【随想】消費生活センターの条例化の課題#2−条例に記載のない消費生活相談(2/10)

 消費者安全法によれば、都道府県ないし市町村は、「消費者安全の確保に関し、事業者に対する消費者からの苦情に係る相談」(消費生活相談)および「消費者安全の確保に関し、事業者に対する消費者からの苦情の処理のためのあっ旋」(あっ旋)の事務を行なうものと規定している。また、消費者基本法においても、「地方公共団体は、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた苦情が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に処理されるようにするため、苦情の処理のあつせん等に努めなければならない」とある。このように、現状において「消費生活相談」・「あっ旋」(消費者安全法)ないし「苦情の処理のあっ旋等」(消費者基本法)といった事務は、都道府県および市町村といった地方公共団体の事務事業として明確に位置づけられている。
 ところが、神奈川県消費生活条例をはじめとして、多くの消費生活条例には、消費者安全法において明らかにされたところの消費生活相談等に関する規定は一見して明らかではない。現在、地方公共団体の消費者行政において主要な事業となっている消費生活相談はどこにその定めがあるのだろうか。
 神奈川県消費生活条例には、「知事は、消費者から事業者の提供する商品等によつて生じた消費生活上の被害の救済について申出があつたときは、当該被害の速やかな救済のために必要な助言、あつせんその他の措置を講ずるものとする」との規定がある(同条例22条1項)。この「被害の速やかな救済のため」の「必要な助言」というのが、消費生活相談に関する条例上の根拠ということになる。この点、消費者安全法の制定にもかかわらず、条例の修正が施されなかったのは、もともと消費生活相談がいわゆる給付行政の一つに数えられていることに加え、同条例の大幅な見直しが行われた消費者基本法制定の際、同法がいまだ消費生活相談等を念頭に「苦情の処理のあっ旋等」(消費者基本法19条1項)と定めていたことも関連し、とりたてて手を加える必要を県などの地方公共団体が認めなかったためと考えられる(2015年10月5日記)。

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