商品か機能か#1:ウェブ閲覧ソフト前史(1/5)

 いまから半年ほど前、マイクロソフト社は、同社が四半世紀近く提供してきたウェブ閲覧(ブラウザ)ソフト「インターネット・エクスプローラー(IE)」のサポート業務の終了を発表した。サポート業務が終了すると、今後、ホームページを見たり、ウェブ仕様の業務ソフトを使ったりする際に、それらが正しく表示されなくなったり、セキュリティなどの問題に対する修正などが適切に行われなくなることを意味している。
 この報道を独特の感慨をもって見た者はきっとわたしだけではないと思う。いまや、誰でも一日に一度はウェブ閲覧ソフトを利用し、インターネットにアクセスしているはずだ。多くはスマートフォンを使って、また会社やオフィスではPCを使って。皆さんがよく使うウェブ閲覧ソフトは、なんだろうか。グーグル社が提供する「クローム」か、それともアップル社の「サファリ」だろうか。スマートフォンを使ってインターネットへのアクセスをするようになった昨今では、スマートフォンの代表的なオペレーティングソフトウェアである、アンドロイドOSに標準添付される「クローム」やiOSに搭載される「サファリ」が主流になっている。
 ウェブ閲覧ソフトによるインターネットへのアクセスは、いまでは当たり前のこととなったが、これを圧倒的に容易にしたのが、www(ワールド・ワイド・ウェブ)という規格とこの規格で記述されたコード(プログラム)を読み込んで表示するウェブ閲覧ソフトである。ウェブ草創期にあっては、「モザイク」という米国イリノイ州立大学発のウェブ閲覧ソフトが出回った。これによりインターネットへのアクセスが文字ベースのユーザーインターフェース(CUI)から画像ベースのインターフェース(GUI)に変貌し、格段に使いやすくなった。このモザイクというウェブ閲覧ソフトをさらに高機能化し商用化したのが、ネットスケープ社の「ネットスケープ・ナビゲーター」である。ネットスケープ社の星雲の中から白く浮かび上がった「N」の文字や帆船のハンドルが描かれたアイコンを思い出す人も多くおられるかもしれない(つづく)(2023年2月5日記)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?