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何もしなくていい日を享受する

何もしなくて良い日を夫から与えられた。
最近疲れているから体調を心配してくれているのだろう。
鏡に映る顔はどことなく白い。

少し申し訳ないなと思いつつ、それを享受した。

何もしなくてもいいというのは何とも不思議。
洗濯、掃除、晩ご飯‥いつも私がしていることをしなくてもいい。ただ寝ていればいい。
人に言ったらそれとなく怒られてしまうかもしれない。別に言う人も居ないのだけど。

起き抜けの体はバキバキ。
それを少しでも改善したくてストレッチをする。10分の日もあれば30分くらいする日もあるけれど今日は10分にしておく。
バキバキなのは良くなるが、体の怠さはあまり取れない。

食欲もないので、そのままテレビをつける。
最近のニュースはそことなく暗いものばかりで見ていると気分が落ち込む。
平和とは案外難しいものなのだ。
ニュースもそこそこにYouTubeをつける。
暗いニュースより幾分かマシだ。
おすすめの動画を見たり、登録チャンネルの新しい動画を見たり。
YouTubeはダラダラと見てしまう。
美味しい料理動画は見ているだけでお腹が空いてくる気がする。

今日の晩ご飯はお弁当かなあとぼんやり考える。このお弁当にかかるお金は私が頑張ってご飯を作れば浮くのにな。と何もしないことを享受した自分を責める。
責めても何もないのは明白だ。
この自分を責める癖はいつになったら抜けるのだろうか。
別にお弁当を食べることは悪いことではないのに、少しばかり罪悪感を感じてしまう。

そんな罪悪感に気付かないふりをしながら、録画や動画を見て過ごす。
お腹が空いてきたのはお昼を過ぎてからだ。
昨晩の残りを食べる。
自分の為にご飯を作ることも今はやりたくない。残りがあって良かったとこんな時は思う。

本当なら帯結びの練習をしたかったのに、やる気がどこかへ行ったまま戻って来てくれない。
仕方ない、と帯結びの動画を見るだけに留めておく。しかしながら見ても頭に入ってこないのはやはり疲れているからか。
気がつけばもう夕方。
あっという間に時間が過ぎていく。

もう少ししたら夫から電話がかかってくるだろう。今日の晩ご飯の話と、私が家のことをしていないかの確認のために。
昔だったらこっそりやっていたと思うけれど、今はもうやらなくなった。
夫からの何もしなくていい日というのを少しずつ満喫出来るようになってきた気がする。
あとは、胸に残るほんのちょっとの罪悪感と向き合えばもっと満喫出来るようになるはずだけど、そうは上手くいかないのが私という人間なのだろう。

やはり電話がかかってきた。
今日の晩ご飯はいつものお弁当屋さん、そして何もしてないか聞かれて「ゆっくりしたよ」と伝えた。
電話口の夫は満足そうに返事をする。
こうでもしなきゃ休まない妻のことを、手のかかる子供のように扱うのはきっと彼だけだ。
電話を切り、あとは帰ってくるのを待つだけ。
暖かいホカホカのお弁当を持つ穏やかな笑顔の夫が帰ってくるのは、きっともうすぐ。



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