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『永遠のお出かけ』益田ミリ

悲しみには強弱があった。まるでピアノの調べのように、わたしの中で大きくなったり、小さくなったり。大きくなったときには泣いてしまう。時が過ぎれば、そんな波もなくなるのだろうという予感とともに悲しんでいるのである。

『永遠のおでかけ』益田ミリ


いわた書店さんの一万円選書のうちの三冊目。

特段好きな作家さんというわけではないけれど、最近益田ミリさんの作品に触れることが多い。

母親と同じ世代の方だから、価値観や考え方に自分と相違があるのはもちろんだけど(別に世代だけが要因ではないか)、文章からやさしい雰囲気が伝わってくるのは好きだ。


本書は父親の死について書かれた一冊である。

世代の話をしたけれど、この本は読むときどきの年齢によって読み方が変わってくる本なのだと思う。

両親や身近な人の死がより近くなる年齢になったとき、本書を読んでいるときに感じる喉のつかえは大きくなってゆくのだろうな。


まあ、別に人がいなくなってしまうのは年齢だけによらない。

何気なく話したのが最後の会話になってしまったとき、後悔が残る。

ただ、死は自分を含んだ誰もに平等に訪れるもので、それを「永遠のおでかけ」ととらえるなら少し気持ちは軽くなるかもしれない。

さようならでなくて「おでかけ」なら、いつかまた会えるような気がするから。帰ってきてくれるような気がするから。

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