、次第に焦りが生まれていきました。

なぜなら、3月7日、アビスパ福岡の開幕戦があるから。
もちろん今でもそうなんですが、当時もアビスパにのぼせあがっていた僕。自分の体調のことよりも開幕戦を観に行きたくて仕方がなかったのです。
先生や看護師さんに交渉するもダメと言われ(当たり前ですよね)、それでも何度もお願いしていると、しぶしぶ条件付きでのOKを出されました(当時はご迷惑をおかけしました)。
試合当日の朝の検査で、数値が多少なりとも良くなっていること。

それから僕は眠かろうが眠くなかろうが、とにかく目を瞑って横になりました。
何がなんでも数値を良くして、スタジアムに行ってやろうと決意していたからです。

そして迎えた試合当日の朝。
看護師さんによる採血。そこから結果が出るまでの多少の時間が、やけに長く感じられました。

果たして…、僅かにですが数値は下がっていました。
これでアビスパの試合を観る権利を得た僕は、
外出許可を取って親の車でスタジアムへ。

スタジアムでは車椅子に乗り、親に押されてエレベーターで座席へ。初めて、そしてこれまででも唯一、車椅子席で観戦したのです。

相手はJ2に昇格してきたカターレ富山。
ここまでして観に来たのだから、というワガママな理由もあって絶対に勝ってくれる!と思っていたのですが、詳細は省きますがアビスパは低調な出来で、0-0のドローで終了。

ようやく本題

またすぐに病院に戻らねばなりません。
試合に勝てなかったこと、再びベッドから降りることもなかなかできない生活に戻ること。
その両方が押し寄せてきてとにかく残念な気持ちで、車椅子を親に押されてエレベーターに。
すると直後、エレベーターへもう一人乗ってきました。
車椅子に乗っているために僕は視線が低く、どういう人かは分かりません。けれど、パスを下げていたためアビスパの社員さんなんだろうと推測しました。

そのままエレベーターは目的の階に到着。
その社員らしき人が、「どうぞ」と言いつつドアを閉まらないよう抑えてくれます。こちらが完全にエレベーターから出るまで、直立不動でその状況を保ってくれていました。
素晴らしい人だなあと思い、去り際に「ありがとうございます」と言いつつふと視線を上げると、なんとその人は、その試合ではベンチ外だった山口和樹選手だったのです。

山口選手自身もベンチ外で、悔しい気持ちがあったことでしょう。
それでもあの完璧な立ち居振る舞いをされていました。

普段であれば記憶に残るほどの出来事ではないかもしれませんが、試合に勝てず、病院に戻らねばならず、物凄く落ち込んだ僕にとっては物凄く記憶に残る、本当に嬉しい出来事でした。
現に今でも、こうやって細かく書けるほど、この時のことをよく覚えているのです。


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