【書肆残影】猫のように−クレヨンハウス・童話屋・ナルニア国
久しぶりの休日。妻が友人と、ある著名人の講演会に出かけるというので、夕食時銀座あたりで落ち合うことにし、わたしと娘は神宮外苑にある児童遊園に出かけることにした。午後4時近くまで手一杯遊んだ後、地下鉄で銀座へ向かった。待ち合わせの時間まではしばらくあったので、書店で時間をつぶすことにした。気になる本もあったので......。
銀座で一カ所だけ本屋に立ち寄るなら、わたしの場合、文句なく教文館を選ぶ。娘と一緒ならばなおさらだ。
教文館ビルの6Fには絵本の専門店・ナルニア国がある。ワン・フロア全体が児童書なので、かなりの絵本が揃っており、このごろ絵本が面白くなってきた彼女にとって都合のいい場所である。
わたしが絵本を読むようになったのは大学に入ってから。幼いころの思い出はほとんどない。子どももいないのに、絵本に関心を持ち、しばしば児童書の専門店を出入りしていた。お気に入りは、青山の「クレヨンハウス」。だが、半ば敬意に近い感情をもって出入りしていたのは「たまプラーザ童話屋」。
たしか「たまプラーザ東急SC」3階だったと思う。かなり奥まったところにあったと記憶している。小さな店舗だったのに、そのかなりの部分が「こどもべや」に充てられ、木製の椅子がいくつも置かれていた。そこにある本にはシールが張ってあり、自由に読んでよかった。ときどき「おはなしの時間」と称し、ここの従業員が読み聞かせをしていた。いまから考えても、とにかくすごい本屋だった。
いつの頃だろう。たまたま立ち寄ろうと思ったら、猫のようにいなくなっていた。
「童話屋」が姿を消し、しばらくの間は絵本漁りをしなくなった。身辺が急に慌ただしくなったからかもしれない。そんなおり、ふと気づくと教文館にナルニア国できていた。98年頃の話だ。
両者は全く関係ないのだろうが、私の中では、姿を消すのも現すのも気まぐれな猫のような本屋たちである(2007年4月9日記)。
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