【随想】ガイドライン行政への違和感#4−やり玉にあげられるガイドライン(4/5)

 つい先ごろ、独占禁止法の解釈・運用に大きな影響力をもつ「流通・取引慣行ガイドライン」の大幅な改正が行われた(2017年6月16日)。ここ数年、このガイドラインの改正が毎年のようにくりかえされてきたところだが、おそらく今次の改正で一応の決着をみることになろう。
 「流通・取引慣行ガイドライン」は、正式には「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」といい、四半世紀前、日米間において行われた二国間の包括的貿易交渉(日米構造問題協議:Structual Impediment Initiative)をきっかけに策定されたものである。当時課題となっていた企業の流通系列・取引系列の問題にするどく切り込み、しばしば閉鎖的であると批判にさらされたわが国市場を、独占禁止法の執行をつうじて開放的なものにするという明確な政策的意図をもった画期的なガイドラインであった。
 だが、今回、このガイドラインが、やり玉にあげられた。理由は、まずガイドラインが古いこと。策定後、25年を経過しているのに、技術的な修正をのぞけば、目立った改正もされないまま、現在まで通用していたという事実。経済界はこうした行政の無頓着さにがまんがならなかったようである。経産省をうごかして、陰に陽にガイドラインの改正を後押ししていたようだ。
 たしかに、この20年余りの間、諸外国では、ガイドラインに記載されているいくつかの規制について重要な判例の変更があり、日本はこうした動きにキャッチアップしてこなかったのである。しかし、それもそのはず、ガイドラインの記述は、あくまでわが国の最高裁判決を踏まえて記載されたもの。他国の判例の影響をうけるわけではない。わが国の判例が変更されない限り、手をつける理由はそもそもない。諸外国の動向を見、もし解釈・運用の変更が必要ならば、法の担い手の一人である企業自らが裁判で争い問題点を示し、勝利していかなければならない。そうした努力なしに、新たな動きをもたらすことはできない。ここにも行政だよりの現実がある(2017年10月 5日記)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?