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短歌連作「シュレディンガーの夏」他

『シュレディンガーの夏』

道のりを早さで割って出たものが実感として伴わなかった

校庭で弾むあの子のタイムならコンマの先まで覚えてるのに

「こんなんじゃにげきれないよ」非常口のフォームにダメ出ししているところ

エナメルが西日を反射していつも横断歩道で見失ってる


ハロハロを頬張る 春の気配ならストーリーと一緒に消えた

いつまでも寝れない夜は件名の:reの数を数えて寝ます

勘違いされたいリプトンはレモンティーだしストラップはエルモだし

ぶんぶんぶん、のところで飛んだ唾だけで笑っているあたしたちミツバチ

良く分からないけどきっと覚えてるんだろうな、の景色だけ手のひらに


ギプスが強化パーツみたいで嬉しくて パンチしてそれで完治しなくて

小籠包買い食いする「チョイスが謎」直感でゆくよるはたのしい

電波塔壊してしまった怪獣のせいか、返事が届かないのは

悪霊に取り憑かれたので今日をもちバイトはやめせていただきます

ブレザーを頑なに着ないこだわりが今更可愛かったと思う



『ヒビノササクレ(だった)』

2020年も聴いてる人いいね こいつと同じ感性が憎い

写してる部分が全てじゃあるまいし アイドルもうんこするときあるし

丁寧に暮らし隊から投げ込まれるアボカドの手榴弾に怯えて

一斉に勧めるように仕組まれた 読みも分からぬ連続ドラマ

愛し合う前にブランドの財布を送るな、と論語にも記され

怒られる気がする カーテンをずらして太陽の機嫌伺ってみる

寝巻きのまま湯船に浸かることがあたしなりの反抗 なんか言ってよ

まじないのようにワセリンを擦り込む ゆがんだヒビノササクレ(だった)



『信号が欲しい』

名を呼ばれない体育館 想像の南の島でイルカたちは鳴く

冷凍の親子丼のまずさに耐える ごめんねと嘆く母を見れない

ひび割れた壁を見ている 今日だけは灯りの灯らぬ小さなおうち

桃缶で育った僕らシロップの中で溺れて産毛も生えぬ

朝顔の青いバケツよお前まだ支柱を立てたままでいるのか

「白いとこ以外"まぐま"ね」"まぐま"なのにきみはそのまま走るのか、あ


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